COVID-19感染拡大の影響で、公演ができなくなり、ライブビューイングも上映できなくなってから、毎日、良質の公演映像を無料のストリーミングで届けてくれる、メトロポリタン・オペラ。
ライブ・ビューイングの過去のストックなどから配信してくれています。
きのうは、40人以上のアーティストが参加するライブ配信、"At-Home Gala"のプロジェクトがありました。自宅から、故郷から、美しい音楽を4時間以上にわたって届けてくれました。
アメリカでのこのウィルスの状況を考えると、もちろん単純に数字だけでは測れないけれども、日本の東京に暮らしているわたしとは、また全然違った感覚でいるであろう人々。
オーケストラの団員の中には、感染が元で亡くなった方がいたようで、賛美歌がその方に捧げられていました。
音楽を通して悼みを共にし、愛や友情や希望を奏でる姿に、涙が止まりませんでした。
この機会に、ドネイトしました。
このドネイションは、わたしにとって、日頃の感謝とサポートの表明でもありましたが、同時に、
・作り手や届け手への敬意を持ち続ける、
・無料コンテンツとして消費はしない、
・観客としての誇りを失わない、
という覚悟でもありました。
その芸術のクリエイションのために、どれほどの時間とエネルギーが割かれてきたかを考えれば、わたしだって決して家でだらりと観ていたいのではないんだ!
然るべき館で、然るべき服装で、然るべき金額でこの芸術の素晴らしさを受け取りたい。
無料に慣れたくないという話をきのう鑑賞仲間と交わしました。
もちろん、日常の暮らしの中で、一流のパフォーマンスにふれられるのは、一方ですごくうれしい。
家でごはん作りながら、お皿を洗いながら、パソコンで仕事をしながら、聴けるのはうれしい。鑑賞仲間とわいわいチャットしながら観られるのも、新鮮でうれしい。
今までハードルが高いと感じていた人が、気軽にオペラの世界にふれられるのは、全体の認知や販路拡大にも繋がって、うれしい。
ドネイションにしても、全員がそう「するべき」とも思わないし、全員がそう「できる」とも思わない。
ただ、その真価を知る者は率先してやることがある。
ドネイションに限らず。
それを、あらゆる芸術や文化に対してのわたしの態度としていく。
今回あらためて感じているのはもう一つ、「この大切な文化の存続のために、ドネイトしてね」とまっすぐにリクエストできることへの羨ましさ。
芸術や文化が社会にとって、市民にとって、大切なものとして存在している。社会とそのコンセンサスが取れている。歴史や土台。
わたしが生きている社会には、これがまだまだ足りないんだ、という悔しさ。
これもあらためて刻んで、自分のお仕事をしていこうと思います。
今後、公演や開催の形態は少しずつ変わっていくと思います。
わたしが生きている間にもバーチャルで体験できることは増えていくでしょう。
でも人間の身体の可能性に気づき拡張してくれるような、あの振動は、あの魂の震えは、まだしばらくライブでしか味わえないと思いたい。
わたしは、その体験をこそ、愛しているのです。
*追記*
カーテンコールまで観ていて、涙が出てしまった。
またこんなふうに人々が集って、美しい舞台を観ることができますように!!