ヒトトビ〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する場づくりを通して考えることなど。

オペラ「椿姫」のライブビューイングを観てあーだこーだと感想を話す会、ひらきました(守人編)

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最近、人とじっくり話をする機会が多いので、それで満足してしまっているのか、単に今は話すほうが表現の手段として自分にフィットしているからなのか。しばらくまとまって書くことから遠ざかっていました。今これを書くのにも相当苦労をしています。

 

それでも記録を残したいので、すごくだらだらと長文になりますが、がんばって書きます。でも今回は主催してどうだったかという話なので、作品の内容についてはふれていません。この調子だと作品編まで書けないような気がします...(弱)。

 

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4/9(日)『オペラ「椿姫」を観てあーだこーだと感想を話す会』をひらき、久しぶりに守人をしました。

守人は、場を設計・準備し、呼びかけ、集まったみなさんをきれいな景色の見える場所に連れて行き、帰ってくるまでの一連のツアーを守る役割の人です。場をひらいてはいるけれど、ファシリテーターというのとも何か違うなと思い、ラジオで相方さんが呼んでくれた名前でちょっと名乗ってみています。

 

今回は、METライブビューイングを利用して、NYのメトロポリタン・オペラの公演映像を映画館で観ました。

METライブビューイングの特長は、

・生で観るのに比べて値段が安い(1作品3,600円)
・映画を観るような気軽さ
・複数のカメラで撮影されていて、引きも寄りもあるので、METの劇場の雰囲気から歌手の表情やよく見える、観どころがわかる
・映画館の大スクリーンと音響でPCやTVのモニターと比べ物にならない迫力
・日本語字幕付きで何を歌っているかもわかる
・幕間にバックステージや歌手のインタビュー付き(これはけっこう"無粋"なほうにも振れられるので微妙)

といったところ。

 

こうしてわたしのような初心者が気軽に普段着で映画館に観に来ることができて、ライブビューイングならではの体験を通じて「オペラっていいものだな」と思えて、またときどき観に来たい、なんなら生もぜひ観てみたいと思えるようになったら、オペラ界にとっても新たなファンの獲得になるし、観客にとっても人生の愉しみが増えて、お互いハッピーである。これは画期的で合理的なシステムだなぁと思います。

最近はオペラだけではなく、歌舞伎やバレエなどもライブビューイングや映画上映に力を入れているようだし、いろいろと時代に合わせて変わっているのだなぁと思います。もちろん生に比べれば迫力は全然違うので別物だとは思うけれど、なにが本物かをうるさく言うよりも、わたしは伝統のある芸術が、したたかに生き残ろうとすることを応援したい。(能は正直あまり向いていないと思うけど...)

 

わたしはオペラの知識は全くありません。一度だけ、2011年9月にボローニャ歌劇場の来日公演「カルメン」を誘われて観に行ったことがあります。このときは、舞台がスペインではなくキューバで、第2次世界大戦後のカストロ政権下という設定になっていました。あらすじは変わらないけれど、登場人物の設定や舞台装置やファッションが現代そのもので、その斬新すぎる演出に初心者としてはかなり引いてしまいました。でもどうもこの芸術は気になる、他の舞台芸術にはない何かを感じる、できればもっとオペラっぽいもので再挑戦したいと思い続けてきたのでした。

とはいえ、ほとんど未経験なので、何を基準に選べばいいのか。どの演目、どの演者、どの劇場、どの席で観ると一番いいのか、どこに注目すればいいのかなどが全然わからない状態でした。たぶん入門本を読めば書いてあるだろうし、頼めば誰か一緒に行ってくれたかもしれないけれど、なにかそういうものではない、自分の望む出会い方をしたかったのです。つまり、オペラと親しくつながっている人を中心にした、人々との交流の中から出会いたい、という気持ちがありました。

 

そんなことも忘れていたのですが、ちょうど1年前にわたしの読書会に来てくださって知り合ったえとうゆかこさんが、ふとしたきっかけから一緒に場をひらいてくれることになりました。ゆかこさんはクラシック音楽やオペラが好きでよく劇場に足を運ばれているとのことで、今回ナビゲーションをお願いしました。歌手としてジャズやラテンを中心に歌う方でもあります。

 

今回はごく親しい友人のみを誘うクローズドな会でしたが、そういうときもわたしは場を設計をし、告知文を書くことにしています。式を執り行うときに、あらためて招待状を送るように、大切なものを交換する場では、親しい人だからこそお互いに真剣さと心地よい緊張感をもってあらためて出会いたいと思うからです。

 

ゆかこさんと打ち合わせで特に力を入れてすり合わせたのは、

①どんな人にきてほしいか
②今回の閾値の設定

でした。

 

「オペラ未経験者や初心者を歓迎します。未知の世界の扉を開いてみたい、古典芸術を味わいたい、またはみんなで話せるならチャレンジしたい、と思ってくれる方」としました。

そして、普段から芸術に触れたときに、理解できるかどうかではなく、自分が何を感じるかを大切にする人。対象と自分との関係や、自分にとっての意味などを心に持ってしまう人。一人で浸ってあえて言語化しないという鑑賞の仕方もありだけれども、ここは話すことを通じて体験を深めていきたい場なので、「その言葉にしづらい感じをなんとか言葉にしてみたい」、「他の人の感じ方を聞いてみたい」という方が向いている。

という話をしました。

 

事前の予習をお願いしました。ここでの閾値は、参加条件という意味ではなく、心が動くという反応を引き起こすためにかける最小限の力(負荷)という意味で使っています。初見でも何かを感じとることはできる。でもせっかく初めてオペラを観るならこれを抑えておいてほしい。その有無で得られる体験が変わるかもしれないので、大切なこととして組み込みました。

具体的には、あらすじなどの作品の紹介や、演出のポイントなどをゆかこさんのブログ経由で伝えてもらい、歌や音楽の聞きどころについて事前に5分ほどの動画を数本観てもらいました。

aktennotiz.jugem.jp

 

演劇と思ってみればそれは目で見るものだけど、演出によって見た目は全然違うし、なによりオペラは音楽の芸術だから、聞き覚えのあるフレーズが出てくると、その世界への入り込みがとてもスムーズになるのだ、とのゆかこさんの説明は、観終わってとても実感しました。

実際に予習があったおかげで、動画の演出や歌い方や演技との比較もできたし、ついでに自動再生された他のオペラを観たり聞いたりして、期待が高まるという効果もありました。

 

今回の「椿姫」は2時間45分という尺もとてもよかったと思います。最初から最後まで集中が途切れず観られた。他の作品は4時間近くだったし、素人的には知らない演目が多かった。有名な「ロメオとジュリエット」でも比較的短いとはいえ、3時間30分。でも今回こうして一度体験したので、今後はきっと大丈夫でしょう。

 

終了後に近くのイタリアンレストランに場所を移して、1時間半あーだこーだと感想を話す予定が、2時間ちょっと話し込んでしまいました。そのぐらい楽しくて、椿姫とオペラからほとんど離れなかったのに、話が尽きなかったのはよかったです。感性鋭く、言葉にすることに意欲的な友人たちと、豊かで深い経験をされてきたゆかこさんのおかげです。

 

わたしにとっては、月1開催のかるたを除くと、守人をするのは1ヶ月以上ぶりで、新鮮な経験でした。また来月あたりからぼちぼち活動を再開していきたいと思いますが、今回は内輪の会でも公募の場でも活かせることがたくさんあったと思います。とりわけ、誰と組むか、何を抑えるかということについての自分の直感は、かなりいい感じに尖って来たように思います。

 

古典を楽しむ場については、まだまだ自分にやりたい欲がありそうです。

今回のオペラの場をつくっていて思い出したのは、本を読んだり美術作品を見ているときに、古典の演目を知らないと理解できない表現や説明に出会うことが多くて、でもそのまま放置してきた後悔でした。今回の「椿姫」のようにその芸術独自の世界に入り込んで、自分に取り込んでいくことができれば、ぐっと見える世界が広がるように思いました。

同じようなことが数年前に能やシェイクスピア作品で起こって、古典の古典たるゆえんを自分なりに理解したという経験があるので、このように進んでゆけばいいのだな、という確信があります。

それは「教養としてそれぐらい知っておかないと恥ずかしい」というようなことではなく、純粋に自分の興味関心から来るものです。大人になったらいつか自然に知るようになるのかなと思ってきたけど、どうやら自分で掴みにいかない限り知ることはできないということと、自分の望む出会い方は自分で機会をつくりださなければ滅多には訪れないということも理解しました。

 

またその出会いを自分一人で行うのではなく、誰かと旅する場をつくるという手段をとるのがわたしはより楽しいと思っています。わたしに知識がないことでも守人はできるし、ナビゲーターが別にいれば、場をひらくことができる。

 

今後の探求が楽しみです。

(やっぱりだらだらまとまりませんでした...。書くのって話すのより大変だ...!)

 

 

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