本を紹介するってやっぱり楽しいなと思って、「絵物語 古事記」に続いてご紹介です。
『数字はわたしのことば ぜったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』
(ほるぷ出版)
原題は、"NOTHING STOPPED SOPHIE"。
原題のシンプルな英語3単語に比べると、やや説明的に見える邦題だけれど、内容はわかりやすいし、メッセージはほんとこの二行に尽きる感じ。
絵本を売る、まずは手にとってもらうって、難しいことなのかもなぁ、など、出版社や本屋さんの気持ちを考えてみたりします。
時代はフランス革命。
世界史や美術、文学、文化などでいつもふれてきたあの「フランス革命」と数学っていうのが、自分の頭の中で急には結びつかない...。
でもそうよね、いつの時代も数学って学問としてあったのよねぇ。
数学で歴史を串刺してみると、おもしろいかも...。
社会的に恵まれた階層の家に生まれた人でさえも、女性だというだけで、学問、教育の機会が与えられなかった時代に、独学で数学を学び、研究し、数学界にコンタクトし、何年もあきらめず...。
ひとつの方程式を解くのに5年も費やせるところが、家柄的に恵まれていたからできた、とはいえ、情熱がすごい。
好きのパワーすごい!
挿絵がとにかく美しいです。
雰囲気的にはどことなく、モーリス・ブテ・ド・モンヴェルの「ジャンヌ・ダルク」みたい。
...と思ったら、同じ出版社だったですよ。ほるぷ出版。
すごー!
偶然かな?
わたし自身は言語としての数学は苦手で、ほとんど理解できないまま大学入試センター試験を最後にお別れした形になっているけれども、
.これまた小川洋子さんと、数学者の藤原正彦さんの対談、「世にも美しい数学入門」(ちくまプリマー大好き)や
・インドの数学者ラマヌジャンの生涯を描いた映画「奇蹟がくれた数式」のような、
文芸的に数学の美しさにふれるのは好きなので、この絵本もとても楽しく読みました。
読み聞かせも楽しいと思います。
すごくいいな〜!と思ったのが、物語の舞台外の、絵本としては最後のページらへんにソフィーの人生についての補足、作者と挿絵画家の文章が載っているところです。
作者は、なぜこの人物を取り上げたのか、どんなところを大切に書いたのか、これを書くことを通してどんな体験をしたのか、かつて実在した人物をどう取材し、どう描くかのところを見せてくれています。
挿絵画家は、依頼を受けての第一印象と、それが次第に変わっていった心境、どんな意図で何をどんなふうに表現したかの工夫を、具体的な箇所を示して教えてくれています。制作の過程を疑似体験しているかのようです。
またそれを訳者の方が、実に自然で読みやすい日本語の文章にしてくれています。
最初に書いたタイトルのこともそうだし、なんだかとても「橋を架けてくれている」という感じがしてうれしくなる、出会えてよかったと思える一冊です。