ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

きょうも東京の夜空の下で

友人でドラマ「おっさんずラブ」を偏愛している人がいる。


彼女から先日聞いた話がとてもよかったので、シェアしたい。

 

 

偏愛なので、ドラマを何回も見返す、DVDを買う、サントラを買う、関連書籍を買う、グッズを買う、インタビューが載った雑誌を読みまくる、展示を見に行く、出演していた俳優さんの舞台を見にゆく、しおりを作って撮影地巡りをする、オフ会に行って友だちをつくるなどは、当然している上で、さらに、という話。

  

 

熱烈な「おっさんずラブ」ファンたちの希望で、最近ドラマ本編のシナリオが発売されたという。わたしはたまにハマるドラマはあるけれども、それほど熱心にチェックしているほうでもないし、業界の事情も全く知らないのだけれども、こういうことは稀なのらしい。

 

一日の終わり。

友人はリビングのテーブルに座り、おもむろにそのシナリオを開き、ドラマを流しながら、聞こえてくる音を聞き取り、該当のページの該当の箇所に書き込んでいく作業をしているという。毎晩!サントラに入っている音楽はもちろん、それ以外に聞こえる音はすべて!

・どのシーンでどんな音が鳴っているのか。
・脚本のセリフと実際のドラマの内容のセリフの差異(シーンも)
・役者の表情、シチュエーションからの考察、感想

をボールペンの色を変えて書き込んでいるらしい。

そして最近では、映像に映っているもの、例えば腕時計の時刻とか車のナンバーなども扱いはじめたという。

 

 

彼女は映像の人でも演劇の人でもない。強いて言えば音楽か。

とはいえ、彼女自身はそれをなんのためにやっているか自分でもよくわかっていないのだけど、とにかくやらざるを得ない使命感を持ち、誰から頼まれたわけでもなく、日課として毎日コツコツと作業を続けているらしい。

 

書き込んでいるうちに、俳優によってアドリブの量や頻度が違うことに興味をもったり、ほんの少しの言い回しの違いで観る側への伝わり方が大幅に違うことに感動することもあるらしいが、とはいえ、あくまで副産物としての気づきであって、それが目的でやっているわけでもないところが興味深い。

 

実際の書き込みページをチラッと見せてもらったが、「やばい」しか言葉が出てこなかった。こういう情熱の表れ方...たまらん......!!

 

 

 

一つの作品の好きになり方として、自分で漫画化したり、小説にしたり、短歌にしたりという二次創作の表現として行い、同人誌を作って発表したり、フェスに出してりする人はいると思うが、そういう方向でもない。特に誰に見せるわけでもないらしい。

 

徹底的な観察。

なんというかもう、「彼女自身がおっさんずラブになろうとしている」としか思えない。

 

 

曰く、

せいこさんに、映画を観ながらメモをとるとか、感想を伝え合う楽しさや味わい尽くそうという心意気を教えてもらった。

そうで、それを聞いてなんだかとってもうれしい。

そう、彼女とは今年、「ちはやふる-結び-」を語る会や、「ちはやふる祭り」を一緒にひらいたのだった。楽しかったなぁ。

ちなみに映画を観ながらメモをとるのは、わたしも「スリー・ビルボード」を一緒に観に行った別の友人から教えてもらった楽しみ方だ。

 

 

 

彼女は「ちはやふる」ももちろん偏愛していて、語る会にもおびただしいメモの束を持ってきてくれていたのだけれども、「おっさんずラブ」のように「本編を観ながら毎日シナリオにメモする」という方向への発揮ではなかった。

ハマるものそれぞれに好きになり方、味わい尽くし方があるらしく、なにがどう違うのかは本人にもわからないらしい。おもしろい。

 

彼女がそこまでハマっているんだから気になるなぁと思いながら、リアルタイムでは追いかけていなかった。それがなんと、次のお正月に6時間一挙放映されるとのこと。

これはちょっと見てみて、感想を伝えたいなぁとようやく予約録画設定をしたところ。

 

しかも

もし、せいこさんが観てみて納得感がなかったり嫌悪感があったりしても、その気持ちを伝えてもらえるとうれしい。いろんな感じ方を知りたい。

とか言っちゃって、...うう、なんかもう愛だねぇ〜

ここまで一つの作品を愛せるって本当に幸せなことだし、作品にとっても幸せなことだ。

 

 

表現から受け取り、受け取ったものを自分を通過させて情熱を伴う表現として出して、その表現から派生した何かを受け取って、また表現して...というずっと続く循環が生まれる。

 

あの手この手で味わい尽くして、ずっとずっと楽しめる。一生遊べる。

 

「オタク」は人類が文明を持ち始めた頃からたぶんいたし、今さらこうやってわざわざ書かなくても、ハマるとか偏愛するとかってこういうものだと思うんだけれど、一つの作品に対していろんな味わい方があって、それは一人ひとり違っている。

わたしがこうやってブログを書いている今この間にも、彼女があの日課をコツコツとやっているのかと思うと、妙に心があたたまるんだ〜という話、でした。

 

表現物や自然物の存在を愛でて、祝って、寿いで、世界を豊かにしているのは、彼女やわたしも含めた、こういうちょっとおもしろい人たちの存在なんだろうと思う。

 

オタク万歳☆

 

 

(12/16 追記)

地上波での一挙放映を待たずしてもAmazon PrimeAmebaTVなどの動画サイトでも配信中のようです。

 

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