ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

映画「滝を見に行く」

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「滝を見に行く」という映画を見た。2014年公開。友人が3人ぐらいすごいいいよ~と言ってて、ずっと気になっていた。

 
紅葉の時期に、幻の滝を見に行く温泉付きツアーに参加した7人のおばちゃんが、頼りないガイドとはぐれ、山道で迷い、一晩明かして、滝を見て帰ってくる。
 
という、ただそれだけの映画。
 
最初から空気がもったりしてて、「あ、これ寝そうでヤバい」と思ったのに、意外と寝なくて、最後まで観てしまった。
 
まずおもしろかったのは、「なんだこの山(笑)」っていうこと。妙高高原には失礼なんだけど、道が広すぎ、明るすぎ、なだらかすぎ、でそこで迷子って…となんか設定がぬるくて笑ってしまった。山というか森なんだけど、「まぁどっちでもいいわよ」って雑に言われそうな感じがすっごいおばちゃんぽい。森でも迷ったら大変なのわかるしバカにできないとおもうけど、山と聞いて、自分の山登りからイメージするものとのギャップがおもしろかった。
 
そしておばちゃんたちの一人ひとりの性格、ふるまい、仕草、口調…がなんかじわじわくる。食とか恋愛とか趣味とか、それぞれに自分をわくわくさせるものでできている。それは何十年も生きているあいだにすっかり体質と化してしまっているんだなぁと。
 
変わりようがないその人の核の部分が、アピールする必要もなく色濃く滲み出て、いろいろあったけど、もうだれにも遠慮することもないわたしかがそこにいる。でもそんなややこしいことは本人はまるで考えてもいない自然さが、非常におばちゃんぽい。
 
最初はランキングする人もいる。あの人はわたしより上か下か、みたいなこと。そして時間が経つうちにそれが表面化して衝突する。でもひとしきりもめたあとは、「あの人はああいう人よね」という諦めがついていく。そしてなんかおもしろいことがあると笑いあったりもする。仲良くなるっていうのとちょっと違って。諦める感じ。このへんの心理とか行動は実におばちゃんぽい。
 
焚き火を囲みながら一人ひとり恋バナしたり、いきなり歌いはじめたりするシーンも、うわああ(気恥ずかしい&懐かしい)ってなったのだけど、そこに女の人の変わらない性質みたいなものを見るからなんだろうな。
 
最近、わたしの友人が、「中学までは共学でなんかしんどかったのが、女子高に行ったらみんなそれぞれ好きなことしてて、それを優劣つけて比べないし、仲良いし、一緒にやるときもあるけど、それぞれに好きなことがあって、あなたはそれが好きなんだ~みたいな感じがすごい楽だった」と言っていたのを思い出した。彼女の高校生時代って、「滝を見に行く」のおばちゃんみたいな感じだったんだろうか、と勝手に想像。
 
女性はグループをつくるというけど、わたしは多くてだいたい4人で、7人ものグループは人生で2回ある。その、女の人が7人もいて、それぞれ個性的でありつつ、ひとつの目標に向かってまとまって、知恵を出しあって「仕事」する、おばちゃん的連帯感はなんとなく想像できる。女の人ばっかりでなんかやるのは楽しい。イラッとするときもあるけど、うまく回ってるときは説明不要の楽しさがある。
 
全体的に、監督のおばちゃんへのあたたかい愛情が感じられる映画だった。
 
滝を見に行って帰ってきただけなんだけど!
 
あとからじわじわきて、まだ書けそうなんだけど、とりあえずこのへんで。