ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

映画「むかしMattoの町があった」を観て感想を話す会《前半》をひらきました

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2/4(土)まち健(谷根千まちばの健康プロジェクト)さんとの共催『映画「むかしMattoの町があった」を観て感想を話す会』の前半が無事に終了しました。19人で過ごした貴重な時間でした。

 

まずこの映画がとてもよいのです。いかにもなところが一切なくて、愛にあふれていた。正直、辛いシーンもあるのですが、不必要に人をいじめていなくて(ストーリー上はいじめられていますが)、ちゃんと一つひとつのエピソードに意味があって、個別に丁寧に展開・決着されていく。そこにはまるでバザーリアその人のもののような、あたたかい眼差しがありました。

 

鑑賞後の感想を話す時間は、様々な属性や立場の人たちと共に、「わたしたちは何を見たのか」という問いを少しずつ進めていきました。「精神の病と人間の尊厳」という繊細なテーマで、参加されている方がその病の本人、家族、友人、支援者などである可能性もあるので、とにかく丁寧にひらいていくことを心がけ、人数が多いことを活かす場にできるよう、ぎりぎりまで進行を見直していました。皆さんにとってよい体験になっているとよいのですが。

 

途中、Matto pericoloso(危険な狂人)という単語がわたしの耳にガーンと飛び込んできました。果たしてそうなのだろうか。クライシスと呼ばれる急性期の状況も描かれていて、それを見ると確かに驚いてしまう。でも何も原因やきっかけがなくてそうなっているわけではないのでは?

 

それは本当に病気なのか、病気と病気でないとはどう違うのか、だれが病気と判定するのか、本人だけを見ることで解決できるのか、家族も「病」を抱えているのではないか、家族へのケアがないのではないか、家と病院以外の選択肢はないのか、隔離とはなんのために、改革が対話を通じて行われてきたというところに驚きと感動がある、イタリア的な明るさに救われる、屋外の世界の美しさ、男女のすれ違い、日本の現状・挑戦...etc、話題は多岐にわたりました。

 

重いテーマなので一人で観ると沈み込むだけで終わりそうですが、こうしてみんなで聴いたり話したりできるとホッとして希望がもてるし、自分の考えもどんどん進んでいくように思います。

 

今週末2/11は、後半です。前半が「わぁ......まじで?」というところで終わっているのでとても楽しみです。ご参加予定の皆さん、運営チームの皆さん、どうぞ宜しくお願いします。

 

この映画は、上映会方式で普及していますが、映画館でもときどき観ることができます。今は田端の「Cinema Chupki」という映画館で上映しています。ご興味あればぜひ!
2月2日〜28日『むかしMattoの町があった』 | CINEMA Chupki TABATA