ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

テープ起こし

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3年ほど前から、ときどきテープ起こしの仕事もしている。テーマや人(インタビュアー、インタビュイー)に興味があるものに限定される。作業なんでもやりますという感じではないので、どこかに登録をしているわけではなく、友人、知人のつてで依頼がある。分野は、医療、福祉、芸術など。

 

人の話を、内容もそうだけれど、人が話しているのを聴くのが好きなので、インタビューの現場にたまたま同席させてもらえているようなテープ起こしはとても楽しい。

 

醍醐味であり腕の見せ所でもあるのは、その「話」をどうテキストに起こしていくのかの工夫。その場の空気感、人柄、発言のニュアンスを文字のみでどう伝えていくのか。変換や表記の仕方、選び方に起こす人のクリエイティビティが発揮される。

 

句読点のどちらを使うか、どこで句読点を入れるか、「ケバ」と呼ばれるしかし大切な部分をどこまで拾うか、漢字・片仮名・平仮名・アルファベットのどれに変換するか、同音の漢字はどれを充てるか、括弧付きにするか否か、「ねぇ」か「ねー」か、読みやすさと話者のパーソナリティとの間をとる表記は、など、音声から読み取れるものはたくさんある。

 

固有名詞や専門用語を調べにいくと、知らなかった世界が広がっていて、これまたおもしろい。

 

いずれ原稿になる、その基になるテープ起こしという作業。インタビュー現場で生で話を聴いていなかった人々にもその熱が届く、よい原稿になるように、できるだけの貢献ができたらと思うし、例え自己満足だとしても、わたしなりのuncountableな価値を込めたい。

 

求められれば、インタビューのフィードバックもする。あるいは単に感想を送るときもあって、そのときはずいぶんと喜ばれた。現場をこちら側に立って共有し共感してもらえるというのは、人にもよると思うけれど、インタビュアーにとってはうれしいことだろうと思う。基本的に聴いて感じ取って書く表現をするというのは、孤独な作業だから。

 

聴いていると自然とその場のビジュアルが立ち上がってくる。声や話し方から、その人たちの表情や、顔の造作、ヘアスタイル、お化粧やファッション、部屋の内装、天気、光の当たり具合、周囲の環境。それに加えて劇中劇のように、話している人の語りの中に見ている映像も、こちらにはありありと見えてくる。

 

写真を見たわけでもないし、それが合っているかどうかもわからないけど、音から見えたものを感じていると、聴くと見るはけっこう近いところにあったり、イコールになったりする、とわかる。