ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

祝福に満ちる "Laughter in the Dark" by 宇多田ヒカル

宇多田ヒカルのライブ"Laughter in the Dark"のDVD(正確にはBlu-ray)を友だちと観た。

www.utadahikaru.jp

 

 

追加生産分を予約して、発売日から1ヵ月以上遅れてようやく手元に届いて、一刻も早く観たかった。

でも、この素晴らしいパフォーマンスの初見を自宅の小さいTVモニターで済ませるは忍びない気がした。

それに一人でじわじわと感動するよりも、みんなで思いっきり分かちあったほうがいいんじゃないかと思った。

 

そうしてみて、やはり、大変によかった。

 

デビューからちょうど20年目に行われたライブ。

冒頭からもう涙が止まらない。

彼女を中心としてたくさんの才能と思いが一つになった場。

時間と空間を超える唯一無二の存在感。

独特の言葉の感覚。

一曲一曲が一本の芝居のようなパフォーマンス。

その生き方。人間としての深い魅力。

 

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わたしは"Stay Gold"(2007年)あたりから突然自覚的に宇多田ヒカルの歌が大好きになった。でも、好きだということをしばらく人に言えなかった。

 

誰も知らないような音楽を探し出してきて聴くのが、わたしが引きずっていた思春期的プライドだった。メインストリーム(売れているもの、流行っているもの)に飲み込まれてたまるかと勝手に思っていて、好きとか言ったら負けるような気がしていた。

 

ごく一部の人とだけ共有するだけで、基本は自分の好きなものを好きなように愛でる世界に閉じるのが、当時のわたしの安全に生きるやり方だったのだと思う。

 

そういうわたしだったのだが、"Stay Gold"のあとに、"光"(2002)あたりまで遡って聴き込んでいた頃、人に勧められて映画「ゴッドファーザー」を一気見した。

「みんなが好きって言っているものに興味なんか持てないに決まっている」などと思っていたのだが、「あれ...めっちゃおもろいやん!」と気づき、その後も偏見なくいろいろ観たり聴いたりする中で、「どうやら売れてるかどうかという軸ではなく、好きかそうでないかでいいんちゃう?」という感じになっていった。

 

その頃から人と感想を語り合うということも楽しくなっていった。

 

多くの人が知っているものが共通項になると、それだけいろんな人と話せる。
それがうれしいと思うようになった。
様々な角度から、様々な関心から、話を掘り下げることができる。

 

一方で、「どこでそんなの知るの?」「その切り口はなかった」というものを見つけたり思い出すのも相変わらず楽しい。

そこに注目してる人とマニアックな話して、一気に仲良くなれる感じも楽しい。

 

どちらも楽しい。どちらも豊かな広がりを持つ、この世界に在るもの。

思春期を抜けて、よかったよかった。宇多田ヒカルのおかげだ。

 

 

 

しかし宇多田ヒカルは、そういうわたしのどうでもいい拗らせの遥か彼方にいて、圧倒的に別格だった、ということに『Fantôme』が出てようやく気づいた(遅い)。

 

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こうして節目のライブに立会い(Blu-ray越しなのに立ち会ってる感がすごい)、

どれだけ彼女のつくる音楽や表現に救われてきたかと思う。

同時代を生きていることに感謝したい。

 

そして、

そこにいなかった人にも共有できるよう、撮りおさめてくれたことに感謝。

一緒に盛り上がってくれた友だちに感謝。

 

 

今回のアンコール最後の曲。これも大好き。

www.youtube.com

 

 


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