ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

お知らせ:ゆるっと話そうシリーズ第5回・映画『教誨師』

ゆるっと話そうシリーズ第5回『教誨師
10月18日(金)12:05〜12:50 @シネマ・チュプキ・タバタ

 

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「ゆるっと話そう」は、映画を観た人同士が感想を交わし合う、45分のアフタートークタイムです。

映画を観終わって、 誰かとむしょうに感想を話したくなっちゃったこと、ありませんか?印象に残ったシーンや登場人物、ストーリー展開から感じたことや考えたこと、思い出したこと。他の人はどんな感想を持ったのかも、聞いてみたい。

はじめて会う人同士でも気楽に話せるよう、ファシリテーターが進行します。

_______________

 


第5回は、『教誨師』をピックアップします。

教誨師」とは......受刑者に対して道徳心の育成、ココロの救済につとめ、彼らが改心できるよう導く人。わが国ではおもに諸宗教の聖職者がボランティアでその任にあたる。(映画の公式HPより)


意味を知って、内容を知って、一瞬怯んでしまいそうな、胸がざわざわする映画かもしれません。

それは「知らないから」かもしれませんし、
生、死、罪、罰といった大きく重いテーマが、とても一人では扱いきれないように思えるからかもしれません。
そんな映画こそ、共に語る場で言葉にしましょう。
己の怖れや揺らぎを柔らかく見つめてみたら、あたたかな愛や希望が見えてきて、きっと持ち帰れるサイズになります。

当日は、死刑廃止派か存置派かの、ご自身の信条を明らかにしなくても大丈夫です。「ゆるっと話そう」は映画の感想を語り、映画から何を受け取ったのか、聴き合うことを大切に進めます。また、冒頭にファシリテーターから日本の死刑制度や現状を短く共有してから対話をはじめますので、「知らないので話す自信がない」という方もどうぞご安心ください。

チュプキの10月のテーマは《万華鏡》。
くるりと回せばまったく違って見える世界。
人によって、立場によって、背景によって違う景色を見せ合う対話の場も、まるで万華鏡のようです。

本作は、昨年急逝した俳優・大杉漣の遺作であり、最初で最後のプロデュース作でもあります。
彼自身の生き様を感じつつ、ぜひ皆さんと語り合いたいと思います。


日 時:2019年10月18日(金)12:05(終映後)〜12:50

参加費:無料

予 約:不要(鑑賞席はチュプキの予約サイトへ

対 象:映画『教誨師』を観た方。別日に観た方もぜひ!観ていなくても内容を知るのがOKな方は参加歓迎!

会 場シネマ・チュプキ・タバタ 2F



過去の「ゆるっと話そう」レポート
第4回「バグダッド・カフェ ニューディレクターズカット版」
第3回「人生フルーツ」
第2回「勝手にふるえてろ」
第1回「沈没家族」

進行:舟之川聖子(鑑賞対話ファシリテーター
twitter: https://twitter.com/seikofunanok
blog: http://hitotobi.hatenadiary.jp
note: https://note.mu/hitotobi

 

_______________

 

 

Information
鑑賞対話ファシリテーターにご相談ください。

企業や団体で教育普及、広報宣伝などを担当されている方向け。
映画、展覧会、書籍、舞台芸術など、鑑賞対話の場づくりのご依頼をお待ちしております。
鑑賞者同士で話す場、専門家と非専門家が知を交換する場。お互いを尊重し、補完する対等性のある場。知の交流と学びの楽しさを集う人一人ひとりが感じる場です。
企画・設計・ファシリテーション・集客サポート・レポートを担当します。
参加者5名から100名程度まで。

お問い合わせはこちらへお願いいたします。

 

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今後のイベント

2019年11月23日(土•祝) 
あのころの《いじめ》と《わたし》に会いに行く読書会

https://coubic.com/uminoie/979560 

2020年1月8日(水) 
爽やかな集中感 競技かるた体験会 
https://coubic.com/uminoie/174356 


 

鑑賞対話の場づくりコーディネーション・ファシリテーション

・<法人><団体>教育普及、広報宣伝などを担当されている方向け。
・映画、展覧会、書籍、舞台芸術など、鑑賞対話の場づくりのご依頼をお待ちしております。
・鑑賞者同士で話す場、専門家と非専門家が知を交換する場。お互いを尊重し、補完する対等性のある場。知の交流と学びの楽しさを集う人一人ひとりが感じる場です。
・企画・設計・ファシリテーション・集客サポート・レポートを担当します。
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お問い合わせはこちら


場づくりコンサルティング・個人セッション
・<個人><グループ>
・Zoom または 東京都内で対面
・30分¥5,400、60分 ¥10,800(税込)
・読書会、勉強会、体験ツアーなどのイベントや講座。
・好きなもの・ことを共有する・考える・創る機会づくり
・企画・設計・進行・宣伝のご相談のります。
・募集文の添削やフィードバック、ふりかえりの壁打ち相手にもどうぞ
お問い合わせはこちら

 

連載
『場づくりを成功させるための5つの鍵』(寺子屋学)https://terakoyagaku.net/group/bazukuri/

募集中!第4回 爽やかな集中感〜競技かるた体験会

\\募集中です//

10月1日(火)14:00〜16:00
第4回 爽やかな集中感〜競技かるた体験会
Umiのいえ(横浜)にて

coubic.com



競技かるた、一度やってみませんか?
未経験の方向けに、徹底的にわかりやすくしています。

・五七五七七の和歌
・歌集としての百人一首
・カードゲームとしての変遷
・遊びと公式ルールの競技の違い
・競技かるたでしか体感できない頭と体の連携

を解説と実戦、ふりかえりで体験していただきます。

知らないことに集中して、全身を使って取り組みますので
参加する前と後で、自分の立っている座標が動きます。
普段、いかに「自分の一部だけ」を使っていたかを実感します。

競技かるたを好きにならなくていいです。
1回だけの参加でいいです。

今まで知っているようで知らなかった世界に足を踏み入れ、エッセンシャルな部分を体感することは、何かしらの変化を人にもたらします。
わたしはそれが起こりやすいような体験講座をデザインし、進行しています。(丁寧に橋をかけています)

ご参加、心よりお待ちしております。

 

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●おまけ

今のわたしの競技かるたへの気持ちはこんな感じです。

note.mu

 

 

 

今後のイベント

 

▼2019年9月28日(土) あのころの《いじめ》と《わたし》に会いに行く読書会 満席
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▼2019年10月1日(火) 爽やかな集中感 競技かるた体験会
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お会いできてうれしいです〜映画『ディリリとパリの時間旅行』

なんとなく映画のブログが続きます。
映画ばかり観てるわけじゃないんだけどね。

こうやって書いたり話しているのは、ごく一部です。
たぶん多くの人がそうであるように、いろいろなことをやって生きています。

 

 

 

さて、公開を楽しみにしていた映画、ディリリ。

原題は、Dilili à Paris

child-film.com

 

 

予告を観て。

まずもう、美しさに感嘆!

骨太なテーマが根底にありそう。

芸術を愛する人たちに、アニメーションの発展を尊ぶ人たちに、優しい世界を願う人たちに、届けられているのではなかろうか。


監督は、「キリクと魔女」のミシェル・オスロ

わたしは友だちにDVDを借りた「夜のとばりの物語」が大好き。


音楽は、「ベティ・ブルー」「イングリッシュ・ペイシェント」「たかが世界の終わり」のガブリエル・ヤレド

どれも観たけれども、ガブリエル・ヤレドと言えば、ミニシアターブームを生きていた人たちにはもう忘れ難いあのビジュアル...「ベティ・ブルー」でしょう!


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...などなどの期待モリモリで、恵比寿ガーデンシネマに行ってきました。

その映画の雰囲気が合うところで観るのもいいですよね。

そしてまたそれが選べちゃうって特殊環境の東京...。

 

 

直後の感想は、よかった!やっぱり劇場で観てよかった!

色の美しさに目が喜ぶ。

ディリリの声やエマの歌声、ガブリエル・ヤレドの音楽に耳が喜ぶ。

思想を美しく繊細に伝える映画だなぁと深く感じられたのは、映画館の環境の良さがあればこそ。

 

さて、ここからは映画の内容に詳しく触れますので、未見の方はご注意を。

 

 

 

メモを元に、回想しながらの感想をバラバラと。

・オープニングから美しいのだけれど、「あ、ディリリだ!」と思ったら、実はそれは公園(リュクサンブール公園かな?)の中にしつらえられた、先住民のカナック族の「コーナー」。見世物になっているところに、ギョッとする...ところからはじまる。それは期間限定の博覧会で、ディリリは業務のようなものとして演じているらしい。ちょっとえげつない。おさるのジョージがかわいいからって、黄色い帽子のおじさんがジャングルから連れてきちゃったのを知ったときの気持ちに近い。

 

・ディリリが出てきて、「肌の色が濃い、明るい」の話になる。

ディリリの友人になるオレルは「君は人と違うから皆を惹きつけるんだ」と。そこでもうこの映画の姿勢を示してくれる。ありがとう。

 

 

・「これはかわいい縄跳びの達人」とディリリを誘拐しようとする「男性支配団」の一味。オレルが間一髪で戻ってくるのだけれど、「あっという間で一言も口を挟めなかった」と言うところがリアル。そう、悪者は一言も口を挟めないようにまくしたてる。そういう人には注意したほうがいい、と映画を通して伝えているようにも感じた。

 

マリー・キュリーが出てきて、ちょっと思い出してしまった。NHK Eテレ「フランケンシュタインの誘惑」(刺激があるので苦手な人は見ないでね)。。でもこの映画のエーヴとイレーヌは幸せそうでよかった。もちろん、真実は一つではない。

 

・有名人が次々に登場。知ってる人が出てくるとうれしい。「洗濯船」ってこんなところだったのかも、と具体的なビジュアルを観ると、想像がまた膨らむ。

 

・町外れの風車小屋に行く途中で出会う男。「パリにもこういう地区がある」とオレル。こういうというのは、貧困や女性や子どもへの暴力が当たり前にあるところ。ここには色がない。

「まずは彼のようにならないことだ」このオレルのセリフがずっと引っかかっていて、帰り道につらつら考えた。この男は、「男性支配団」のメンバーではなかったけれども、近い人生を生きている。「彼のようにならない」というのはつまり、「気づける状況、環境にあれば、美しいほう、愛のあるほうを選択する人生を歩め。勇気を持って。」というメッセージなのかなと思った。オレルの元のセリフだけ聞くと、自己責任っぽくて厳しく聞こえるのだけれど。

他の人はここ、どう解釈しただろうか?

 

・「平気よ」というディリリに、エマの「心の傷は積み重なっていくのよ」と言葉をかけたところが印象的だった。そう、「こんなのなんでもない」と思っていても、実は傷は積み重なっている。

 

・「夫の名前で小説を書いた、もう二度とやらない」。これ、きっとよくあることだったんだろうなぁ。あるいは男性の名前で発表することとか。

 

・「わたしもたくさん描きたいわ」とディリリ。「描け、手を止めるな」とロートレック。わたしも心の中で頷く。

 

・ディリリが映画の中でたくさんの人に会って、会うたびに「お会いできてうれしいです」と言うので、音楽として覚えちゃった!Je suis très heureux de vous connaître. フランス語と一瞬心通った感じ。

 

・「男の支配団」は鼻輪をしている?ディリリには鼻輪が見える?なにか見分ける方法がある、ということを言っているのかもしれない。

 

・「男の支配団」の合言葉が、「美しいパリ、腐ったパリ」。先日観た「リチャード二世」の中でも、一旦イングランドを「上げて落とす」言い回しがあった。何かそういう文化があるのか。

 

・四つ足のくだりはほんとうに辛くて、他のシーンが美しくて愛に満ちていなければとても観られないところだった。見た目も怖いしセリフも怖い。教育する側が女性であるところが怖い。「生き残れないよ」という呪い。

 

・助けられたディリリ。「恥ずかしくて死にそう」に対して、オレルの「そんなふうに思わないで」がまず救い。被害に遭った人に、周りの人が何ができるのかを見せている。

 

・「少女たちとわたしたちの文明を救わないと」...そう、これは文明の危機。大げさでもなんでもなくて。

 

・フランス人とニューカレドニア人との混血のディリリ。「両方でいたいの、ほっといてほしい」...どちらなのかを迫らないでほしいし、どちらからも疎外されるのをやめてほしい。たくさんの人の気持ちの代弁。

 

・「命の危険があろうが、服装は大切よ」というエマ、大好き!作業着のディリリがめちゃくちゃかわいい。

 

・少女たちを救出するところで、一人ひとりに素敵な名前をつけて呼ぶエマ、大好き!!もしかしたらこういうのもSisterhoodなのかもしれない。

 

・家族のところに帰っていく少女たちを寂しそうに見ているディリリに、「一人じゃないわ」と「抱擁」するエマ、オレル、ルブフ。これもまた家族。血縁ではない家族。「まだはじまったばかり」。

 

・思い出されるのは、美しい空の色ばかり。

 

  

 

怖かったけれど、とてもとても美しいものを見て、

ああ、美の感覚を失っちゃいけない、とあらためて思った。

美しさと共に思い出す、あの怖さのことも。

地下で暗躍しているもの、まちの外れで見聞きしたものも。

 

それも、よくよく知っているものだから。

 

 


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ついでの話。

 

昔のパリにタイムトリップして、有名人がいっぱいでてくるみたいな映画、たしかあったなーと思い出したのが、

 

ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ

 

youtu.be

 

これも見逃していた一本。

冒頭の4分近く、ただただパリのまちの美しさを映している時間からはじまる。

うっとりしたところで出てきたのは、かわいいディリリと違って、めんどくさくて非社交的な冴えない男。しかも出てくる人みんな失礼で笑えてくる。

 

でもだんだんと、この映画が伝えてくることって、骨太だなと思えてきた。

いつの時代も人々を魅了するパリを舞台に、人生が変わっていく。決意していく。

美しく、楽しく、美味しく。

「今の時代を、自分らしく、好きな人と一緒にいて、納得して生きよう」

無理やり共通項を見出そうとすれば、そういうメッセージかも。

 

ヘミングウェイの言葉にも、思いがけず励まされてしまった!

未見の方はこちらもぜひ。

 

 

町山智浩さんも絶賛してますねぇ。

www.youtube.com

 

 

 

 

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《レポート》9/23 秋分のコラージュの会、ひらきました

秋分のコラージュの会、ひらきました。

 

今回のご案内ページ。

collageshubun2019.peatix.com

 

コラージュの会についてはこちら。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

今回は、国分寺カフェといろいろ びよりさんにて。

「ぜひわたしのまちでひらいてほしい!」と招いてくださったれいこさんのご尽力とご縁で、こちらでの開催となりました。

 

マンションの1階にあるコミュニティカフェ

日替わり店主さんがキッチンをシェアして小さな商いをしていたり、地域の人が一歩踏み出して、ひらいて、つながりをつくることができるイベントスペースやクラフトショップもあります。LIFE、日々の生活と人生の両方を扱う、食べることを中心にした集いの場。

明るいエネルギーの循環するこの場所は、願いを描くコラージュにぴったりで、楽しみにしていました。

 

早めに来て日替わり店主さんのランチをいただきました。

この日は「うくらいま食堂」さんのカレーランチでした。美味しいです。幸せ。

 

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さて、この日はお彼岸。

世界の陰陽と、自分の陰陽を感じて見る日。

自分の中にある融合や調和を心底希求する部分と、排他的で選民的に振り切れるのを欲望する部分とが、まだらにあることを意識しています、というお話をしました。

 

まずは今の自分を俯瞰するワーク。

1人で書き出し作業→ペアで話す聴くのワーク→全体共有で、たっぷり60分。

この時間が毎回好きで、皆さんもここで笑顔がたくさん出る。

(ファシリのご依頼をいただければ、これだけを切り出してご提供も可能です^^)

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そして製作の時間。今回はじめての方が2人おられましたが、迷うことなく手が動いていました。素材選びやレイアウトのときに、頭で考えない、直感で動いていく感じを楽しんでいただけたようです。

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紙をびりびり破いたり、はさみでちょきちょきやったり、のりで貼ったり、、

普段はやらないようなことに集中する(というか没頭する)のは気持ちいい。

 

お腹も空いてくるから、合間にはこんな美味しいものもいただいたりして。

こちらも「うくらいま食堂」さんのおやつ。

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出来上がったら発表会です。自分のためだけに作った作品を、ちょこっと見せ合いっこ。自分で見出し、鑑賞して見出してもらって、その交換によってまた自分の無意識の現れの手がかりにする。

一人で作っただけではどうしても足りなくて、一緒に作って観てもらって感想をもらうということで、ようやく自分の好きや願いを確認できる。不思議なことだよなぁと毎回思います。

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言葉でうまく説明できるものでもないのだけど、見てると嬉しくなります。

心のよりどころみたいなものをつくれた感じでした。

というご感想をいただきました。

 

何度も来てくださってる方は、デスクの前に貼っていつも眺めているそう。

わたしも仕事机の前に貼って、ふと目をあげると必ず視界に入るようにしています。

作ったときの気持ちを思い出すし、何より、やっぱり見ていて嬉しくなります。

 

ご関心をお寄せくださった方、ご参加くださった方、ありがとうございました。

次回は冬至12/22(土)にひらきます。

会場はまたご縁のある方と場所にお招きいただけたらと思っています。

募集はこちらのPeatixで出していますので、気になる方はフォローしていただけるとうれしいです。

 

 

今後のイベント

▼2019年9月23日(月•祝) 秋分のコラージュの会 満席
https://collageshubun2019.peatix.com/ (国分寺

▼2019年9月28日(土) あのころの《いじめ》と《わたし》に会いに行く読書会 満席
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まさかまさかの、映画『みんなのアムステルダム国立美術館へ』

先日書いた『マダム・イン・ニューヨーク』に続き、公開時に見逃していた映画シリーズ。

 

『みんなのアムステルダム国立美術館へ』 

https://amsmuseum.jp/

 

タイトルの最後につく「へ」ってなんだろう?

原題は The New Rijksmuseum だし。

なくても成立した気もするんだけど。

自分でもラジオ番組をつくったりすると、こういうタイトルが気になってくるのがおもしろい。

 

さて、この下は、

内容に踏み込んだことばかり書いてますので、未見の方で影響されたくない方は鑑賞後に読んでください。

 

 

いやはやびっくり。

まったく前知識なく観てみたら思ってたのと違いました。

みんなで協力して、画期的な美術館を作っていこう!
ワークショップなんかも取り入れて、市民の声で、みんなの寄付でできる美術館だよ!

とかなんとか、そういうものを観るのかなと思ったら、、

 

とりあえず問題山積み!!

 

思いがけない(ほんまか?)サイクリスト協会からの反対に、
あれ?あれあれ?ってなり、

 


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「一生に一度のチャンス」「仁王像を置きたい♡」
と目をキラキラさせるアジア館の館長...。

「もう限界だ」といきなり辞任する館長...。

国立美術館は俺の子供だ」という管理人...。

「コンセプトないじゃん」と呆れる内装の施工会社の担当者...。

会議中に寝る人...。


あれあれ、もしかしてこの映画笑っていいんだ!!とわかってからは、もういちいち笑える。

部分的には、「いや、そうだよね、わかる」「あるある」ていうことを言っているんだけど、この遅々として進まない計画を背負った中で出てくるひと言ひと言に、「ウケる」って言いたくなっちゃう。

こうやって、延期、延期を繰り返し、55日前なのに、全然展示品が設置されてないとか。

観るまで想像してた「画期的な美術館」みたいな感じも特になく。

市民が出てきたのは自転車道路塞ぐなっていうところだけ。

 

わたしの意気込みがありすぎて、空振ったから 可笑しかったというのもあるか。

 

ドキュメンタリーだからこその可笑しさ。作った箇所もあるだろうけど。

なんだかんだ2004年に閉館して、改修終了・再公開まで10年!

ということはこれを撮影していた人たちも10年付き合ってたのかな?

どうやって撮ってたんだろう、メイキングまで観たくなる。

 

思ってたんと違って、よかったです。

オランダって、勝手に合理的でテキパキしてる国なイメージがあったけど、まぁ人間変わらないところはあるよね。

 

それと、アジア館の館長さんが「自然崇拝は日本人の魂の奥深くに息づいている」と言ってくれたり、落成式には僧侶を招いた法要があったりして、敬意を感じた。ありがとう!(わたしが個人的に受け取って、個人的にうれしい気持ち)

 

偶然わたしの世界と交差してすごいなと思ったのが、この法要のシーンに大津絵の「鬼の念仏」が出てくるのところ。

お坊さんが通る背景の陳列ケースの中にあった。

どうして気づいたかというと、ちょうどこの映画を見た日の朝に、「大津絵を描いてみたシリーズ第二弾」で「鬼の念仏」を描いていたのです。大津絵好きのわたしとしては、びっくり!!


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つまり、アムステルダム国立美術館には「鬼の念仏」が所蔵されてるってことですよね。これはうれしい。行ってみたい。

 

美術館の公式ホームページ。日本語ページがありました。

www.rijksmuseum.nl

 

 

 

2015年の記事。この映画とは関係ないところで気になった記事が、たまたまアムステルダム国立美術館の話だった。今あらためて読んでみると、映画に出てきた人たちの顔が浮かんできて、にやにやしてしまう。

m.newspicks.com

 

 

 

 

今後のイベント

 

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自己破壊を煽る〜映画『太陽の塔』の衝撃

8月の終わりにシネマ・チュプキ・タバタで「太陽の塔」を観た。

 

直後の感想も、1ヵ月経った今の感想も、「すごいものを観てしまった...」しかほぼ出てこない。

非常に言語化しづらい、しかし確かにわたしの魂を呼び覚ますものを受け取った。

...というか、受け取ってしまった。

こちらに向かって「ブン投げられたので、キャッチするしかなかった」というか。

 

 

軽い気持ちで観に行ったのだ。

太陽の塔のこと、そういえば知っているようで知らないな」

「息子が太陽の塔が好きだから、一緒に観たらおもしろいかな」というぐらいの。

計画や経緯や1960年代頃からの推移などを、関係者が話すのを観るのかなと思っていた。つまり太陽の塔の解説映画のようなものを想像していた。

 

全然違った...!

 

横っ面を叩かれるような、ここ最近持っていた疑問が一気に氷解して、内からマグマのようなものが沸いてくるような...これはほとんど告発。

 

 

岡本太郎太陽の塔をなんのためにつくったのか?」

 

 

それは、

考えさせるため、忘れさせないため、目を逸らさせないため。

「傷」の手当もままならない中、向き合わずに、その場しのぎで、考えさせないように、忘れさせるようにしてきたものがある。

それが今、次々と明るみに出てくる、噴出してくる、待った無しの状態になっている。

なのに、変わるスピードが信じられないほど遅い。

国全体が歪んだ膜の中にいる。

 

 

なぜ?

なぜ責任を引き受けることができないのか?

覚悟がないのか?なかったことにしたいのか?

この映画を見ると、それはいったいどこからやってきているのか、源に遡って解いてくれている。

ああ、そういうことだったのか…と長年の疑問が解けていくような喜びと興奮もある。絶望と希望。奮起。

つまり、混乱…。

 

 

 

一昨年、当時小学校3年生の息子を連れて、太陽の塔を見に行ったとき、

岡本太郎の気持ちがわかった!まだこの世にないものをみんなが見えるように、しかも間違いなく気づくように大きくつくったんだよ!!

と彼は興奮気味に語っていた。

ほんとうに。ほんとうに、その通りだったのだ。

太陽の塔」の異物感、不気味さ、禍々しさ、不穏さには、ちゃんとその理由があったのだ。

 

 

この国、この国の民、わたし自身の源を思い出させるため。

「源と歴史」という泥に何度もまみれる必要があること。

「自主的な隷従」を脱し、向き合う、考える、語り直す。

誕生から約50年経った今、このように一本の映画になったことで、ようやく具体的な手がかりに、自分の手のひらで触れられたという感じがする。

 

 

関係者・専門家・有識者へのインタビューが少しずつ編集されて周っていくので、まるでシンポジウムのパネルディスカッションを見ているようだ。つまり上映時間が進むにつれて、連なりや深まりが濃くなっていっている。素晴らしい編集技術!

 

 

 

これほどまでに「アートが社会に対して果たす役割」を明確に述べたものはない、とも感じた。

すぐれた表現者であればあるほど、すぐれた作品であればあるほど、大きな歴史の中での原理と本質を取り出し、それを目に見える整形してくれているので、さまざまな視点からの議論を呼ぶことができる。

揺さぶられる、考えざるを得なくさせる、向き合わざるを得なくさせるのだ。

その表現手法が「過激」だからではなく、作品が「大きい」からでもない。

だからあいちトリエンナーレでの「少女像」は撤去されるべきではなかったと思う。

 

 

もう一度この映画を観て、場のしつらえの中で語り合いたい。

自己理解や自己破壊のための対話の機会を与えてくれている映画だ。

 

今、みるべき一本。

 

 

 

taiyo-no-to-movie.jp

  

youtu.be

 


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▼1/350スケールフィギュア。

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今後のイベント

 

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・企画・設計・ファシリテーション・集客サポート・レポートを担当します。
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自分を愛する生命力〜映画『マダム・イン・ニューヨーク』

公開からもう5年も経ったとは!
 
ずっと観たいと思ってて、ようやくDVDで観ました。めっちゃよかった。
 
尊重、自立、対等性、友情。
自分を愛すること。
挑戦によって自分を知ること、世界をひらくこと。
あたらしい言葉にふれる怖れと喜び。
言葉に心をのせること。
 
生命力にあふれていて、観終わったときにはなんだか元気になっていて、わたしもわたしの世界を大切に、ふーーっと息を深く吐いて、一歩踏み出そう......と思える映画。
 
外国人のための〇〇語教室の感じが、個人的にすっごく懐かしくてたまらない。
 
主人公シャシもサリーも目が喜ぶ美しさ。
特典映像の「現地特報」のシャシもめっちゃかわいい♡ 遊び心ってすてき。
 
惜しむらくは日本版予告編。
わかりやすいけど、それこそなんだか"Judgemental"で、ちょっとモヤる...。
(※追記: 映画の中での英語教室のクラスメイトの描き方はステレオタイプだと感じる、でも社会背景は考慮されてはいるかと。)
 
映画の実物は、微妙な感情や関係を丁寧に描いていて、よかった。
美しさ、かわいさ、芯の強さ、お茶目さ、優しさ、凛々しさ...。
 
もしかして予告で、うーん、ちょっとなーって思っていた方がいたら、ぜひ観てみて!
 
 

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映画館を愛する人たちと、『世界一と言われた映画館』を観る

シネマ・チュプキ・タバタに「世界一と言われた映画館」を観に行きました。

sekaiichi-eigakan.com

 

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実はこの映画にはそれほど興味はなくて(ごめんなさい!)

館長の平塚さんの著書「夢のユニバーサルシアター」の出版記念トークイベントがあって、そちらに参加しようと思って行ったんです。

 

...が、いい意味で裏切られました。映画、とてもよかった!!

 

 

山形県酒田市にあった伝説の映画館、グリーンハウス。

「西の堺、東の酒田」と呼ばれたほど賑わっていた、港町の文化の中心的存在だったそう。

わたしが生まれたのと同じ年(昭和51年)に大火事で消失し、火の元だった責任をとって、再オープンすることはなかったとのこと。

40年以上になくなってしまった映画館の記憶が、人と人をつないで、素晴らしいドキュメンタリー映画に仕上がっています。

 

モノクロフィルムで撮影された当時の館内の様子にグッとくる。
人々が生き生きと映画や音楽やダンスを楽しんでいた時代。

ゆかりのある人たち一人ひとりの丁寧なインタビューは、インタビュアーとの関係が良いのだろうなぁと自然に思える、聞き入ってしまうインタビュー。

グリーンハウスというテーマを通してその人の人生、存在が見えてくるし、
その人の語りを通してグリーンハウスを味わえます。

 

とはいえ、グリーンハウスが火元だったわけだから、まちが立ち直る過程には、辛い部分もきっとたくさんあっただろうなとも想像します。

 

グリーンハウスを「世界一」と呼んだのは淀川長治さん。久しぶりにお名前を拝見しました。

大杉漣さんのナレーションは、昨年亡くなったばかりでまだ実感がなく、もういらっしゃらないんだと思えて切ない。

そういえば、この映画、封切りが(この言い方も時代を感じるか...)2019年1月、有楽町スバル座

そして、スバル座は2019年10年で閉館。わぁああ......この流れ...。

 

 

▼暗闇で絵を描くのがうまくなってきた。なんとなく雰囲気伝わりますかね。。

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上映後のトークイベントではシネマ・チュプキ・タバタの平塚さん、和田さんと、藤沢でシネコヤを営む竹中さんが、お互いの映画館づくりの歩みを惜しみなくシェアしてくれて、終始笑顔の時間でした。

映画を愛する人たちが共有するスピリットが感じられて、温かい気持ちになりました。

 

わたしも映画館で3年弱働いていたことがあり、そのうちの半年ぐらいは映写もしていたので、グリーンハウスの映画中も、他人事じゃない感じで聴いていました。

 

今気づいたけれども、シネコヤは「映画と本とパンの店」......「お店」なんですね!!

 

先日配信したラジオで、チュプキさんがどんな映画館なのかの話をしましたが、

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その中でもやはり、「お店みたいな映画館」という話をしました。

席数が少ないからというのもあるけれど、人とのつながり、まちとのつながり感じさせる映画館は、やっぱりお店なんだと思うなぁ。

 

そして「商い」のお話もたくさん聞きました。

映画館をつくりたい人にとっては貴重な話ばかり。

物件との出会い、作品の選定、配給会社との関係、「らしさ」「大切にしているもの」とは、料金システム、
こういうのが聞けるのがライブのいいところ。

 

「開店したら3年は我慢だよ」からの話題は、開業して2年目のわたしには響きまくりでした。2年目、いろんな意味できついですよね、やっぱり.......^^;

 

人がそのまちで日々楽しく暮らしていくことの中に、まちに文化施設があることも、やはり外せないのだと思う。まちの人が一緒に育んでいく。それが、「やらなくちゃ」より「うちもやりたい、やってみたい」っていうふうに、自然にできていくのが幸せなことなんだなぁ...という話だった。

 

竹中さん、平塚さんの「見切り発車」や「ないならつくっちゃえ」感がすてきだった。その豪胆さが、わたしにも少し上陸してくれているといいなぁ。

 

そういえば、最後に客席から感想を伝えられていた方の話に鳥肌が立った。

どうしてこの映画を観に来たのか、どんな人生の物語がこの映画とリンクしてあるのか、の話。

聴かせていただけてありがたかった。

「おっさんずラブは二度観るべし」でも書いたけど、やっぱり映画って人の人生を豊かにするし、映画館があることで日々が楽しくなったり、救われたりする。

こうして交流の場があることも、やっぱりいいし。

 

映画館はまちに必要!社会のインフラ!

 

 

いい時間を、ありがとうございました!

 

 

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劇場版「おっさんずラブ」は二度観るべし

大ヒット上映中の劇場版「おっさんずラブ」

 

友だちのゆきこさんに勧められてドラマを観て、感想を語るラジオを配信して、

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映画も観に行って、またラジオを3本も配信して、 

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自分でもびっくり。 

「ハマっている」という表現とはまた少し違う。

 

おっさんずラブがくれたものと共に、日常を過ごしている、という感じ。

 「ああ、これもおっさんずラブのテーマだなぁ」とか、「でもきっとおっさんずラブの世界観なら」と、日々を幸福なほうに転換していくようなことが起きる。

 

自分で自分を喜ばせることに躊躇がなくなって、うれしい。おっさんずラブ効果。

 

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きのう「マイヒストリーの発表会」で自分の半生を語ってホッとしたあとに、今度は小5の息子と「おっさんずラブ」を観に行ったら、またまたたくさん受け取りました。

自分の人生の棚卸しするのも語るのもエネルギーの要ることだけれど、それを聴いてくれた人たちが皆、佳きものとして祝福してくれた。

その後だったから、おっさんずラブが届けてくれる「まぁ過去にいろいろあったけど、幸せになっていいんだよ!幸せになろうね!」というメッセージが、どーんと響いてくるのでした。

 

ドラマ版もみてないし、あらすじも全然知らない息子も、冒頭からよく笑ったり泣いたり、内容もよく理解し、楽しんでくれてよかったです。
そういえば一昨年の春に二人で香港に行ったことなども思い出して、うれしかった。

 

ゆきこさんとラジオでしゃべったから、ついつい小道具や持ち道具などに目が行ってしまうし、音楽や音にも注意深くなっている。俳優さんの細かい表情も見えてくる。息子も、こちらからは何も言っていないのに、「このシーンはどうやって撮影しているのか」など聞いてくる。楽しい。

ゆきこさんにもらったシナリオブックでセリフを確認して、二人で言ってみたりもして。

 

練りに練られた脚本、心に残るセリフ。


おっさんずラブが届けてくれるものには、嘘がない。
人生でこういうことって起きるよね、ということに寄り添ってくれる。
そして、勇気を出して幸せを願おうよ、と背中を押してくれる。

 

「世の中悪い人はいない」ということでもない。

ただ、映画にできることを丁寧にやっている。

だから信じられる。世界は自分が望むようにできていくと思える。

こんなにもわかりやすいのに、こんなにもこの社会を解くためのメタファーの宝庫になっているのが、とにかくすごい。

 

1992年は「もう恋なんてしないなんて言わないよぜったい」だったのが、2019年は......。この変化は大きい。

 

そう、変化しているから、次に行こうぜ!!というメッセージ。

 

それをまた劇場で観ている、他の人たちと共有しているという確かな感覚。

笑ったり泣いたり、水を打ったように息をつめて見守ったり...。

今日時点で40回以上劇場に足を運んでいるという、ゆきこさんは、これを感じに行っていると断言していたけれど、わかるなぁ。

それって、かつて映画が人々の貴重な娯楽だった時代、「映画が幸せだった時代」には普通にあったもの。それが今の時代に、形を変えて再びきらめいている。

 

映画館で働いていたことのあるわたしとしては...もう感無量...。

 

 

1回目でよかったー!と思ったら、ラジオを聴いて、ぜひ2回目も観てみてください。

たぶんこれ、2回観ることになる映画なのかも。

今思えば、ラジオでは映画の話ができていなかったんですよね。

最初の衝撃が大きすぎて、衝撃の中身ばっかり話してしまったなぁ...。

3回もしゃべって、やっと落ち着いて2回目、映画として観られたかもしれない。

 

という個人的感触からなんですが。

だまされてみてください。

 

 

帰り道は清々しく。
息子と秋の虫の声を楽しみながら帰りました。


ああ、もう一回観たいなぁ。(それをハマるというのか?)

 

 

オフィシャルBOOKとシナリオブックもぜひ。

どちらも劇場版仕様です。 

  
 
 
 

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《レポート》9/6 『バグダッド・カフェ』でゆるっと話そう@シネマ・チュプキ・タバタ

シネマ・チュプキ・タバタで月に一度ひらいている「ゆるっと話そう」シリーズ第3回のレポートです。

 

「ゆるっと話そう」は、映画が終わってからの45分間の小さな場。

映画観て帰る前に、
観た人同士、場内でちょこっと話してこ!

という気軽な企画です。

 

第4回は『バグダッド・カフェ <ニュー・ディレクターズ・カット版>』

こんな感じでご案内を出しました。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

さすが名作!当日は、ほぼ満席近いお客さんの入りでした。

この中でどのぐらいの方が「ゆるっと」に残ってくださるかなぁとドキドキしていたら、なんと半分以上の方が参加してくださいました。ありがたい!

観終わったあとの気分で決めていただきたいのもあって、この時間は予約制にはしていないので、当日その時間になってみて、はじめて人数がわかるという感じなのです。

 

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今回は人数が多めだったので、ひとつの輪にはならず、その席に座ったままで、「この場に来たきっかけ」を一人ひと言ずつ発声していただきました。

そのあと、2人1組で感想を交わし合い、最後にその中で出た話をシェアしてもらいながら、「全体で話す」流れにしました。

 

f:id:hitotobi:20190914115010j:plain

 

わたしのように「バグダッド・カフェが青春の一本である」という人がほとんどだったのだけれど、その中身は、

・わたしが今の仕事をするに至ったきっかけの映画

という方から、

・友人に「この青がいいのよ〜」と勧められて観てみたけれど、何回見ても途中で寝てしまった

・勧められたけれど、余計見たくなくなって、今になってようやく観られた。あのとき観ていたらよかった。

・当時付き合っていた男性が好きだった映画で、若かった自分を思い出す。

・途中で全盲になったので、目で観ていた頃と今とで印象がどう変わっているか知りたい。

...など、ほんとうに様々な背景できょうもお越しいただきました。

 

当時観ていなかった方も、一度はどこかでタイトルを聞いていたり、勧められて検討したりしているという時点で、もう「出会っていた」んだろうなぁと思います。

 

 

この映画は製作が1987年。まだベルリンの壁があった頃。

日本公開が1989年。完全版の公開が1994年。

公開当初から数えれば、30年も経っているんですね。
映画を観ていて、全然古さを感じないところがすごいのですが。

それはもう、一人ひとりの人生にさぞかしいろんなことが起こったでしょうねぇ...。

 

 

シネマ・チュプキ・タバタは日本で唯一のユニバーサル・シアター。

目の見えない方、耳の聴こえない方、小さいお子さん(とお子さんを育て中の方)、車椅子の方...みんなが一緒に映画を楽しめるようにとつくられた映画館です。

この日は視覚障害のある方が3名も参加してくださって、音声ガイドで映画を観ていての感覚や感想を皆さんとシェアできました。

ゆるっとをはじめて4回目ではじめての体験。
見えるー見えないの交換ってすごく楽しいです。

 

 

「わたしが今の仕事をするに至ったきっかけの映画」とおっしゃっていたチュプキ館長の平塚さん。

ご本人からその思いについてスピーチしていただきました。
このお話がとってもよかった...。聞けてよかったです。

 

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今観てみたら、登場人物それぞれの人生がより奥行きを持って見えてきた。
あの頃は見えていなかったもの、こと、思い...。

出てくる人たちはみんな事情がありそうで、それを説明しすぎないのがまたよくて、想像の余地がたくさんあるところがいい。

「どうしてなんだろう?」と想像するのも楽しい。

 

わたしは平塚さんとペアで感想を話したのですが、「一番気になった人物は誰?」と質問され、「サロモ」と答えました。30年前はまったく注目していなかった人物です。

ピアノへの情熱があって、でも何かの事情で子ども(赤ん坊)がいて、世話をしつつ練習。でも誰も聞いていなくて、むしろうるさがられているだけ...。でもそれがたった一人の一瞬の行動によって全然変わってしまう。

そのシーンの美しさが心に沁みました。共感も、すごくある。(変わったなー自分!)

 

「冒頭のシーンで少し音が映像が荒っぽくかったのが、主人公のジャスミンの登場によって、次第に変化していく様子が印象的だった」という感想にもハッとさせられました。

 

若い頃はもしかしたら、感受性は強かったかもしれないけれども、バランスに偏りがあったかも。今は、瑞々しい感受性と解釈的・論理的思考の両方を持ち、寄ったり、俯瞰したりしながら、自分の人生と紐付けながら、作品全体を楽しむことができている。

しかも耳で映画を見る方から、音から見えた情景を教えてもらえるなんて。また、こちらからもどんな造形なのかを見えているからこそ教えられるなんて。

 

ああ、歳を重ねるっていいものですねぇ。

 

 

▼家にあったパンフレット、懐かしくて持ってきました。

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今観られてよかった
観た人と話せてよかった

と、皆さん、いい顔でおかえりでした。

 

もしかしたらこれからも、その時々によって、違うものが見えてくるのかもしれない。

自分の中でずっと残り続ける映画には、そんな力があるように思います。

Calling Youを聴けば、きっとまたすぐにあの場所に戻れる。

 

これからも、感想を話る、表現の楽しさがつながっていきますように。  

ご参加くださった方、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました!

 

 次回10月の「ゆるっと」は、決まり次第お知らせします。 

 

▼館長の平塚さん、スタッフの宮城さんと

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今回の感想は、友人のくみこさんとポッドキャスト(音声配信)でも話しています。

よろしければこちらも聴いてみてくださいませ!

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アサゴハンヲ タベルコト!〜モモを精読する読書会

日曜の朝6時から、
今、『モモ』を精読する読書会
に参加しました。

 

以前参加したときの感想

http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/06/16/090138

http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/08/25/205728

 

19章、20章を読んで最終回のはずが、19章が思ったよりみっちりとしていて終わらず、最終回は次回に延期されることになりました。ちょっとうれしい。

 

 

19章は、モモが灰色の男たちから追われながら、なんとかマイスター・ホラのいる〈どこにもない家〉にたどり着き、深い眠りから覚めたところからはじまります。
マイスター・ホラから、さらに深い時間の花の秘密を聴き、灰色の男たちから時間の花を取り戻せるのはひとつの方法、ひとりの人間(モモ)しかないことを伝えられ、覚悟を決める場面です。

 

今回もやはり印象に残るのは、カシオペイアの言葉。

サキノコトハ ワカリマス アトノコトハ ワカリマセン!
WEISS NUR VORHER, DENKE NICHT NACH

 

アサゴハンヲ タベルコト!
FRÜHSTÜCKEN!

 

包囲されていて、絶対絶命。
緊張しながら策を練っているときに、このユーモア!ありがとう、カシオペイア!!

 

しかも、「そのとたんに、テーブルの上にはもう食事のしたくがととのいました」「テーブルにはまたこのあいだのように、小さな金のカップと、そのほかいずれも金色にかがやく朝ごはんがならんでいました。湯気の立つチョコレートのポット、はちみつ、バター、パリパリに焼けたパンです。」

 

ああ、このシーン!一生忘れられなそう!

熱いチョコレートと、とけたバターに甘いはちみつをたらした、パリパリに焼けたパン......食べたい。 一気に元気回復するよ...。

思い出すだけでも、満たされる。

読書会はサイコマジックなのかー。

 

今度はマイスター・ホラも一緒に食べてくれて、しかも食欲旺盛だっていうところがよかった。よかった、という感想を交わせてよかった。

読書会に参加している人たちも一緒に読み進めて、一緒に冒険をしている仲間なんだなぁ。

 

 

わたしたちが生きている世界では、どうして理屈では説明できないような悪いことが起きたり、どうしてびっくりするような奇跡としか思えない素敵なことが起きたりするのか、ということを日々思ってばかりなのだけれど、この物語でモモと冒険する中で、さまざまな人たちと対話する中で、次第に解き明かされてくる感じがあります。

メタファーの、宝庫というか、厨子というか。

時間の花が咲いているTempel(お堂)そのもの。

 

 

19章もまた特別にその感じが強いです。

 

たとえば、

「人間というのは、ただの時間だけでできているのではなく、それ以上のものだ」

「時間に毒を入れる」

「人間の心からむしりとられた時間の花」

「花はその繊維組織のひとすじにいたるまで全力をふりしぼって、自分の持ち主の人間のところに帰ろうとする」

......

モモと一緒にわたしたちも「息をのんで聞き入って」います。

 

それらの印象深い箇所について、解釈を与えるために対話しているのではなく。

感じたことをただ手探りで出し合い、問いあい、応えあい、それぞれが必要なものをいただいてゆく感じになる。それが読書会だし、それができるから小さな奇跡が起きる。

 

 

それぞれに取り組んでいることがあり、タフな人生がある。

どんな大きさであれ、重さであれ、

 

おまえがいま考えているよりは、らくにできることもおおいと思うよ

Vieles wird leichter sein, als du jetzt glaubst.

 

 

いくつかの言葉を胸にまた1ヵ月過ごします。

マイスター・ホラから、毎日送られてくる時間の花を受け取りながら。

定時の鐘に、マイスター・ホラからの挨拶を聴きながら。

 

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今後のイベント

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https://collageshubun2019.peatix.com/ (国分寺

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鑑賞対話の場づくりコーディネーション・ファシリテーション

・<法人><団体>教育普及、広報宣伝などを担当されている方向け。
・映画、展覧会、書籍、舞台芸術など、鑑賞対話の場づくりのご依頼をお待ちしております。
・鑑賞者同士で話す場、専門家と非専門家が知を交換する場。お互いを尊重し、補完する対等性のある場。知の交流と学びの楽しさを集う人一人ひとりが感じる場です。
・企画・設計・ファシリテーション・集客サポート・レポートを担当します。
・参加者5名から100名程度まで。

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日本絵画のハブ〜円山応挙から近代京都画壇へ展

東京藝大美術館で開催中の、「円山応挙から近代京都画壇へ」展に行ってきました。

okyokindai2019.exhibit.jp

 

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ここのところ、長いタイトルの書籍が多いらしいけど、展覧会もそうなんだろうか。

略して「応挙展」っていうと、応挙の作品だけのような印象もあって正確ではなく。
しかし応挙の存在があってこその流れだから。
そうすると「応挙から」展ってことになるのか......ぶつぶつ.......。

 

 

藝大美術館には、ここ何年か日本画について「教わって」きています。

特に印象深かったのが、

2015年ボストン美術館×東京藝術大学 ダブル・インパクト 明治ニッポンの美

2017年雪村-奇想の誕生-

この2つの展覧会の中で、あるいは展覧会を通して、「見方」や「おもしろみ」を提示してくれたから、わたしは日本画により強い関心を持つようになって、他の日本画や日本美術の展覧会もおもしろく鑑賞できるようになったと思います。

感謝、感謝です!

 

 

さらに今回の応挙展。

バラバラとしていた歴史の前後関係や、作品と作者や、人間関係がわたしの中でつながったのが最大の収穫。どの作品の作者が誰で、どの作者とどういう関係にあって、それは何時代のどのへんで、ルーツはどこにあって、前後どういう流れの中でそれがあって、同時代に何が起きていて、今の時代のどのようなルーツになっているか、、というようなことです。

 

わたしの中でとりわけ曖昧だった、江戸の日本絵画と、そこから明治、大正の日本絵画への流れもわかり、今まで観てきた展覧会の体験が、一つに繋がった感触もありました。

 

予習に使ったのは公式ホームページと、こちらの2冊。

 

 

芸術新潮のほうは情報量がわたしには多かったので、鑑賞後の復習や発展に使うことにしました。「日本画」の祖としての応挙、についてはこちらのほうが詳しいかも。

おすすめは、マンガでわかる「日本絵画」の見かた: 美術展がもっと愉しくなる! のほう。感情や関係をビジュアルで読み解きたいわたしにはぴったりの本です。マンガといっても、コマ割りされたページで物語っていくコミックのようなものではなく、イラスト解説みたいな感じです。絵柄の好き好きもあると思いますので、本屋さんで探してみてください。

 

音声ガイドを聴きながら展覧会を歩いていて、ファインアートと素朴画のどちらも兼ね備え、自分の時から新たな流れを作り出した応挙だったからこそ、わたしの理解の助けになってなってくれたのだということを思いました。

日本絵画のハブ的存在というのか。

 

これがもしかすると、狩野永徳長谷川等伯では少し時代が前で、尾形光琳や、伊藤若冲や、曾我蕭白では独自路線すぎて俯瞰できなかった。

のちの時代に明確な影響を与えた円山応挙だからこそ、というのはあると思います。

250年前の京都で生まれたムーブメント。
なるほど、時代や時間の感覚がよりくっきりとしてきました。

 

加えて素朴絵展や、大津絵との再会原田治展〜かわいいの発見、のライン......、日本の美とかわいいに散々ふれてきたところに...、応挙の子犬!!

やっぱりわたしたち、これなのね!!とうれしくなりました。

いろいろなものを自分の興味関心から集中して観ておくと、別のところでつながって、ひとつの体系が豊かに育っていくので、おもしろいのです。

 

上村松園のこの絵すてきでした。知っている人だと思ったら他の絵が切手になってました。切手収集しててよかった…♡
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他の感想をぱらぱらと。

 

応挙の功績に「写生」「新しい風景画」の発明があったと聞き、思い出したのが、2018年のプーシキン展。

風景画の説明の中でも、最初はやはり空想上の風景を描いていたのが、だんだんと実際の場所に足を運んで、見えるものを描くという流れがあったと教わりました。

日本画でもやはり似たような流れがあったことがおもしろい。

これは何か人々が移動をする習慣が出たということや、移動手段を持ったということと、何か関係があるんでしょうか。

ちょっと調べてみたくなりました。

 

 

日本における肖像画ってどういうはじまりで、どういう発展を見せて、今にあるのか、ということもふと思いました。風景画や人物画はあるけれど、肖像画に力を入れた展覧会ってあまりみたことがない。それとも、あまりおもしろくないんだろうか?

 

 

作品を観ていると必ずいらっしゃるのが、学芸員さん並みに詳しいプロ鑑賞者みたいな2人組。そういう方を見つけると、近くで聞き耳を立てていることが多いです。

今回勉強になったのが、「描かれている孔雀がどれもタイの孔雀」ということ。

孔雀というと頭に冠を載せている種を思い浮かべていましたが、それはインドの孔雀なんだそう。それは見てなかった...!!

▼頭の羽(トサカ?)がこんな感じなのがタイの孔雀。

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動物や植物や建築...ある分野に詳しい人と観に行くと、そういう視点から作品を観ているのでおもしろいのですよね。

やっぱり誰かと対話しながら観るのはこういうのが楽しいからなんだなぁ、ということをその2人に気づかせてもらいました。

 

 

近江八景って小さい頃はババくさいと思っていたのだけれど、日本画の題材でほんとうに多く目にするようになって、今更のように誇りというか、自分のルーツとつながる嬉しさを噛み締めています。琵琶湖を模した回遊式庭園に出会うときも、同じように感じる。大人になって、東京にきてよかったことの一つ。

 

 

応挙の遺作と言われる保津川図。左右の屏風を向かい合わせに置いて、真ん中に立つとまるで保津川の川下りをしている気分になる、と音声ガイドで話していて、わー、それは体験してみたい...と思った。実際にそういう展示になってたら、すごくよかっただろうなぁ...。

 

 

東京開催と京都開催でデザイン違い。無料のチラシにこんなに凝る国でもある...。

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今後の藝大美術館の催し、小さいものだけれど、これおもしろそうです。

聴く絵画・観る音楽 -リナイウォーリ祭壇画-(絵画のしくみ Vol.2)

 

 

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実物を観るということ〜小早川秋聲展

まったく詳しくはないのだけれど、ここ5年ぐらい小さい関心を細々と向けてきたのが、戦争画というジャンル。(戦争画とは

 

東京でまず一番出会いやすいのが、東京国立近代美術館の常設展。シーズンで入れ替えしつつも、フロアの1部屋を使って、様々な戦争画を展示してくれている。

以前、ここでボランティアガイドさんのツアーに参加したことも、戦争画に関心を持ったきっかけになっている。以前こんな記事も書いたけれど、ほんとうにガイドさんには感謝だ!

 

近美の過去の常設展の記事などを探していたら、こんなシーズンもあったようだ。

平和のために戦い続ける、という矛盾した状況の中で、「ブラックゴースト」の核を成すのが、実は人間自身の戦いへの欲望であることが次第に明かされます。

 というくだり、先月夢中になって見ていたNHKEテレ「100分de名著」のロジェ・カイヨワ「戦争論」でも言っていたことだ...と関心と関心とがつながったときの戦慄を覚える...。

 

 

とはいえ、近年の戦争画特集の展覧会はどれも逃していて、今回の小早川秋聲展でようやく関心があるという自覚を持っての、近美以外では、ほぼ初めての鑑賞となった。

www.kashima-arts.co.jp

 

bijutsutecho.com

 

直前にNHKEテレ(こればっかり!)の日曜美術館で特集をしてくれていたので、背景などよく理解して出かけていった。もちろん観たかったのは「國之盾」。そして代表作以外の作品たちから見えてくる画家の人生の物語。

 

 

 

しかしながら。

 

実物を目の前にすると、日曜美術館で語られていたことと、わたしの実感とはだいぶ違っていた。

 

 

まず感じたのは、死んだ人に見えない、ということだった。

どこからそう感じたかというと、体つき、肉付きがとてもよい。

解剖学にはまったく詳しくないのだけれども、でも、パッと見の印象では、これは直前まで三食しっかり肉も魚も食べて、鍛えて、無理な姿勢をとるような長時間の労働や作業に従事せずに生きていた人の身体つきのように見えた。

 

全身軍服で、軍靴にさらにゲートルも履いて、手も手袋をしているし、顔の部分は日章旗で覆われていて首元も見えない。

そのように一切の肌の露出はないのだけれども、がっしりとした体格には精悍さすらみなぎっている。

 

持ち物はどれもほぼおろしたてに見えるほど、傷んでいないし、汚れてもいない。

軍服、カバン、双眼鏡、日本刀、水筒、手袋。

唯一、軍靴のみ、歩いて履き込んだときにできるシワが出ていて、少し泥がついて乾いた跡のようなくすんだ感じもある。

戦地で亡くなったにしては、血痕などもなく、見た感じでは死因がわからない。

だからあまり死んでいるように見えない。

 

だからこそ、「死への悼みが感じられる」とも言えるけれども。

 

会場2階で流れていた映像や写真の感じからして、顔のあたり、特に鼻筋は、小早川自身に似ているようにも見える。

 

背景は一度桜の花びらが描いていたが、のちに黒く上描きされたという説が有力なよう。

たしかに黒の下に丸いつぶつぶした跡が見える。

 

顔の周りは仏の光背のように明るく光っている。

 

桜の跡と言われているものは、体からつぶつぶしたものが湧き出していて、全身が発光しているようにも見える。このあたりに体温を感じているのかもしれない。

そこに黒い死神の添い寝をしながら、魂を吸い取っているようにも見える。

 

刀の先だけが暗闇に溶けているが、あとは明るい中にある。

黒いのだが、真の闇ではない。

このあたりは、モニターや図録ではなかなか感じ取りにくい。

 

150.7cm*208.0cmというサイズ感も、やはり実物に会わないとわからない。

 

そうしていろいろな観察をした上で、あらためて2メートルほど離れて眺めてみると、

横たわっているものが、一体「何なのか」を考えざるを得なくなっていく。

この絵と対話していると、まるであれはわたしではないのか、という錯覚に陥る。

理由はうまく説明ができない。

わたしであるとすれば、なぜわたしはこのような姿で横たわっているのか?

 

 

戦争画という枠のあるジャンルなので、もちろん全部を自由に観るわけにはいかない。

戦意を削ぐから日本兵を描くのは禁じ手、と言われていた時代の依頼だったから、死んでいるように見えないように描いた可能性もある。従軍画家として戦地に赴いていたし、これほどの技術を持っているのだから、リアルを描けないわけがない。

 

そのように、この絵が生まれた経緯や、描かれた当時の情勢、状況、小早川の立場や信条なども併せて考えた上で、今自分の中に生まれるものを観ていたわけだが......、

 

それにしても、なんとも不思議な絵だ。

 

 

破れや表具の破損が、この絵が陸軍から受け取りを拒否されたこと、その後の運命なども想像させる。そこに水の筋のようなものが見える。これは濡れなのか描き足しなのか。

 

どの作品も展示ケースを通さず、自分の目と作品との間に遮るものなく、近い距離で鑑賞できたことがありがたかった。これは画廊だからこそできることか。

それにしても無料で40点もの作品が間近でみられるとは、なんとも贅沢であった。

 

「國之盾」以外の作品にも、筆致や色づかい、構図に小早川の美的感覚の鋭さや、繊細さが感じられた。日本画の中でも様々な技法に挑戦しており、旅を愛した人としても知られる小早川の好奇心旺盛な様子も、垣間見られた。

 

わたしのお気に入りは、「倣古図(浮世絵)」。夏、蚊帳の中で団扇を手に赤ん坊に乳を含ませながら、うたた寝してしまった女性を描いていて、これには思わず共感せずにはいられなかった。

 


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展覧会がよいのは、このように感じ取れることがたくさんあるからだ。

人間の観る力、聴く力、想像する力、体系立てる力は、数値以上の感覚の域も加えれば、非常に高い精度を持っている。

 

展覧会には、場を企画した人の軸がある。意図を持って編まれ選ばれ並べられ、解説がほどこされている。一度その物語に入ってみて、感じることは鑑賞者個別のものだ。

それにはやはり現実の空間と、場を守っている人と、他の鑑賞者との作用が要る。

 

まだまだ言葉が足りないが、「なぜ美術館で実物を観る必要があるのか」という問いにはどこかできちんと答えねばならないと思っており、その最初の石をここに置いてみた。 

 

 

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ハイジュエリーを鑑賞するとは

この秋楽しみにしている展覧会が、国立新美術館で開催される、「カルティエ、時の結晶」だ。会期:2019年10月2日〜12月16日

bijutsutecho.com

 

 

ハイブランドのハイジュエリー。その中でも超ウルトラスーパージュエリー。

わたしのような庶民にとって、そんなものを見て「今生ではとても手に入らないわ」と溜息だけつく以外に何をしに行くのか...と、以前は思っていた。

けれども、2015年に東京国立博物館で開催されたブルガリ展でその思い込みが覆された。

www.tnm.jp

 

人間はこんなものも作ってしまうのか!という衝撃に、ただただ鳥肌が立った。

寸分の隙もない緻密な計算と技。

そこにある哲学や思想、歴史や文化。

 

エジプト文明。ファラオの副葬品を見て、ああ、その時代の人ってこういうものを大切に、これを美しいと感じ、これをジュエリーに込めたのか...ということを感じるように、興味深く見てみたい。

 

人間が美と感じるものの、究極に際立った形...と観るのかもしれない。

「一部の人にだけ関係ある、あってもなくてもいい贅沢品」というよりは、人間が別の分野(飛行機とか建物とか楽器とか)で作っていることの、別の形を観るんじゃないか?

今回はカルエィエ展なので、ブルガリ展のときとはまた違うものを観るのかもしれないし...。地域や歴史が違うと現れも違うのではないか?

などなどの仮説。

 

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今までは、「これを観てきた」というレポートをこのブログに書くことが多かったのですが、今回は、行く前に「何を観たいか」を書き留めてみようと思いました。

そうすると、わたし自身の鑑賞の軸(なぜ足を運びたいか、何を観たいか、何が見えそうか)が立ってよいかなと思ったのと、だれかの興味関心のきっかけになったらいいかもなとチラッと思ったので。

 

でも、お墨付きというわけではないし、何を観るかは人それぞれなので、「あまりよくなかった!」とかなったらすいません。
あとは「いろいろあって、わたし行きたいって言ったけど行けなかった...」とかも起こりそうですが。

 

情報提供や口コミではなく、わたしは美術館や博物館に行く時に、何を基準に選んでいるのか、行くまでに何をしているのか、という自分の思索や行動をバラして行くことが、鑑賞対話の場づくりによい発見が起こるんじゃないかと思っているのです。

 

そうだ、そうだ。

それを思いついたときにやっていこうと思います。

 

 

 

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映画『桐島、部活辞めるってよ』を語る

仲間内でひらかれた、映画『桐島、部活辞めるってよ』を語る会に参加しました。

発起人は、この映画がめちゃくちゃ好きなアメリカ・シアトル在住民。

どんなに離れていてもインターネット会議システムがあるので、思いついたら語る会ができてしまう。いい時代!

 

アメリカとは時差の関係で、開催時間が合わせにくいのだけれど、日本時間午後1時、アメリカ前日の午後21時からひらいてくれました。ありがたいな!

 

「桐島〜大好きな人」から、「どこがいいのかよくわからないので好きな人の話聞いてみたい人」まで、さまざまな動機の5人が集まりました。

新しい視点や表現が尽きることなく湧いて出て、75分、大いに盛り上がりました。

 

 

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『桐島、部活辞めるってよ」は2012年8月公開の映画。

youtu.be

 

わたしが「桐島」を観たのはいつだったか、たぶん2014年か2015年ぐらい。
公開当時は「噂になってんなー」ぐらいの感じでした。
「○○、○○だってよ」というフレーズがやたら流行っていたような気がします。

DVDで観たときも、感想はしばらく持っておきたくて、誰かと積極的に感想を交わす行動は起こさなかったと記憶しています。

 

今予告観ると、うーん...なかなかしびれますねぇ...!

"日本映画史に残る圧巻のグランドフィナーレ"は嘘じゃない!!!と言えます。

ここからはちょっと内容に踏み込んでますので、未見の方はご注意ください。

 

 

観ていると、どうしても自分の高校時代はどうだっただろうか?ということと重なる。

 

わたしの高校時代は、ここに出てくる子たちの誰でもなかったなぁ。
いや、どれも少しずつわたしである、という気もする。
そういう点で、"全員、他人事(ヒトゴト)じゃない"はそうかも。

(あれ、今気づいたけど、映画のポスタービジュアルは"全員、桐島に振り回される"だったのが、DVDパッケージでは上記に変更になってる)

 

一番「わかる」感じはするのは、映画部の前田と武文。

イケてる人たちからは相手にされなくても、別に気にしない。
こちらも同じ「スクールカーストの上位」に行きたいわけでもない。

好きなものが明確にあり、同じレベルで話せる仲間がいて、それなりに楽しく毎日やっている。
大人しそうに見えるからって、別にいい人でも純朴でもない(誤解されやすい)。

「将来は映画監督目指してます!」とか「ありえない理想」をぶち上げてるわけでもない。

そういう前田が、カッコよくて勉強できてスポーツもできて彼女もいる宏樹と立場が逆転する。持てる者なのに、一つのことに傾ける情熱は持てない。親友だと思っていた桐島からも必要とされていないことに気づく宏樹。

その宏樹に対してカメラを向けて、「やっぱカッコいいね」というところの、対等感というか逆転感がたまらない。

 

そう、どこが一番よかったかと言えば、やはりここのクライマックス。

前田が宏樹に向かってカメラを構えた瞬間、世界がぐるんと回転する。それはもう見事に。


あそこで、もしかすると前田も、人にカメラを向けるということの本当の力(の片鱗)を知ったんじゃないかと思う。「そうだとすれば、あの日から監督を目指す可能性だってあるよね」なども話した。

 

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小説も読んでいる発起人の第一感想としては、「映画のほうは心の声や行動の理由など一切の説明がなく、音もクライマックスを除けばほぼ入らないので、観ている側に感情の操作がないところが好き」とのことで、そうそうそう!わたしもそうなの!と思った。

 

この映画のつくりの奇妙なところが、今までにない感じで、どうにもたまらなく、好き。

 

そして背景が全然わからないにも関わらず、一人ひとり、必ず「こういう奴いた!」と思い当たるような人たちが出てくる。

"あなたの記憶を刺激する青春エンターテインメント!"という予告に流れるテロップも、観る前はなんのことだかという感じなのだが、観た後は、「ああーまさに...」という気持ちになる。

 

「僕たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」という劇中劇(ゾンビ映画)のセリフは、まだ高校生活の残りが1年数ヶ月ある中で、どのような身の処し方でゆくのかということでもあるし(もちろん道は学校の中だけにあるわけではない)、その先の一人ひとりの未来をも感じさせ、いろんな可能性に満ちているところが、青春である。(想像上の、かもしれないが)

 

 

▼わたしの好きなシーン(どこもわりと好きなんだけど)

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唯一、存在が一番不明だったかすみについては、「とにかく周囲と調和が取りたいがために行動する人。ゆえに自分があるようで全然ない人なのでは」という、その人個人の「わかる」感じから見立ててくれたおかげで、理解が進んだ。

 

参加メンバーの中には、この映画のクラスにいたんじゃないかと思うような遍歴の持ち主もいた。やはり場をしつらえて感想を話すことっておもしろすぎる。

そうでなければ多分一生知ることもなかったかもしれないエピソード。
いやー、すごい。人間おもしろい。

 

 

そうやって感想対話で一人ひとりが持っている「この人の感じ、わかる」を集めてみると、人物も物語も立体的になってきて、「そういう映画だったのか!」と合点がゆく感じも得られる。

でも、それでも、全部はわからない。

そういう「語りたくなる映画」になっているところが、秀逸。

 

おお、この「わかりそうで肝心なところは話しても話してもズレる感じ」...まるで、芥川龍之介の「藪の中」のようでもある。

 

 

「桐島、〜」が持っている独特の淡々とした感じ。

何かに似ているなーと思ったら、「滝を見に行く」だった。

7人のおばちゃんたちが滝を見に行く話で、好きな映画50本に間違いなく入る。

タイトルもそういえば似ている...。

 

 

 

映画で語るのって、やっぱり楽しいなぁ〜

鑑賞対話って、もちろん何が真ん中にきても楽しいんだけど、映画という表現形式だからこそ生まれる対話ってある。映画で語るのが一番!というのでもなく、オペラでも能でも本でも、それぞれに「ならでは」があることが魅力。

 

たった75分で、こんなに満足。場の力って素晴らしい。

 

 

 

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https://coubic.com/uminoie/174356


 

鑑賞対話の場づくりコーディネーション・ファシリテーション

・<法人><団体>教育普及、広報宣伝などを担当されている方向け。
・映画、展覧会、書籍、舞台芸術など、鑑賞対話の場づくりのご依頼をお待ちしております。
・鑑賞者同士で話す場、専門家と非専門家が知を交換する場。お互いを尊重し、補完する対等性のある場。知の交流と学びの楽しさを集う人一人ひとりが感じる場です。
・企画・設計・ファシリテーション・集客サポート・レポートを担当します。
・参加者5名から100名程度まで。

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場づくりコンサルティング・個人セッション
・<個人><グループ>
・Zoom または 東京都内で対面
・30分¥5,400、60分 ¥10,800(税込)
・読書会、勉強会、体験ツアーなどのイベントや講座。
・好きなもの・ことを共有する・考える・創る機会づくり
・企画・設計・進行・宣伝のご相談のります。
・募集文の添削やフィードバック、ふりかえりの壁打ち相手にもどうぞ
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連載
『場づくりを成功させるための5つの鍵』(寺子屋学)https://terakoyagaku.net/group/bazukuri/