ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

自己破壊を煽る〜映画『太陽の塔』の衝撃

8月の終わりにシネマ・チュプキ・タバタで「太陽の塔」を観た。

 

直後の感想も、1ヵ月経った今の感想も、「すごいものを観てしまった...」しかほぼ出てこない。

非常に言語化しづらい、しかし確かにわたしの魂を呼び覚ますものを受け取った。

...というか、受け取ってしまった。

こちらに向かって「ブン投げられたので、キャッチするしかなかった」というか。

 

 

軽い気持ちで観に行ったのだ。

太陽の塔のこと、そういえば知っているようで知らないな」

「息子が太陽の塔が好きだから、一緒に観たらおもしろいかな」というぐらいの。

計画や経緯や1960年代頃からの推移などを、関係者が話すのを観るのかなと思っていた。つまり太陽の塔の解説映画のようなものを想像していた。

 

全然違った...!

 

横っ面を叩かれるような、ここ最近持っていた疑問が一気に氷解して、内からマグマのようなものが沸いてくるような...これはほとんど告発。

 

 

岡本太郎太陽の塔をなんのためにつくったのか?」

 

 

それは、

考えさせるため、忘れさせないため、目を逸らさせないため。

「傷」の手当もままならない中、向き合わずに、その場しのぎで、考えさせないように、忘れさせるようにしてきたものがある。

それが今、次々と明るみに出てくる、噴出してくる、待った無しの状態になっている。

なのに、変わるスピードが信じられないほど遅い。

国全体が歪んだ膜の中にいる。

 

 

なぜ?

なぜ責任を引き受けることができないのか?

覚悟がないのか?なかったことにしたいのか?

この映画を見ると、それはいったいどこからやってきているのか、源に遡って解いてくれている。

ああ、そういうことだったのか…と長年の疑問が解けていくような喜びと興奮もある。絶望と希望。奮起。

つまり、混乱…。

 

 

 

一昨年、当時小学校3年生の息子を連れて、太陽の塔を見に行ったとき、

岡本太郎の気持ちがわかった!まだこの世にないものをみんなが見えるように、しかも間違いなく気づくように大きくつくったんだよ!!

と彼は興奮気味に語っていた。

ほんとうに。ほんとうに、その通りだったのだ。

太陽の塔」の異物感、不気味さ、禍々しさ、不穏さには、ちゃんとその理由があったのだ。

 

 

この国、この国の民、わたし自身の源を思い出させるため。

「源と歴史」という泥に何度もまみれる必要があること。

「自主的な隷従」を脱し、向き合う、考える、語り直す。

誕生から約50年経った今、このように一本の映画になったことで、ようやく具体的な手がかりに、自分の手のひらで触れられたという感じがする。

 

 

関係者・専門家・有識者へのインタビューが少しずつ編集されて周っていくので、まるでシンポジウムのパネルディスカッションを見ているようだ。つまり上映時間が進むにつれて、連なりや深まりが濃くなっていっている。素晴らしい編集技術!

 

 

 

これほどまでに「アートが社会に対して果たす役割」を明確に述べたものはない、とも感じた。

すぐれた表現者であればあるほど、すぐれた作品であればあるほど、大きな歴史の中での原理と本質を取り出し、それを目に見える整形してくれているので、さまざまな視点からの議論を呼ぶことができる。

揺さぶられる、考えざるを得なくさせる、向き合わざるを得なくさせるのだ。

その表現手法が「過激」だからではなく、作品が「大きい」からでもない。

だからあいちトリエンナーレでの「少女像」は撤去されるべきではなかったと思う。

 

 

もう一度この映画を観て、場のしつらえの中で語り合いたい。

自己理解や自己破壊のための対話の機会を与えてくれている映画だ。

 

今、みるべき一本。

 

 

 

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▼1/350スケールフィギュア。

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