ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマ、デビューした!

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英国ロイヤル・オペラ・ハウスの公演をライブビューイングで観た。デビューである!

 

おととしからMETオペラにライブビューイングという新しい鑑賞スタイルで親しんできて、楽しい時間を過ごしてきた。(そのあたりの記事はこちらに)

ほどなくして、バレエもライブビューイングで観られることを知ったのだけれど、なかなか実際に観に行くまでに至らず、そのうち機会が訪れるだろうと待っていた。

 

昨日その機会がわっと訪れ、想像以上にすばらしい時間だったので、記憶に留めておきたくて、ここに置く。

 

 

わたしとバレエ

ロイヤル・バレエがスクリーンで観られることを知ってから、すぐに足が向かわなかったのは、「よく知らない」「どう楽しめばいいかわからない(わからなそう)」という漠然とした感触によるものだった。

 

でもよく考えてみると、10年ぐらい前からところどころにバレエ関係の石は置かれていた。NHKで「スーパーバレエレッスン ロイヤル・バレエの精華 吉田都」をなぜかよく観ていたり、ふと思いたって東京バレエ団の公演を観に行ったり、バレエ・リュスのコスチューム展に行ったり、映画「バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び」を友人たちと観る会をひらいたり、桜沢エリカの漫画「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ」を持っていたり。

その合間にコンレンポラリー・ダンスやオペラを鑑賞する、クラシック音楽に親しむ、なども挟まっていた。そういう一つひとつ、今思えばすべて飛び石だったのだろう。

最後のひと押しは、METライブビューイングをよく観に行く仲間でバレエの経験者の、「とにかく『くるみ割り人形』は観て!!」というひと言で、予習として見所や演者のことを教えてもらって行ってきた。

ついでにその日別の用事で会う友人にも声をかけたらなんだか二つ返事で、気づけば界隈の友人たち5人が映画館に集結していた。

 

 

youtu.be

 

 

感想としては一夜明けた今もまだ「よかった!!」しか出てこない。

 

はじめから終わりまで胸がいっぱいで、比喩でなく大げさでもなく、ほんとうに涙が止まらなくて、目を腫らしたまま一日を過ごした。

美しい音楽、美しいダンサー、美しい衣装、美しい舞台美術、、ぜんぶがただただ美しくて、愛にあふれていて、舞台の上とスクリーンの中で起こる一つひとつに魅了された。どうしてハードルが高いなんて思ってしまっていたんだろう!というぐらい、近く感じた。

 

フィナーレが近づくにつれて、「夢の時間よ、終わらないで〜!」と祈りながら観ていた。そんな体験もなかなかない。

 

少し前から、わたしは気が滅入ること、怒りがわくこと、絶望を感じることが積み重なって、へとへとに疲れていた。ほとんど人間でいることが嫌になっていたそんな最中に、ロイヤルのくるみ割り人形を観て、「ああ、そうだった、人間はこんなに美しいものをつくり出すこともするんだった。そうして、この美しいものでほかの人間を幸せにもするんだった」と思い出した。

 

踊りに目を凝らすと、積み重ねることと、報われることについて考えざるを得ない。あんなにも自分の身体を思い通りの軌道で、思い通りの位置に決めていくために、いったいどれだけのハードな積み重ねやギリギリのせめぎ合いがあるのだろうかと思ってしまう。

それでも意識を引いてみれば舞台の上にあるのは、美と愛しかない。

それに身を捧げてくれている人がいる。

 

あふれる涙をぬぐいながら思った。

芸術に救われるってこういうことだ。

わたしはいつも人の生み出す表現に救われて生きている。

ありがたい。

 

 

ライブビューイングという鑑賞スタイル

METでもそうだし、やはりライブビューイングという鑑賞のスタイルや普及の手段がわたしにとっては興味深くて仕方がない。

今回は、解説とインタビューを二回、休憩を一回挟みながら、一幕が約60分で、トータル2時間40分。ほどよい!!

ロイヤル・オペラ・ハウスの解説は劇場も飛び出して、DVDの特典映像みたいな感じだった。冒頭に解説があるのでよく知らない人でもあらすじや見所がつかめるようになっているのが素晴らしい。かといって、おそらくプロ級の鑑賞者が観ても「そんなこと知ってるわい」とはならない、親しみやすさと高いレベルの本物さが両立している。これは観客への態度の問題なんだろうか。

あるダンサーのスペシャルショートフィルムが挿入されていたり、トウシューズについての特集コーナーがあったり、クララ&ハンス・ピーター役の2人のダンサーの母校訪問のドキュメンタリーなど、鑑賞にあたっての「くるみ割り人形」という作品への知識だけではなく、ロイヤル・オペラ・ハウスというバレエ団や、ダンサーの個性や技術など、バレエという世界へ関心を持つための様々な橋をかけてくれていた。

 

ダンサーや演奏者やディレクターやナビゲーターや......とにかく様々な人がお話してくれるのだが、「クリスマスといえばくるみ割りよね!」とか「やっぱりくるみ割りの音楽は・踊りはここが素敵なの!!」など、作品への愛、この作品にかかわれることの歓びを感情いっぱいに惜しみなく表現してくれて、それが何よりもわたしを喜ばせる。

 

「有名な作品だからわざわざ言うまでもない」、「本番の芸を観てくれたらわかるから」、「わたしがあれこれ言うより観る人が個々に自由に観て感じてくれたらいいから」...というトーク(?)をよく耳にするように思う。作り手の側に立つとわたしも言っているときがあるので、言いたい気持ちもわからなくもないのだけれど。

でも、結局は人に関心を持たせる(その世界に橋をかける)のは、個々の演じ手や作り手のオープンでチャーミングでエモーショナルな姿ではないのかな。

わたしの仕事の核になる部分なので、このことはあらためて書きたい。

 

 

感想を話す場

友人たちと観に行って、席はバラバラに取り、終わってから当たり前のようにごはん食べながら、わいわい感想を話しあうのがやっぱり楽しかった。バレエの経験者や鑑賞歴が長い人もいても、べつに自慢話のようにならない。一人ひとりの知っていることや体験したことや感じたことをシェアしあう、持ち寄りやおすそ分けをしている場だから、より豊かになるばかり。こういう関係はほんとうに気持ちがいい。

 

そして毎回書いているけど、もし一人で観て一人で帰って誰ともこの経験を共有しないでいたら、わたしはこの作品からここまでたくさんの喜びや愛を受け取れていなかっただろうし、こんなに自分の人生に関係のある、深い意味をもった大事な体験にできていなかったと思う。感想を気軽に話せて愛を語れる仲間がいるからなのよね。そういう人たちに出会えてとてもうれしい。

そういう仲間にどうやって出会うのかというと、結局は、「好きなことを好きと言い、見えるようにしていく」に尽きる。わたしがどんなものを好きで、関心を持っていて、どんな感性を持っていて、どんなふうに受け取る人間なのかは、表現しない限り他の人からはわからないのよね。

その表現の仕方は、「書く」や「場をつくる」がキーになる。

 


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表現形式の違いを楽しむ

 

オペラが歌だけではないように、バレエもまた踊りだけではなく、細かな演技や美術も楽しめた。衣装も素晴らしかった。

この世にはいろんな表現形式がある。「バレエのこの要素を強めていくとマイムになる」とか、「オペラのこの要素のほうへ深めるとミュージカルになる」とか、それぞれの表現形式でしか現れてこないもの描けないものはありつつ、各々はシームレスに接続している。なぜこの表現形式で演る必要があるのか、感じ取る違いがわかってきて、橋をかけてくれる人に出会えると、何を観ても楽しめる、受け取れるものがある。

さらに、「プレイヤー」の個性が見えてくると、続けて観ることが俄然楽しくなってくる。別の作品では別の面を見せたり、前作から成長していたり。そしてまたそれを仲間とおしゃべりしたり。

 

ちょうど今、METで「椿姫」を上演していて、4月にロイヤル・オペラでも「椿姫」の上演がある。生で観るのに比べたら相当気軽な値段で見比べられるのも、ライブビューイングのいいところだ。

次のロイヤル・バレエは「スペードの女王」もチャイコフスキーなので観たいし、友人のおすすめ「ロミオとジュリエット」は夏のお楽しみでこれは絶対に観る。バレエ初心者にはまず「くるみ割り人形」そして「ロミジュリ」がいいから観て!!!とのお達しであった。

その間にMETで「マーニー」を歌ったイザベル・レナードの「カルメル会修道女の対話」もある。

www.shochiku.co.jp

 

 

 

この先も飛び石がぽんぽん置いてある。

 

渡っていくのが楽しみだ。 

 

 

一緒に行った友人のブログを読んでまた幸せな気持ちになった。増えるいっぽう。

micandescitrus.hatenablog.com

 

 

 

 

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