ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

お知らせ

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  contact ▶︎▶︎f:id:hitotobi:20181205094108j:plain   


募集中のイベント

▼2月8日(土) あのころの《いじめ》と《わたし》に会いにいく読書会https://coubic.com/uminoie/979560(横浜)

▼2月11日(火•祝) 映画『トーク・バック』でゆるっと話そう
http://chupki.jpn.org/archives/5288(田端)
毎月シネマ・チュプキ・タバタで鑑賞後の感想を「ゆるっと話そう」実施中

▼3月20日(金•祝) 2020春分のコラージュの会
準備中

▼3月23日(月) 爽やかな集中感 競技かるた体験会
https://coubic.com/uminoie/174356(横浜)

 

鑑賞対話ファシリテーション(法人・団体向け)

・表現物の価値を広めたい、共有したい、遺したい業界団体や、
 教育や啓発を促したい、活動テーマをお持ちの法人や団体からのご依頼で、表現物の鑑賞対話の場を企画・設計・進行します。
・鑑賞会、上映会、読書会、勉強会などのイベントやワークショップにより、作品や題材を元に、鑑賞者同士が対話を通して学ぶ場をつくります。

https://seikofunanokawa.com/service-menu/kansho-taiwa-facilitation/

 

場づくりコンサルティング(個人向け)

・読書会、学ぶ会、上映会、シェア会、愛好会...などのイベントや講座。
・企画・設計・進行・宣伝のご相談のります。
・Zoom または 東京都内で対面
・30分¥5,500、60分 ¥11,000(税込)
・募集文の添削やフィードバック、ふりかえりの壁打ち相手にもどうぞ。

https://seikofunanokawa.com/service-menu/badukuri-consulting/

 

連載中
▼『場づくりを成功させるための5つの鍵』(寺子屋学)
https://terakoyagaku.net/group/bazukuri/

▼ noteでも書いたり話したりしています。

note.mu

  

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プリーモ・レーヴィと本歌取り

昨年、プリーモ・レーヴィの詩集出版記念の講演に行ったときのことを話しました。

▼noteで音声&動画配信しています。

note.com

 

たまにひらきますが、やはりこの詩集、とてもよいです。

  

 

プリーモ・レーヴィの詩には、他の詩人の作からの引用が多い、と解説がありました。

 

その後つらつら考えていて、あれは引用というより「本歌取り」なのかもしれない、と思っています。

本歌取(ほんかどり)とは、学における和歌の作成技法の1つで、有名な古本歌)の1句もしくは2句を自作に取り入れて作歌を行う方法。 主に本歌を背景として用いることで奥行きを与えて表現効果の重層化を図る際に用いた。(wikipediaより)

 

元々の詩のつくりだした世界がある。

その影響を受けてきた自分としての人生経験があり、それを詠う。

「あたらしい世界をつくりあげる」ことで敬愛する詩に応える。

answer songの物語を描く。

それによってなんらかの普遍性を願う、祈る......というような。

 

彼の表現を、わたしがどこまで理解できているのかはわからないけれど、ある風景をみるとき、ある感情に入るとき、彼の詩が心に訪れるのは、何かを受け取っているしるしなのかなと思う。

 

あ。

そしてなんと、今気づきました。

 

この日の対談は文字起こしされてウェブ記事として公開されています!

この第6回〈詩の解説〉『プリーモ・レーヴィ全詩集』よりで、詩の話をされています。

dokushojin.com

 

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アール・デコの造本芸術展@日比谷図書館 〜芸術と本のゆくえ

暮れの迫る小雨の降る寒い中、日比谷図書文化館で開催中の『鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界』展に行ってきました。

 

▼日比谷図書文化館公式ホームページ

www.library.chiyoda.tokyo.jp

▼きれいな写真がたくさん載っているので、ぜひこちらでご覧いただきたいです。

twitter.com

  

 

 

いつものように、展覧会の感想をつらつらと。

 

①ブックデザインの歴史について新たな知識を得た

1910年〜1930年代前半の約20年。
挿絵本の歴史の中で突出した高い技術と芸術が生まれた時代。

このときの本は、予約購買者を募集してから制作された限定出版。
しかも、未綴じや仮綴じのバラバラの状態で刷って納品される。
綴じや装幀は、購入者が自分の好みに仕上げるため、プロの職人に依頼していたという。
今の本は、表紙が顔だけれど、当時は表紙は装幀のときに外されてしまうから、刷ったときは仮にあるという感じで、簡素で地味。

...とまぁ、出版の概念を覆す製本過程にまず驚きました。

 

本にそんな時代があったんだ!という驚き。

その前にも後にもあったんでしょうか?

 

でも、これからの本ってまたこのようになっていくんじゃないかしら。
資源が貴重になり、物質として持つことが貴重になる中、嗜好品、贅沢品、工芸品、美術品としての地位を取り戻すんじゃないかしら。

あるいは、既にその動きはあるかも。...ということをこちらに書きましたが、サイトヲヒデユキさんの本に思いました。

 

アール・デコの造本芸術の幸福な20年を支えたのは、

 ・革新的なデザイン感覚をもったイラストレータ

 ・高度な技術をもった印刷職人

 ・新鋭イラストレーターを起用する新しいモードジャーナリズムを見事に開花させた、先見の明ある編集者

 ・裕福なパトロン

 

このきらめきよ...。
展示品を見る前のパネル解説ですでにわくわくしました。

 

鹿島さんによるパネル展示は、とても充実していて、造本の工程について丁寧に説明してくださってました。

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たとえばこれは当展覧会のチラシの表面ですが、このような装飾頭文字をLettrine(レトリーヌ)と呼ぶ、など、「古い本」の中に何気なく「よく見ていたあれ」に名前がある、とわかったことがよかったです。

文章や挿絵はもちろんのこと、活字もレイアウトも、どれもが大切にされる要素で、すべてが芸術であったというところに、わたしは美を感じます。

美を成立させるために、ささやかな部分(品)にも名前があり、それが共有されていたというところ。

それは今の造本の過程にも思うことですけれど。

 

そして実物の大群が、これがまたすばらしい。

目を閉じるとあの作品の数々が蘇ります。

写真は撮れないのだけれど、作品リストを載せたパンフレットが美しく作ってあったり、美しいクリアファイルを買ったりなぞして、所有欲を満たしました。

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疑問だったのは、第一次世界大戦を挟んでいるのに、なぜこんなにもゴージャスなんだろう?ということ。
1920年のバブル景気で潤沢な資金があり」と解説があったのは、戦争によって特需が起こっていたということ?それで社交界は賑やかだった?

この高級挿絵本が急激に衰退したのは、1929年の世界恐慌後。

ふむ...歴史と芸術のムーブメントとの連動をもっともっと知りたくなりました。

 

  

展覧会に行けなかった方のためにも、行った方の復習のためにも、
こちらの動画で、鹿島さん自らの解説が42分も聞けます。

 

鹿島さんの解説を聞いていて思ったけれど、学芸員さんの解説だと、「わたしは」は主語になることってないですよね。黒子としていらっしゃるから。

だから鹿島さんの「わたしは」の主語がすごく新鮮だった。

「鹿島コレクション」と冠しているからできることなのかもしれませんが、編者の愛が全面に出てくる感じ、イイです。

 

 

②ジョルジュ・バルビエとバレエ・リュス

バルビエの本の美しさに感嘆。

本物を間近で観られてあらためて思いましたが、アール・デコ四天王の中でも、この完璧な美意識、突出しているんじゃないでしょうか。

バルビエの描くニジンスキーが、彼らの人生が共鳴している感じがして、切なかった。思わず家に帰ってこれ読み返しました。

バレエ・リュスって何?という向きには、こちらのインタビュー記事にあります。 

この映画もよかったです。『バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び』http://www.cinemarise.com/theater/archives/films/2007022.html

『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス』展の図録。わたしの宝物(のひとつ)。

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鹿島茂さんのお宝がいつもすごい

以前こちらでも見せていただきましたが、鹿島茂さんのコレクションはすごいです。

doremium.seesaa.net

 

この展覧会のあと、モンベルの『ジャンヌ・ダルク』の布張りのほう、古書で買いました。間違えて2冊も買ってしまったので、一箱古本市の機会があれば出品します。

 

今回も惜しみなくシェアしてくださって、ありがたいです。

この展覧会の元になった書籍「アール・デコの<挿絵本>: ブックデザインの誕生」は絶版になっているようです。もう少し早く行けばあったのかなぁ。残念。

図書館で拝見しましたが、良い本でした。ほしいナ。。

 

 

④展覧会同士のひびきあい、同時代性

ちょうどその前の週末にラウル・デュフィ展に行ったところでした。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

デュフィのデザインしたテキスタイルを紙に印刷したものがあり、「そういえば当時の製紙、製版技術って高そう。一体どんな時代だったんだろう?」と思っていたところだったので、いきなり答えが出た形になり、うれしかったです。

しかもデュフィの仕事に大きな影響を与えたポール・ポワレが、造本芸術のほうでもまた、この時代をときめくファッションデザイナーとして登場していました。

同時代性や文脈を感じる、展覧会同士の響き合いはいつもわくわくします。

ここ2、3年、特に意識して19世紀末〜20世紀初頭〜中期のオペラ、バレエ、音楽、文学、美術、映画などを訪ねてきましたが、まだまだ掘りがいがありそうです。

20世紀の100年。

いろんな物・事象・手段で何度も串刺して体系立てながらふりかえり、ここから先を人類はどう生きてゆけばよいか。

昨年からのわたしのテーマです。

 

 

④図書館体験のバージョンアップ

久しぶりに行ったら日比谷図書館自体バージョンアップしていました。

前回がいつだったかは忘れましたが、10年ぐらいはゆうに経っています。
日比谷カレッジや、ボードゲーム部(コミュニティづくり)や、テーマ別のゾーン設定や、閲覧席の充実。

個人の学びのための館であり、知を交わし合い、循環させる場としてもある、という感じがしました。

しかも1Fのカフェ・プロントは、電源席もあって仕事や勉強はかどります。

音楽は流れてるけど、普通のカフェみたいにしゃべってる人いないから快適です。

文房具も販売しているので、切らしたものがあればすぐに調達できるのもありがたい。

販売用の本棚を眺めながらなので、すごく落ち着きますし、少し目をあげると窓から日比谷公園の緑見えるのものびのびします。

 

 

⑤製本やブックデザインといえば

ここから現代のブックデザインに飛ぶのもおもしろいですね。

たとえばTOPPANの印刷博物館で毎年開催されている「世界のブックデザイン」展。

一冊一冊、個性にあふれた本との対話があります。はじめて行ったときは、そのエネルギーのすごさに全部見きれないほどでした。2日に分けて行きました。

bijutsutecho.com

 

そして映画。『世界一美しい本を作る男〜シュタイデルとの旅〜』

2010年製作。これを観た時に、「紙の本はこういう特別に誂えらえるためだけに残っていくかもなぁ」と思いました。
資源も技術も貴重になっていく。
人間が介在する理由が必要なものが明確になり、棲み分けていく時代。もしかしたら。


 

開催してくださって、ありがとうございました!

  

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手が記憶している本

友人に誘われてNADiffに書肆サイコロのサイトヲヒデユキさんの装幀のお仕事を見に行った。

お仕事といっても、携わった本が販売・展示されている小さな小さなコーナーがある、という感じ。

一般に流通している単行本から、
限定の手製本である詩集やご自身の作品集、
そしてジョゼフ・コーネル展の図録までが一覧できる。

 

もともとサイトヲさんのことを知ったのは、この図録によってだった。

行った時のブログ>>

ジョゼフ・コーネル展、また会えたね! - ひととび〜人と美の表現活動研究室

 大好きなジョゼフ・コーネルの展覧会を、こんなに丁寧なビジュアル仕事で作ってくださるなんて!と感激したものです。

 

図録は中古だけれどあるみたいです。
ジョゼフ・コーネルが好きな方、美しい本が好きな方には宝物ですよ!

 

 

NADiffには松本力さんにまつわる品もあって、それを見てようやく、先日トビカンで見たこのパンフレットが、サイトヲさんの手によるものだと気づいた。

そのときの展示>

松本力「記しを憶う」-東京都写真美術館コレクションを中心に|東京都美術館


そのときのブログ>

「20世紀美術史の基礎知識」から次の関心へ - ひととび〜人と美の表現活動研究室

  
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どうりで、どうりで丁寧につくってあると思ったよ!

 

並んでいた本たちをひらくときの、紙のこの感触、、あれ、どこかで経験したような?と思っていたら、そういうことだったのですね。

本を扱う自分の手の動きが同じだった。

手が記憶している。

 

 

きのう中でも心にグッときたのは、「骰子」という限定100部で刷られた詩集。

骰子=さいころ

約7.5cm辺の正方形の「本」で、ページは蛇腹状に折りたたまれているその言葉の美しさもさることながら、活版で印字された文字の溝の刻まれ方から、インクの色から、紙質から、一つ一つが合わさって、本をひらいてめくるときの感触がすごかった。

手の力のかかり方、紙の動きが計算しつくされているような。

 

とっても欲しかったけれど、わたしがこれを所有してしまうと、作品の何かを薄めてしまいそうで、手が出せなかった。

誰か、もっとぴったりな人のところで、生きてほしい本。

 

オフセットとかオンデマンドとかではなしに、職人が手作業でつくる本の美しさ。

嗜好品。

そういえば、年末にそういう本の展示を見たなぁと思い、その記録をつけるのを忘れていたことを思い出した。日比谷図書館で開催されていた、フランスの造本芸術の展示。

......書きます。

 

 

本といえば、恒例の世界のブックデザイン展が、今年もトッパン印刷博物館で開催中。ふらりと寄りたい。

印刷博物館:P&Pギャラリー > 世界のブックデザイン2018-19

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それから、奈良原一高の写真集「王国」にも、思わず見入ってしまった。

ちょうど奈良原一高展を都内で開催中。

日曜美術館でも取り上げられていた写真の数々。

bijutsutecho.com

 

本といえばこんな映画が公開中。

1万5千冊をデザインした装幀者・菊地信義と、本をつくる人々のドキュメンタリー

www.magichour.co.jp

 

 

ほんの30分〜40分の滞在の中で、いろいろなものに出会った日。

 

 

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中島敦展@神奈川近代文学館〜今ひとたびの山月記

11月下旬、神奈川近代文学館中島敦展を見に行ってきた。
少し前に樋口一葉記念館に行った時にチラシを見て知って(チラシありがたい!)、むりやり予定を調整して、どうにか会期終了の2日前にすべりこんだ。

www.kanabun.or.jp

 

ほんとうに、とてもよい展覧会だった。間違いなく心のベストテン展覧会に入る。

自分の胸の内にあるだけでも十分なのだけれど、残念ながらわたしは忘れっぽい。

このままだと何もなかったように流れていきそうなので、バラバラしたものでもなんとか書き留めておこうと思う。

 

◾️

 

印象にのこったあれこれ。

編集委員池澤夏樹というのもまた貴重な展覧会。展示の端々から愛と共感、尊敬が伝わってくる。ここの文学館はいつもこうなのかしら。それとも中島敦だからなのかしら。

・知識人の家系に生まれ、親戚も学者や識者。父はいかにもこの時代の家長。

・実母に早く離別し、継母と折り合いの悪い生い立ち。父方の伯父・叔父たちと親交があり、人生に多くの影響を受ける。どなたもアクが強そう。しかし、やはりおじ・おば、いわば斜めの関係というのは良いのだな。一親等の家族がキツいときに助けになる。

・直筆の原稿は、漢字が大きくひらがなが小さい。とめはねはらいのきっちりとした、緩急のある筆跡。

・卒論は耽美派作家の研究。古典ではなく同時代を選んでいたことが意外。

・横浜と中島敦の関係は、横浜高等女学校の教員の職を得たことから。1933年(24歳)〜1941年(32歳)の8年間を過ごす。途中10ヵ月パラオへ。学校では国語と英語を担当し、クラス担任、部活動の顧問、遠足や修学旅行の引率も。ほんとうに普通の先生の仕事。女生徒からの人気ぶりもうかがえる。

・同い年のタカと出会い、結婚するまでに交わした熱烈なラブレター。

・仕事で南方へ行ってからの苦悩。現地の子どもに日本語教育を施すための教科書づくりや実際の授業、ひいていは日本政府の施策への強烈な違和感。

・庭で話を育てたり、音楽会に出かけたり、スケッチをしたり。ささやかな楽しみや感性にふれることを日常に取り入れていた。調度品や持ち物にも「らしさ」が光る。

・友だちに恵まれていて、パラオで知り合った美術家で民俗学者土方久功との親交は、心辛い中でも支えになっていた。

・2人の息子をとてもかわいがっていた。写真や、買ってやった本や、南方へ行ってから頻繁に送っていた絵葉書。それも一人ひとりに当てて。子どもや妻と会えない時間や距離を埋めるようにたくさんの手紙を交わしていた。

・「吃公子(韓非子)」の構想メモや自筆の地図。これは読んでみたかったな...。

・絶筆となる「タコの木の下で」に綴られた言葉が胸に迫る。読んでいると何かずっしりと重大なものを託されたような思いがする。

・館内で配布されたいた「K先生の謎解き山月記講義」というパンフレットがおもしろかった。北海道の高校で国語を教えているK先生(田口耕平さん)の文章とイラストによる紙上講義。定説ではない、K先生の独自の解釈だけれど、なるほどこんなふうに読み解いてみると、何重にも物語世界が味わえる。
「袁傪は李徴の詩を読んだことがあるか?」なんて考えたこともなかったけど、確かにあの二人の関係はもっと知りたくなるところがある。(見つけたので>田口先生へのインタビュー、13年前のベネッセの記事。

 

 

 

◾️

 

わたしと中島敦との出会いは、多くの人がそうであるように、やはり高校時代だった。国語の教科書に「山月記」が掲載されていたことから。
山月記」の書き出しの美しさは、出会って25年経った今も鮮烈だ。

気づくと中島敦の生きた歳をだいぶ越していた。

 

今よりずっと若い頃には、作家の生涯よりも作品のほうをよく観るのが良いことだとなぜか思っていたし、作品と作家を切り離して考えなくてはと頑張ってもいた。

それが、歳を重ねてきて、何度も人生の節目を迎え、人生を振り返る機会を得るようになって変わってきた。
作家の人生を知ることで、作品からもっと多くのことを受け取れるようになった。

わたしにとっての中島敦は、優秀で、神経質で、繊細で、病弱で、陰鬱で薄幸な人だった。恥かしながら、山月記の李徴のイメージのまま。

けれど、この展示を旅してみて相当にイメージが変わった。

おおらかで視野が広く、好奇心旺盛、情熱的、研究熱心で、美的感覚に鋭く、愛情に溢れている。苦悩だけではなく、たくさんの幸せを瞬間を持ち、生き抜いた33年間だったのだ。

そうか、このような人だったのだ。
知ることで一気に血が通う。

こんなふうに〈作品と出会い→人生の一部になり→ふとしたきっかけで作家を知り→再び作品を味わう〉となることが最近増えたように思う。

新しいものを多読するより、再読や再見が楽しいこの頃。

旅。

人生のご褒美。

 

展覧会に行けなかった方にもおすすめしたいのがこの二冊。どちらも通販可。

展覧会図録「中島敦展 魅せられた旅人の短い生涯」
中島敦についてここまで網羅された愛あふれる資料もないかも。

https://www.kanabun.or.jp/webshop/10513/

 

中島敦の絵葉書ーー南洋から愛息へ
息子へあてて書いた絵葉書を両面オールカラーで掲載されている。解説も詳しい。これはほんとうに貴重な資料。本にしてくださってありがとうございます。

https://www.kanabun.or.jp/webshop/10693/

 

◾️

 

鑑賞対話の仕事をしていて「なぜ"実物"を見る必要があるのか」「実物とは何か」ということを考えている。

今回またつくづく思ったが、実物の放つ存在感はすごい。
それをこれほど丁寧に構成し受け取りやすくしてくれる人(学芸員さん)がいる。監修者がいる。

あれこれ判断を入れる前に、実在を確認する。
展覧会は実存を信じるのに必要な装置なのではないか。

そのためには保存して、記録して、研究しておく。

 

人間はすぐ忘れてしまうし、必要なタイミングが人それぞれあるし、何度も必要になるから、何回でもそれをやる。

その時代の精一杯で編集をかけ、何度も編み直して、提示し直す。
一度だけでは偏っているし、間違うこともあるし、限界もある。
検証し、解釈し直し、新しく知り直す。それを鑑賞者と共に試みる。

 

一旦、そういうことではないかと解釈してみた。

 

◾️

 

以前からこの文学館は友人からおすすめされていたのだけれど、なかなかピンとくる企画展がないまま、何年も過ぎていた。

ようやく「行ったよ!」と報告できたのもうれしい。

 

大雨の降る寒い日だったが、ほんとうに行けてよかった。

茶店のホットサンドイッチも美味しかった。

 

 

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ひだ〜機能性とエレガンス展 @文化学園服飾博物館 〜トライバルとディテールの魅力

文化学園服飾博物館の展示『ひだ〜機能性とエレガンス』を観てきた。

https://museum.bunka.ac.jp/exhibition/exhibition2849/

 

観に行ったのには流れがある。

 

11月に杉村学園衣裳博物館で「ブルガリアルーマニアの民族衣装」展を観に行って感想を配信した。

note.com

 

またその少し前には、大阪の国立民族学博物館を友人と訪ね、感想を話した。

note.com

 

なにやら民族衣装、フォークロア、トライバル、ファッション、手工芸などのキーワードがわたしの中で立ち上がっていて、それが継続している。

かわいい、美しいからはじまって、
どうしてこんな形、色、素材なんだろう?
誰がどんなときに着るんだろう?
気候や宗教や歴史とどう関係があるんだろう?

を解説の助けをかりながら知っていくと、世界のいろいろな土地のいろいろな時代の人々の願いや祈り、意思なども見えてきて、世界っておもしろいなぁ、人間って愛おしいなぁという気持ちがふつふつとわいてくる。

 

そういえば、新宿・代々木にもファッションの学校があったなぁと思い出した。

文化学園だ。杉村学園と同じく、博物館を持っている。

しかも12月からなかなかどんぴしゃりな展覧会が開催中。ルーマニアブルガリアの民族衣装をみたときに、プリーツやギャザーを寄せて首元や手首周りを覆うことには魔除けの意味があると知ったばかり。

そんな経緯で行ってきた。

 

 

 

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いやはや、これまた、とてもよい展示だった!

なにより民族衣装は美しい!装うって楽しい!が全開で感じられる。

 

日本語で言えば「ひだ(襞)」だが、プリーツ、ギャザー、シャーリング、タック、ドレープ、フリルなど多くの服飾の技法、縫製がある。実物を見ながら、どの部分にどの技法が使われていて、どんな効果をもたらしているのか、丁寧な解説がある。

・布を身体のラインにフィットさせたり、動きやすくする
馬に乗ったり、自転車に乗ったりするための服は、ひだを寄せることで、腕の可動域が広がったり、足さばきがしやすくなる。皮のブーツにもひだがついたものも。保温性も高まるという。

・暑さや寒さの環境に適応させる
暑い地方ではひだを寄せた布が空気をはらんで膨らみ、空気を循環させる。
湿気の多い地方ではさらさらとした肌触りのよい布を使っている。乾燥した砂漠では足元から虫や蛇が入ってこないようにギュッと絞るときにもひだを使う。
寒い地方では細かな襞をぎゅっと寄せて、首や背中肩から熱を逃げにくくする、など。


・布のなめらかさや柔らかさや繊細さで着る人の美しさや威厳を演出する。
なるほどと思ったのが、「長い布や大きな布を用いることは着用者の権威や経済力といったステイタスを示すこともある」という解説。展示品の中には細かな布をはぎ合わてギャザーを入れた8mの腰布などもあった。重そう!

体を大きくする=威厳があるというのは確かに効果としてあるかもなぁ。
ツーピースよりワンピースのほうが印象が強いこととかあるかも?

 

・造形的なおもしろさを印象づけたり、物の見方を変容させる。
近現代のデザイナーの作品は様々な国の民族衣装から着想を得ながら、より視覚的、心理的、空間的効果を狙ったデザインがある。ドレスや儀礼のためのフォーマルな服の工夫はとりわけおもしろい。

 

ショーケースの壁側は鏡張りになっていて、背後のデザインがどうなっているのかも見られる。

 

伝統的なものだけではなく、近現代のものもある。
プリーツといえばあの人!というデザイナーのもの。

それから、子どもの服。かわいい。

子どもにもコルセットを強いていた時代があったらしいけど、発達によくないということになって、胸下でひだを寄せて布を切り返し腹部がふくらむような、Aラインのワンピースが多くなっている。

 

無意識に受け取っていたファッションのサイン。
背景にこういう意味があるのか、と知ることがまずおもしろい。

知って見てみると、人間の工夫や好奇心ってほんとうにすごい。

その表れも地方により、時代により、作り手により、手に入る素材により、全然違ってくるのがおもしろい。そこにさらに願いや祈りの意味を込めた色や刺繍や文様などが加わる。

思えば人間というのは、いつの世も予測できない災害、病気や怪我、死への怖れと闘ってきた。命をつなぐ祈りを込めてきた。

装いとは美の喜びであると同時に、家内安全・無病息災の祈りの形でもあったのだな。

 

遠くから大雑把に見ると「民族衣装」なのだけど、一つひとつ、たとえば「ひだ」というテーマで注目して見てみると個別の発見があって、また人間を愛おしく思える。

 

帰り道にまちを歩く人の服や自宅のワードローブに「ひだ」を発見して、その効果について考えるのも楽しい。タータン展のときみたい。

ここまでの人間の歴史を思い、今の自分たちを省みて、そして何を作っていこうかなと考える。そのきっかけを提供してくれる。

 

ミュージアムってやっぱり楽しいし、学びが多い。

2020年2月14日までの開催です。

受付で売っていたオリジナルポストカード、かわいいのがいっぱいあります。

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関連講座もあるようです。

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おまけ1。

こういう専門の博物館にくると、キャプションの言葉遣いがその世界独特の言い回しになっているところに、ぐっときます。

「ウエストにひだをたっぷりと寄せて裾をすぼめることで足の運動量を十分にとり」

「寛大なシルエット」

「優雅な印象を与え、体のラインを美しく見せ、余韻をもたせる」...など。

......余韻!服にまつわることで、「余韻」という言葉を使ったことがなかったのでとても新鮮で、自分の語彙に入れたいと思いました。

 

おまけ2。

文化学園が出版している書籍、どちらもおもしろいです。
文様で注目、国で注目。同じや違いを発見する。

 

こちらは今風の着こなし方を提案しつつも、民族衣装についての解説資料にもなっていてお得。なによりその衣装、その文化へのリスペクトがひしひしと伝わる。
ファッションに取り入れてみると、楽しみが広がったり、可能性が広がりそう。
自分という人間を表現する大きな要素なので、楽しんでいきたい。

 

 

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《お知らせ》3/23 爽やかな集中感 百人一首と競技かるた体験会

Umiのいえでひらいてきた百人一首と競技かるたの体験会は、3月23日で一旦最終回となります。

気になっていた方はぜひいらしてくださいね!

 

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千年の時を経て、文学、文化、芸術、スポーツなど様々なジャンルにわたって発展してきた百人一首
競技かるたを通して、その奥深さにふれてみませんか?

大人になったから今だからこそわかる、四季の移ろいや、人の情け、現世のはかなさ、生命の美しさを、和歌を鑑賞しながらみんなで味わいます。
3月は春や別離の歌を中心に鑑賞します。
その後、鑑賞した歌を含めて、競技かるたの公式ルールで実際に試合をします。
勝った負けたの真剣勝負を楽しみましょう。

百人一首の札に一度もふれたことのない方も、
こどもの頃にやったきりでブランクの長い方も、
お楽しみいただける会です。

一首の歌に込められた情景や感情にひたりながら、
一枚の札を取ることで千年前とつながる喜びを味わう、大人のための会です。


ご参加お待ちしております。

■■■詳細■■■
■日 時:2020年3月23日(月)14:00~16:00
■対 象:18歳以上の方(子連れ不可)
     競技かるたの選手・経験者はご遠慮ください。   
■参加費:3,300円(税込)当日会場でお支払いください
■定 員:10名
■持ち物:飲み物(競技後はのどが渇きます)、靴下、ヘアゴムやピン(髪の長い方)  
■服 装:床座し、足を開いて前かがみになります。胸元の大きく開いた服や膝上のスカートはお控えいただき、動きやすい服装でお越しください。 衝突の際にケガをすることがありますので、爪は切っておかれるとよいです。
■会場:横浜 Umiのいえ http://uminoie.org/access/

■申込:https://coubic.com/uminoie/174356

プログラム 
・お互いをちょっと知る時間
・解説:百人一首の歴史、文化的背景、歌の解説。競技かるたの成立の経緯。競技かるたのルール。
個人戦:公式の競技かるたのルールで、1対1で対戦。レベル分けして、基本のきから段階を追ってゆっくり進めます。
・きょうどうだった?

 

参考サイト

・前回の様子 
 http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2020/01/08/203154

百人一首が笑っている(ほぼ日の学校)
 https://www.1101.com/n/s/100wara/2020-01-11.html?fbclid=IwAR1oEPMW_e9erI8pUQiSfhz_WhgOzZ8bi-IxvtG0We02wbaNBKvD-RaKTUw

・HOW TO PLAYかるた〜競技かるたのルール(全日本かるた協会)
 http://www.karuta.or.jp/howto/howto1.html

 


ガイド:舟之川聖子(ふなのかわ・せいこ)
"競技かるたの聖地"滋賀県大津市の出身。子どもの頃から家庭や学校で百人一首に親しむ。7年前に漫画「ちはやふる」を読んで百人一首を好きだった気持ちを思い出し、友人と「かるたCafe」というコミュニティを立ち上げ約6年活動した後、競技かるたに本格的に取り組む。現在はB級弐段。
HP: https://seikofunanokawa.com/
Blog: http://hitotobi.hatenadiary.jp/
Twitter: https://twitter.com/seikofunanok

 

Umiのいえより

秋は秋の、冬は冬の歌を解説してくれる講師 聖子さん。
彼女の解説がやわらかいから、ノリやすい。
参加者も、その歌を眺め、あーだこーだと、思い思いにイメージした情景や心情を語り合ってみる。
どれが正解かなんてわかりませんが、昔の人の目線や皮膚感、そこにいる人影を、思い浮かべてみるのはなんて楽しいの!

そして、いくつかの歌に馴染めたところで、いざ本番!!
たった一枚取れただけでも、興奮!!

パソコン仕事では使わない脳みそを、フル活用してるみたいで、
めちゃくちゃ爽快です。

この競技かるた体験会は、この3月で一旦終了です。
最終回にぜひお越しください。
初心者さん、学生のとき以来の方でも大丈夫ですよー。
ご一緒しましょうね!(まきこ)

 

 

■■■■ Information ■■■■

 

百人一首と競技かるたの出張開催、承ります。

 

●概要:千年の時を経て、文学、文化、芸術、スポーツなど様々なジャンルにわたって発展してきた百人一首百人一首の和歌を鑑賞してその文学的味わいを深め、競技かるたを通して武道精神にふれる、未経験者や初心者向けの体験講座です。

●内容百人一首の成立〜競技かるたに発展していくまでの歴史や文化的背景を知り、和歌を鑑賞します。後半は競技かるたの公式ルールにのっとって、実際に取る体験をします。

●プログラム一例:

・お互いをちょっと知る時間
・解説:百人一首の歴史、文化的背景、歌の解説。競技かるたの成立の経緯。競技かるたのルール。
個人戦:公式の競技かるたのルールで、1対1で対戦。レベル分けして、基本のきから段階を追ってゆっくり進めます。
・きょうどうだった?

●大切にしていること:
・季節を歌で感じる、「鑑賞の味わい」
・身体ごと歌を感じる、「全感覚の覚醒」
・教えると教わるが混じり合い、「持ち寄る場」

●講師:舟之川聖子

"競技かるたの聖地" 滋賀県の出身。子どもの頃から家庭や学校で百人一首に親しむ。2012年に漫画「ちはやふる」を読み、百人一首を好きだった気持ちを思い出す。友人と「かるたCafe」というコミュニティを立ち上げ、2017年まで活動した後、かるた会に入会。競技かるたに本格的に取り組む。現在はB級弐段。
 

●講師料
3.5万円〜+交通費別途。
(講座時間:〜2時間, 参加者:4名〜, 事前打ち合わせ:〜1時間。

●実績

・杉並区 【男女平等推進センター講座】マンガから学ぶ「女性の働き方と両立支援」 (実施者:こどもコワーキングbabyCo)

http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2018/10/08/152323

・中央区 女性センター・ブーケ21講座 「ようこそ!百人一首と競技かるたの世界へ」

http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2018/03/27/175736

・はじめての競技かるた@アカシデカフェ
http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2018/06/18/152850

・爽やかな集中感 百人一首と競技かるた@Umiのいえ

https://coubic.com/uminoie/174356

 

●お問い合わせフォーム●

 

 

《お知らせ》2/11 映画『トークバック 沈黙を破る女たち』でゆるっと話そう

2月のチュプキでの開催が決まりました。

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ゆるっと話そうシリーズ第9回

『トークバック 沈黙を破る女たち』

2月11日(火•祝) 19:05〜19:50 @シネマ・チュプキ・タバタ

 

 

〈ゆるっと話そう〉は、映画を観た人同士が感想を交わし合う、
45分のアフタートークタイムです。
映画を観終わって、 誰かとむしょうに感想を話したくなっちゃったこと、ありませんか?
印象に残ったシーンや登場人物、ストーリー展開から感じたことや考えたこと、思い出したこと。
他の人はどんな感想を持ったのかも、聞いてみたい。
はじめて会う人同士でも気楽に話せるよう、ファシリテーターが進行します。

 

第9回は、『トークバック 』をピックアップ!

http://chupki.jpn.org/archives/5235


アメリカ・サンフランシスコの刑務所で誕生し、元受刑者とHIV陽性者の女性たちが自身の人生を芝居にして上演するアマチュア劇団を追ったドキュメンタリー。
表現によって自らの人生を「産み直す」ような女性たちの生き様に、人間の可能性を感じずにはいられません。

この映画自体が、製作中、公開後に観客との表現やトークバックの場を数多く生み出してきました。その頃から起こってきた#MeTooをはじめとする運動や表現は、さまざまな「見ないことにされてきた」現場に光を当ててきました。
今、わたしたちはこの映画を通して語ることがたくさんありそうです。

ささやかな感想を語ること、聴くことを通して、自分の願いや思いに気づくような時間になりますように。ご参加お待ちしています。


日 時:2020年2月11日(火•祝)19:05(16:55の回終映後)〜19:50

参加費:投げ銭制 \500〜

予 約:不要。
    映画の鑑賞席は予約がおすすめです。
    http://chupki.jpn.org/archives/5235

対 象:映画『トークバック 沈黙を破る女たち』を観た方。
    別の日・別の劇場で観た方もどうぞ。
    観ていなくても内容を知るのがOKな方はぜひどうぞ!

会 場:シネマ・チュプキ・タバタ 2F(1F映画館受付にお声がけください)



<これまでの開催>
第8回 人生をしまう時間(とき)
第7回 ディリリとパリの時間旅行
第6回 おいしい家族
第5回 教誨師
第4回 バグダッド・カフェ ニューディレクターズカット版
第3回 人生フルーツ
第2回 勝手にふるえてろ
第1回 沈没家族

進行:舟之川聖子(鑑賞対話ファシリテーター
twitter: https://twitter.com/seikofunanok
blog: http://hitotobi.hatenadiary.jp
hp: https://seikofunanokawa.com/

 

シネマ・チュプキ・タバタでは、「トークバック」の監督・坂上香さんの作品、
ライファーズ 終身刑を超えて」の上映もあります。http://chupki.jpn.org/archives/5230


また、新作「プリズン・サークル」が1月25日(土)公開です。
https://prison-circle.com/

 

 

_____________

 

ファシリテーターと映画上映会や鑑賞対話の場をつくりませんか?
目的、作品の選定、プログラムの設計、対象者の設定、会場、ファシリテーション計画、宣伝など、鑑賞対話ファシリテーターとディスカッションしながら組み立てていきましょう。
ファシリテーションのお仕事依頼は、概要をお送りください。
・ご自身の企画やファシリテーションのご相談は、対面またはZoomでセッションいたします。30分・60分の枠がございます。
 
コンタクトフォームよりお問い合わせください。

松濤美術館の『サラ・ベルナールの世界展』は1月末まで!

松濤美術館の『サラ・ベルナールの世界展』は今月末までだよ!のお知らせ。

 

特に映画『ディリリとパリの時間旅行』を観た方には、親近感を抱いたこのタイミングで、よい鑑賞体験ができるんではないかと思います。

ディリリの中でもサラは超重要人物。サラがいなくてはあの状況の打破は難しかったと思う役どころでした。

何よりあのキャラクター、そして自宅!最高でしたよね。

 

▼『ディリリとパリの時間旅行』パンフレットより。

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描かれた対象、他人にとってのミューズ。

それだけではない、彼女自身のアーティスト性を是非ともどーーーん!と感じたい。

この記事では、わたしは鑑賞にあたってここの動機が非常に強いのだ、ということを書き留めておこうと思いました。

 

はてさて、どんなキュレーションなのでしょう。楽しみです。

そうそう、つまりわたしもまだ行ってないんですよ。

 

美術館のHPを見たら、まだ参加できる関連イベントもあるようです。

一昨年から全国を巡回してきて、東京の松濤美術館でフィナーレです。

見逃せない!

《レポート》1/10 映画『人生をしまう時間(とき)』でゆるっと話そう

年が明けてまだほんのりお正月の余韻の残る1月10日のお昼どき。
シネマ・チュプキ・タバタで今年最初の「ゆるっと話そう」をひらきました。

今回の映画は、『人生をしまう時間(とき)』

看取られて逝く人、家族、サポートする介護&医療チームが共に過ごす。
その最期の時間(とき)を見つめた200日間のドキュメンタリーです。

 

年末年始という時節柄、家族との関係について、あるいは自分のこれからについて、考える機会があった方も多いでしょう。

老いること、病に倒れること、看取ること、死ぬこと...。
この映画を観ることがしんどい方もいるかもしれないけれど、「今まさに必要としている」「大切に見つめたい」という思いを抱いている方も多いはず。

映画を観て湧いてきた思いを安心して言葉にできる場、感想を交わすことで、この映画を観てよかったなと思えて、温もりや希望を持ち帰ってほしい。

そんな思いで当日の場をひらきました。


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監督の下村幸子さんも駆けつけてくださり、10人の方々と座を組みました。

 

話し方のルールについて共有した後、まずは一人ひと言ずつの感想を一周しました。

映画を観にきたきっかけや、映画に出てきた印象深いシーンのこと、登場した人たちの言動やふるまいから感じたこと。そしてその思いに通じるご自身の経験とが言葉になって、少しずつ場の真ん中に出され、優しく重なっていきました。

下村監督も皆さんからの感想を受けてのご自身の率直な思いや、映画に出てきた家族のその後の話などをしてくださいました。

 

二周目は、言い足りなかったこと、思い出したことなどを、また一人ずつ話していただき、みんなで聴きました。

職場である施設や病院のこと、患者さんや利用者さんの看取り、子どもの看取り、亡き家族への思いなど...映画を経由したからこそ出てきた、大切な話を聴かせていただきました。

こんなふうに生きていきたい、これからこんなことがしたい、という願いや決意を口にされる方もいて、45分の場が終わる頃には、すっかり心がぽかぽかになりました。

 

これぞまさに生(せい)の実感!!

 

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当日参加してくださった、あまきょうさんが感想を綴ってくださいました。

同じ場を共にした方の表現にまた触れられることがうれしい。ありがとうございます。

note.com

 

 

わたしはこの映画で、下村監督の目をお借りして、その場に一緒に居させていただいたように思いました。一緒に先生や看護師さんについていって、いろんな家や家庭を訊ねる。事情はわからないながらも、映っているものに目を凝らし、聞こえる音に耳を澄まし、たくさん感じ取りました。

最期の日々は一瞬一瞬がとても貴重だから目が離せない。けれども、映画からは後を引くような痛みや苦しさは負わされません。かといって美化もない。すべてを映しきっていないからこそ、わかることや想像できることがあり、それが観る人に委ねられていました。

信頼と誠実さと優しさの映画です。

映画を観てから何日も経ちましたが、日常のふとした瞬間に、ご家族の笑顔や、先生やケアマネさんの言葉、色づいた柿の木のこと、背中にそっと置かれた手のことを思い出します。そして、わたし自身がお別れしてきた人たちのことも想い、温かな気持ちになります。

妊娠・出産という生の起こりが一人ひとり異なるように、生の終わりも一人ひとりがまったく違う。「在宅看取り」をテーマに据えても、具体的にこのように違うということを映画で見せていただいたし、皆さんとの対話の中でも実感しました。
自分がいかに固定的なイメージを持っていたかにも気づかされました。

エンディングノートを前に、「ではわたしはどう生きるか、どう終うか」をますます考えたくなりました。怖れや不安からではなく、まるで興味関心の延長のように。

 

 

 

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当日も紹介させていただきましたが、下村監督が書かれた本『いのちの終(しま)いかた』もとてもよかったです。映画の形式では説明できなかった背景、語り尽くせなかったエピソード、撮影中の監督自身の気持ちなどが、丁寧に綴られています。

チュプキの受付でも販売しています。

映画をふりかえりたい方も、まだ心の準備ができていない・遠方で上映館にアクセスできないなどの理由で映画を観られない方も、いろんな方にぜひ読んでいただきたい本です。

 

 

わたし自身、対話の場や監督との出会いも含め、ほんとうに幸せな映画体験でした。

鑑賞者同士が感想を話すことを通じて生きる力を育む場、作り手・届け手・受け手がフラットに対話し交流できる場をこれからも営んでいきます。

作ること、届けることの喜び、表現の希望を広げたい!

 

ご参加くださった皆さま、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました。

(右:監督の下村幸子さん、左:舟之川)

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シネマ・チュプキ・タバタにて、1月31日(金)まで。
日本語字幕・音声ガイド付き。水曜定休。
1月26日(日)上映後、下村監督の舞台挨拶あり!

chupki.jpn.org

 

 

 

次回は、2月11日(火•祝)19:05-19:50 

『トークバック 沈黙を破る女たち』でゆるっと話そう 

ご参加お待ちしております。どなたでも参加OK。事前予約不要。投げ銭制(¥500〜)

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ファシリテーターと映画上映会や鑑賞対話の場をつくりませんか?
目的、作品の選定、プログラムの設計、対象者の設定、会場、ファシリテーション計画、宣伝など、鑑賞対話ファシリテーターとディスカッションしながら組み立てていきましょう。
ファシリテーションのお仕事依頼は、概要をお送りください。
・ご自身の企画やファシリテーションのご相談は、対面またはZoomでセッションいたします。30分・60分の枠がございます。
 
コンタクトフォームよりお問い合わせください。

アサヒビール大山崎山荘美術館と清宮質文展

年明け、京都のアサヒビール大山崎山荘美術館に行ってきた。

この美術館の評判は何人もの友人から聞いていて、ずっと訪問の機会を待っていたところだった。ちょうど東京で見かけた清宮質文(せいみや・なおぶみ)展のチラシになにやら強く心をつかまれ、帰省と重なることもあり、ついに機巡る、と喜んで出かけた。

www.asahibeer-oyamazaki.com

 

JR山崎駅から徒歩12分ほど。線路を渡るといきなり入山。急な坂道をてくてくと行く。駅から無料の送迎バスもある。鳥の声、山の音が気持ちよい。玄関までの数分のアプローチにはたくさんの草木や花が植えられている。山のロッジのような玄関を入ると、別世界が広がる。

 

わたしは清宮質文のことは何も知らなかったが、作品をみていると、こどもの頃からとてもよく知っている気がした。


深く静かな内面の静寂(しじま)を聴いて、捉えて、色と共にそっと写し出す。いろんな人がそれを試みているけれど、こんなに小さな気配の音まで拾ってくる人を知らない。

 

作品から受ける印象とは裏腹に、緻密な計算の上に成り立っていて、相当な力仕事のために毎日腕立て伏せをしていたなどの解説がある。

いや、おおよそ仕事とは、そういうものなのかもしれない。

 

作品リストに図版入りの解説までついていた。展覧会用の図録はなかったのでうれしい。

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ポストカードセット。可能な限りの色の再現の跡。どれも好きな作品ばかり。
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清宮のどの作品もこの美術館にしっくり合う。もはや館の一部となっている常設の作品たちも、居心地が良さそうだ。

もともとは山荘だから普段使いではなかっただろうが、それでもどこか生活の気配を残している。丁寧に作られてはいるが重厚すぎず、自然と共に在るような建築や調度品に心が落ち着く。

 

テラスからは見える平野と川の広がり。

暖かい時期には、この席からお茶を飲みながら眺めを楽しめそう。

 

清宮の作品にこの美術館で出会えたのがよかった。

会期は2020年3月8日まで。


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映画『台湾、街かどの人形劇』〜伝統と継承、父と子、師と弟子

映画『台湾、街かどの人形劇』を観た。

www.machikado2019.com

 

購読している毎日小学生新聞に載っていて、これは観なければと思っていた。 

mainichi.jp

 

 

思っていたわりに、都内のどのトークイベントも来日イベントも逃してしまい、ようやくたどり着いた劇場は、横浜シネマ・ジャック&ベティ

東京に住まいを移してから20年。ようやく来られた老舗の劇場。

1991年の開館だから、わたしが10代で、BS放送レンタルビデオで映画をみまくっていた頃からあるということだ。

大阪時代に行ったACTシネマヴェリテ、第七藝術劇場扇町ミュージアムスクウェア京都みなみ会館や、東京に来たばかりのときによく行ったシネヴィヴァン六本木、三百人劇場、中野武蔵野館などの映画館を思い出した。


いろんな映画館でいろんな映画を観てきたんだなぁ。

やっぱりわたしは映画が好き。映画館が好き。


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この劇場はほんとうにすごい。週替わり、2シアター、1日12〜14本の映画をかけている。見間違いかと思ったけど、数えてみたらそうだった。すごい......。

 

この映画にたどり着くまでに、いろいろな支流があるが、うまく整理しては書けない。
書いてしまうと大切なものがこぼれ落ちるような気がする。

ただ、とにかく、わたしにとって特別なものがたくさん詰まっている映画。

そういう予感が強くあった。


そもそも、このドキュメンタリーで追っていたのは、あの侯孝賢ホウ・シャオシェン)の、あの映画『戯夢人生』で描かれた李天禄(リー・ティエンルー)の息子・陳錫煌(チェン・シーホァン)というのだから!

特別でない、わけがない。

 

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素晴らしかった。美しかった。

なんと精緻な技芸、静謐な世界。

 

一人の人間の営みと芸を膨大な歴史に織り込んだドキュメンタリー作品。
原題は「紅盒子」。紅い小箱の意。
英題は"Father" 

血筋の父子、家の父子、伝統の父子、技芸の父子、国の父子…。

 

陳錫煌の枯れ木のように皺だらけの手。

繊細で詩的な指遣い。小さな人形に命が吹き込まれる。

 

台湾語台湾語以外の言葉。薄れていく言語。一度「封殺」された言語。

「言語も文化も奪うのは容易いことだ」という言葉に、胸が苦しくなる。

かつてわたしの国の人は、他の国や地域の人の言語や文化を奪ってきたから。

 

台湾語がわかる人も少なくなってきた」という言葉に、能楽の行く末を思ったりもした。

 

日常生活の延長、娯楽だった布袋戯が特別なものになってしまっている、風化。

伝統として手厚く「保護」される対象にも、まだなりきれないでいる。

その苛立ち。

 

激動の時代を生き抜いた人形遣いたち、楽師たち。

迫害され、持ち上げられ。

でもまだ終わっていない、終わらせない、終われない。
天命だから。選ばれてしまったから、逃れることはできない。

 

10年の歩み。人の変化。関係の変化。

人の死。過ぎ去っていく時間。

それでも、大切なものを受け取り、受け継がねばという切実さを持った次世代の手により、確かにこの伝統は続いていくことが予感される。

その一方で、次第に明かされていく親子の、兄弟の、家族の、あるいは血を超える師弟の愛憎。

 

映画を通した、それぞれの人と「父」との対話。

 「息子たち」はただ、「お父さん」に愛されたかった、認めてもらいたかったのではないか。

 

どのシーンも美しく忘れがたいのだけれど、とりわけラストの美しさはまったく文字での表現を放棄したくなるほどだ。

 

これが記録でありつつ、映画作品として、鑑賞対象としてあることに、心から感謝したい。

 

パンフレットも丁寧に作られている。映画の中の陳錫煌は芸神のような存在として映るが、インタビューを読んでいるとやはり生身の人間。気さくな人柄が見える。

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それにしても人形劇というのは、どうしてこうもわたしを惹きつけるのだろう。

年末に訪れたエンパク(早稲田演劇博物館)の企画展『人形劇、やばい』の感想も書きたいが、どうしても書き出せないでいる。

今はまだわからない。

でもいつか、何か重要な根っこにつながる日がくるのではないかと思っている。

 

 

《お知らせ》2/8(土) あのころのいじめとわたしに会いにいく読書会

同タイトルで2回ひらいてきた、いじめをテーマにした読書会。
第1回:http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/10/04/091730
第2回:http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/11/28/173713

 

2/8(土)にもひらくことになりました。
Umiのいえのシリーズとしては、一旦最終回です。
気になっていた方、ご参加お待ちしております。

いじめをされたわたし、
いじめをしたわたし、
いじめを観て楽しんだわたし、いじめを見ないふりをしたわたし...
すべての人に関係がある《いじめ》をテーマにした本を読んで感想を語る読書会です。

 
今回はこちらの本を取り上げます。
萩原浩『サークルゲーム
(『いじめ』をめぐる物語:朝日出版社刊より)

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https://amzn.to/382bhHn(単行本)
https://amzn.to/36QUDup(文庫)
 
物語の世界を旅しながら、あの頃の《わたし》に会いに行ってみませんか?
大人になった今のわたしだからこそわかることや、
物語の感想を通してだからこそ話せることがあるかもしれません。
また、みんなの感想を聴くことから、気づくこと、
日常に持ち帰れることが見つかるかもしれません。
 
当日は、コピーを配布して会の冒頭で読書の時間をとります。
著作権保護のため、コピーは終了後に回収します。
事前に読んでからの参加も歓迎です。
 
挨拶→ 読書の時間→ 感想トーク→ ふりかえりの流れで、
読書会のプロ、鑑賞対話ファシリテーターが進めます。
読書会がはじめてでも安心してご参加ください。

ご参加、お待ちしております。
 
2020年2月8日(土)10:00~12:30
■対 象:いじめのテーマに関心がある方、物語の感想を話し合ってみたい方。
     読書会がはじめての方大歓迎。
     ハイハイ前のお子さんは同伴可。
■参加費:3,800円(税込)
■定 員:6名  *3名以上で開催とさせていただきます!
■会 場:NPO法人Umiのいえ
■アクセス:JR横浜駅から徒歩12分 http://uminoie.org/access/
■キャンセルについて:
 2日前までのキャンセル -->無料   
 前日のキャンセル -->参加費の50%   
 当日のキャンセル-->参加費の100%   
 をお支払いいただきます。

お申し込みはこちらhttps://coubic.com/uminoie/979560


ファシリテーター:舟之川聖子(ふなのかわ・せいこ)
鑑賞対話ファシリテーター。場づくりコンサルタント
芸術や文化を発信する作家や施設、届け手と共に、作品と対話を中心とした新しい鑑賞体験の場をつくることを通して、表現は人間にとって生きる上で不可欠なものであり、希望となることを伝えている。また、読書会のつくり方講座や場づくり講座、コンサルティングサービスを通して、場をつくりたい人のサポートもしている。
・Umiのいえにて『爽やかな集中感 百人一首と競技かるた体験会』を開講中
 https://coubic.com/uminoie/174356
・過去の読書会
 ・『夜と霧』を読む会
 ・『いのちを”つくって”もいいですか?』読書会
 ・『あさきゆめみし』を語る会
 ・『CIPHER』を語る会
 ・大人のための『おしいれのぼうけん』読書会
 ・こくごのじかん読書会『シッダールタ』
 ・そういえばギリシャ神話ってなんだっけ?の会
 ・積読本をひらく読書会、ほか多数
 
HP: https://seikofunanokawa.com/
Blog: http://hitotobi.hatenadiary.jp/
Twitter: https://twitter.com/seikofunanok

 

 

《Umiのいえより》

第3回目の今回でこのシリーズは最終回。
小説を通じて「いじめ」を語り合う。
自分が感じたことを話すのも、
他の人の感じたことを聴くことも、
大変貴重な体験です。

扱うテーマはシビアだけど、
集中して感じ考え話す読書会のスタイルが、本当に面白く深い体験だった!ので、みんなにすすめたい!

📗小説の中に、過去の自分がいるかもしれません。
被害者、加害者、傍観者、教育者、保護者。
一人一人の気持ちを読み解き、
人の弱さと強さ、複雑さを眺めてみよう。

📕そして、私の胸の中に、何が描かれるか。
何かを思い出したり
何かが消化したり、
動くと思います、きっと。

読んでディスカッションする2時間半が、映画のように、心に残ります。

 

《今回の選書のポイント》

●これまで2回ひらいてきた中で生まれた、疑問や課題意識を元に選びました。
・少し前の時代感覚→同時代性(2018年刊)

・リアルの場のいじめ→オンラインで行われるいじめも描いたもの

・男子をいじめるのは男子とは限らない→性別や年齢をさまざまに

・大人にもいじめあるよね?→大人同士のいじめ、ネット炎上なども扱う

・加害行動の原因が家庭環境以外にもありえる→さまざまな原因または不明な状況を見る

●いじめをテーマにした読書会だからこそ、
・どこからがいじめか(なぜいけないか)
・その場でのいじめの起きやすい構造とは
・その立場からできることは何か
・こどもの頃のいじめの体験は大人になってどんな影響を与えるか
などの点について、読みながら、感想を話しながら、考えていける物語を選びました。


●いじめをテーマにした物語というと、凄惨な描写があるものもあり、読み進めるのが辛くなるものもあります。できるだけ読者の不安が少なく、読後に勇気や希望が感じられるような物語を選びました。

 

●今回のテキストは少し長くて40ページほどあります。

人によっては時間内に読み終わらない可能性もあります。
未読のところは、あらすじを補足しながら進めます。
もっと短いものにしようかとも思いましたが、この物語のもつ力を信じてみたいと思いました。

読み終わらなくて心配な方は、図書館で借りて読むなどしてくださってもだいじょうぶです。

 

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\_____鑑賞対話ファシリテーターにご依頼ください_____/

対話の進行はもちろん、対話にふさわしい対象(作品や資料や場所)を見つけることも、鑑賞対話ファシリテーターの職能です。

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奈良・平安・令和〜平安宮廷スポーツスタジアム

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東京国際フォーラムのロビーで何やらすごい展示をやっている、平安時代の装束が見られて、写真撮り放題、ぜったい行くべし!

...という投稿を目にしてすぐに行ってきた。

 

J-CULTURE FESTという、東京国際フォーラムが主催するイベントの一環。

j-cf.jp


企画協力:井筒企画、制作:NHKアート、企画制作:NHKエンタープライズ

 

展示は3つのコーナーにわかれている。

 

平安宮廷スポーツスタジアム

東京オリンピックとの関連でメインのコーナー。

最も広いスペースを使って、蹴鞠(けまり)、騎射(うまゆみ)、打毬(だきゅう)を紹介している。

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相撲節会

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相撲や騎射など、左右に別れて行う競技において演奏された舞曲「蘭陵王(らんりょうおう)」と「納蘇利(なそり」のジオラマや装束も展示されている。今年はついに雅楽の「陵王」の舞を聴きに(観に?)行くことになったので、どういうシーンで使われていたのかを予習できてよかった。

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どうして平安なのかというと、令和に改元もあったし、受け継がれてきた独自の儀礼や装束にも関心が高くなってるからね、ということだと思う。

令和の初春 梅花の宴

飛鳥・奈良の時代の装束。素朴で美しく、風通しよくおおらか。
万葉集の「梅花の歌三十二首幷せて序」の解説も展示されている。
この時代は花といえば梅。

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御大礼の儀式と装束

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わたしは民族衣装や装束を見るのが大好き。
さらに平安文化は競技かるたにふれていると身近なものなので、とにかく驚喜しながら観ていた。中でも個人的に萌えポイントだったのが、源氏物語の場面を再現している騎射(蛍)と蹴鞠(若菜上)の展示。

 

36歳太政大臣となった光源氏。養女にした玉鬘に執心したかと思うと、異母兄の蛍兵部卿宮とくっつけさせようと仕掛けたり、翻弄させる。正妻だった葵の上との子・夕霧は幼馴染の雲居の雁のことが忘れられないが、父の内大臣の許しが得られず悩む。そんな時期に六條院でひらかれた騎射。光源氏の余裕が見える。

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若菜上

蹴鞠に興じている公達を眺める源氏、その隣で柏木が女三宮を見てしまう場面。源氏は41歳、臣籍降下したにも関わらず、不義の子・冷泉帝のはからいによって准太上天皇まで上り詰めたばかりで、人生で最高に充実した時期にあった。

本来やんごとなき立場の女性は、御簾の際に寄って姿を見られるようなことがあってはならない。しかしそのあたりの自覚がなく迂闊な女三宮は、飼っている猫がじゃれついて御簾があおられ、姿を見られてしまう。装束によってそれが女三宮であることがわかってしまうというところも解説されているのが心憎い。

夕霧の肩ごしに見えたものに息を呑む柏木の微妙な感情が伝わってくる。光源氏凋落の予感。運命の瞬間。世代を超える連鎖。

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いやぁ、いいですねぇ〜!!!!

ここでオタク得意の妄想力を発揮すると、まるでその場面に居合わせたかのような緊張感が走ってたまらない!!オタクでよかった...。

 

 

写真やテキスト、博物館で展示される宝物、絵画や絵本や漫画やアニメーションやゲームや映画...さまざまな出会いのツールがある中で、「この時代ってほんとうはどんな感じだったんだろう」を知る、確認するのに、この再現ジオラマというのもまたあらためて素晴らしい工夫だと思った。

 

ほぼ全方位からまわりこんで見られるのが最高。

自分の身体ごとそこにダイブする感覚。

 

色や文様や形。素材や比率まで丁寧に再現されている。

 妻戸ってこういうふうについてるのか、

 この服で座るときって裾はこういうふうにさばいて、こういう姿勢をとるのか、

 男性と女性の居る場所の距離感てこのぐらいなのか...とか。

ほんものを見た、という感じがする。

 

こういう体験もまた、今後の鑑賞や競技の中で生きてくることだろう。

 

これはほんとうに見られてよかった!

喜びをおすそ分けしてくれた方々に感謝!!

 

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格子と御簾と几帳と屏風の世界...。とにかく寒そう

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武官束帯、スキ...。

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田端文士村記念館で芥川龍之介に再会する

去年から鑑賞対話の場「ゆるっと話そう」もあって、シネマ・チュプキ・タバタに通うようになって、田端に急にご縁ができた。

駅前のコメダ珈琲に寄ったとき、同じビルの1階に田端文士村記念館という施設があるのに気づいた。北区の博物館のようだ。

いつか訪れたいと思っていたところに、芥川龍之介の死に迫る特集との町内会の看板を見つけ、これは絶対に行くぞ!と決意。

ちょうど芥川賞の発表があったのもきっかけになり、ふらりと寄ってきた。

 

《企画展》芥川龍之介の生と死~ぼんやりした、余りにぼんやりした不安~

https://kitabunka.or.jp/tabata/news/3611/

 

入口すぐの展示ルームは、田端文士村にどんな芸術家たちが暮らしていたのか、活動年表、交流などの概要がまとまっている。

真ん中の吹き抜けの展示スペースには常設のビデオコーナーと企画展その一、奥の展示スペースに企画展その二、という配置。こじんまりとしているが中身は濃い。

 

文士や芸術家たちが田端近辺に暮らしていたということをわたしは知らなかった。なんとなく大森近辺にはそのイメージがあったが、田端もそのような土地だったのだ。しかも芥川龍之介室生犀星萩原朔太郎菊池寛堀辰雄佐多稲子など超有名文人をはじめとして、歌人や画家や工芸作家なども数多く住んだという。こちらに芸術家一覧がある。錚々たる顔ぶれだ。

1945年終戦近くの大空襲で焼けて、この文士村は「解体」してしまうが、かつてこの地に培われた芸術の都が確かにあったという痕跡を、各々の芸術家の作品や遺品や記録資料に見ることができる。それらが展示されている館があるのは貴重なことだ。

 

 

ちょうど先日友人と「蜘蛛の糸」の話になり、「芥川龍之介っていじわるだよね」と意気投合したところだった。あの話、教訓話なのかと思いきや、そういうわけでもないような、何か後味が悪いような、薄ら寒い感触があるなぁと思っていた。

どの作品も彼にしかない完璧な美学で貫かれている。わたしは彼の作品を好きや嫌いの判断が未だにつかない。

 

ただ、どうしても惹きつけられてしまうところがある。

芥川龍之介の写真はどれも出来過ぎだ。カッコよすぎるほどカッコいい。
高校の国語便覧の中でも際立ってカッコよかった。

けれども甘さはない。神経質で洞察力鋭く斬られそうだ。
一番言ってほしくないことを言う。当たっているだけに痛い。
そんな意地悪さを感じていた。

怖い人だなという印象をずっと持っている。

 

龍之介と藝術論を戦わせた谷崎潤一郎、龍之介が人生と作品に多大なに与えた影響を与えた室生犀星、龍之介が創作を励ました堀辰雄、死を知らせる記事や友人たちの言葉、遺書、弔文の数々によって、龍之介の死の前後の日々が描き出される展示になっている。

 

誰もがある種の思い入れを持たずにはいられない人。

 

龍之介と親交のあった芸術家一覧を見るとざっと700人はいようか。さしずめFacebookの友達一覧のようだ。師の夏目漱石に倣い、毎週サロンをひらいていたという。
場をつくっていた人。

「あれほど人とつながっていた人であっても、相談する相手がいなかったとは...」という死後の友人の言葉が胸に刺さる。もちろんそうかどうかはわからない。相談をしたのかもしれない。それでも、そういう度合いを超えていたのか、という気もする。

本人にしかわからないことがあるのは、いつの時代の人間も同じ。

 

親友への遺書には、近親者との関係について触れているくだりもあるが、展示の中では解説されていない。謎めいた死。
もしかするとこれだけ時が経っても、語れないことがあるのかもしれない。

 

 

二つあらためて思ったことがある。

一つは、この時代に夭逝した芸術家は芥川龍之介のほかにもいた。急激に西洋化した近代日本の大きな時代のうねりの中で、繊細な感受性を発揮しながらも、それがために翻弄され苦悶する人たちの姿が、またここでも見えてくる。

もう一つは、生い立ちや、人間関係や、心身の病が人間の生涯に与える影響が大きいことを、わたしは芸術家の人生を通して学んできたところがある。その表現作品、作品の変遷、日記や写真や手紙など遺したものによって、精緻に知ることができる。同じようなことを、科学者や経営者や政治家からも学ぶ人もいるだろうと思う。わたしの場合は、芸術家から。

 

 

館内に置かれていたこの本は、「家族」一人ひとりの言葉を通して、また新たな龍之介の人柄に触れることができる。不思議と自分も龍之介に近い立場の者になったような、そこはかとない悲しみと優しさと癒しに出会うような一冊だ。

  

ロビーのビデオ視聴コーナーでは、芥川龍之介が自宅の庭で子どもたちとくつろぐ2分ほどの動画を見ることができる。
ほいほいと木に登り、屋根をすたすた歩いていく。
子どもからつばの広い帽子をばさりとかぶせられ、一瞬驚くが、すぐに目線をこちらに向けて、タバコに火をつける。

 

 

世が世なら、と思わずにはいられない。

 

 

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