ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

〈お知らせ〉5/26 ひととびセレクション#2 『パンデミックを生きる指針』を語ろう

5/26(火)の夜、ウェブ記事を読んで感想を語る会をひらきます。

 

hitotobiselection2.peatix.com

 

次の3本の記事を扱います。

1. 藤原辰史『パンデミックを生きる指針ー歴史研究のアプローチ』
https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic
2. 根本美作子『近さと遠さと新型コロナウイルス
https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic2
3. 内田樹『コロナ後の世界』
http://blog.tatsuru.com/2020/04/22_1114.html

どれも4月にリリースされた記事ですが、時間が経っているからこそ、今落ち着いて読めるのではないかと考え、選びました。
それぞれの記事同士が補完し合うところがあり、より立体的につかめるはずです。


当日は、知識がある人からない人への伝達(講義)ではなく、それぞれの立場や背景から見えるもの、感じ取るものを出し合う(共有知をつくる)スタイルで進めていきます。

気になった方は、ぜひ詳細ご確認ください。

hitotobiselection2.peatix.com

 

 

 

これはわたしがずっとやりたかった企画の一つです。

・何か新しく買わなくても、普段何気なく目にしている(けど流してしまっているもの)にスポットを当てて、人と一緒に鑑賞するだけで十分学べる

・鑑賞と読解の学びの場は、現役で大学に通う人だけの特権ではなくて、何歳でもどんな立場の人でもひらける。(ただし雑談では制限がかかって話しにくいので、テーマを据えて、安心してフラットに話せる場づくりが必要)

・真ん中に据える対象を取り替えるだけで、万物は無限に鑑賞できる。

 

というメッセージを込めています。

 

素晴らしいテキストがそろっています。

COVID-19世界を生きるための心構えを、90分かけてじっくりと言葉にしていきませんか。

 

ご参加お待ちしております!


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Information

2020年5月22日(金)『サーミの血』映画鑑賞+感想シェア

ptix.at

 

2020年5月31日(日)『プリズン・サークル』感想シェア

chupki.jpn.org

 

鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンやサポーターづくりをすすめませんか?ファシリテーターのお仕事依頼はこちらへ。

seikofunanokawa.com

〈レポート〉5/19 映画『ホドロフスキーのサイコマジック』を語ろう

オンラインで映画の感想を語るイベントをひらきました!

ptix.at

 

www.uplink.co.jp

 

 

新作で封切るタイミングと緊急事態宣言が重なってしまったため、こちらでオンラインで先行上映をしている作品です。

『リアリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』と傑作が続いてからの新作『ホドロフスキーサイコマジック』ということで、大変期待していました。

 

3月に試写で観たときの記録。ご参考になれば。

hitotobi.hatenadiary.jp

 


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感想シェアは、ホドロフスキー映画が好き!新作もすごく楽しみにしていた!という方と、たっぷり75分話しました。

 

映画は、11の臨床ケースと2つの大規模イベントの記録で構成されています。

1. 母の愛をめぐる2人の兄弟の葛藤

2. 自殺寸前まで父親に虐待された男

3. 誕生のマッサージ

4. 夫婦の危機

5. 家族に怒るパリのオーストラリア人

6. 月経はいけない?

7. 結婚式の前日に婚約者が自殺したメキシコ人

8. 吃音を止めたい47歳の男

9. 深刻なうつ状態にいる88歳の女性

10. アルチュール・アッシュ

11. 癌は治せるのか

12. クローゼットから出る

13. ソーシャル・サイコマジック

 

各々のケースで印象に残っていることや、ケース同士のつながりなどを一緒にみていきました。そこから、ホドロフスキーが表現しようとしたものを探ったり、思い出した自分自身の体験を共有したり、それに意味付けしたり、また問い直したりと、話題が展開していきました。

 

この作品は、家族と性的なものと尊厳(Sexuality & Dignity)という人間の根源がテーマになっています。予告や生死ビジュアルでは一見奇抜なだけに見えますが、描いていることはとても真摯で愛があり、インスピレーションに溢れていて、生命力を手渡されます。

家族から生まれた自分と個人でもある自分。

性的な存在である自分を、自分でも認めるし、人からも認められることの大切さ。

この大切なことに、対話を通して辿り着けたのは、非常によかった。

得難い時間でした。

 

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参加者さんから、「鑑賞対話とは、場にいる人と共に作っていくプチジグソー」というメタファーをいただいたのも、わたしにとってアメイジング!(Amazing!)な経験でした。

映画鑑賞を個人の体験として持っていてもいいのですが、一度自分をひらいて感想を言葉にして場に出してみると、隣で観ていた人と違うピースを持っていたことがわかる。

全然違ったり、ちょっと似ていたりするジグソーパズルのピース。

それを組み合わせて、全体像がなんとなくわかったり、細部がとてもよく見えるようになったり、自分が持っているピースが他にも影響していることが次第に見えてくる。

ジグソー。

よいメタファーでした。ありがとうございます^^

 

 

そうそう、今回の発見としてもう一つ。

実は、映画館に観に行くより、オンラインのほうが安心して観られる作品もあるんですよね。
一時停止したり、スキップしたり、時間をおいてから続きを観ることができる。
観たくない映画の予告も入らない。(わたしは大きな音や悲惨な描写が苦手です)

劇場で観るのがちょっと怖いので、あえて劇場公開が終わるまで待っていた作品もあるんです、実は。

新作をオンラインで封切りすることの良さも確実にあると思っています。

 

 

ご参加くださった方、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました!

 

 

Information

 

2020年5月22日(金)『サーミの血』映画鑑賞+感想シェア

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2020年5月31日(日)『プリズン・サークル』感想シェア

chupki.jpn.org

 

 

2020年5月26日(火)『パンデミックを生きる指針』ウェブ記事感想シェア

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書籍『猫を棄てる 父親について語るとき』

今の状況で文化的なものに直に触れようとしたとき、わたしにあるのは本だ。
本だけではないが、もっとも身近にあり、入ることを閉ざされていない館だ。

扉を開き続けてくれているまちの書店に感謝。

 

先日立ち寄ったときに村上春樹の新刊が出ていたので、迷わず購入した。

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹(文藝春秋)

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あの村上春樹が、父親について語る。

ついに......という気持ち。

 

作家の父の不在感と影の奇妙さは、小説からもエッセイからも感じてきた。

うっすらと覆っているのでどれと特定できないが、わたしが明瞭に判断できたのは、『ねじまき鳥クロニクル』で物語の底に敷かれているノモンハン事件のことと、安西水丸の猫の絵が表紙のエッセイ『ふわふわ』に書かれた「だんつう(緞通)」という猫についてくだりだ。

 

いつか彼が父親について語る日が来るかもしれない、という予感は長らく持ってきたが、今、感染症の影響で制限ある暮らしをしている、このタイミングで自分が読む、というところが、なにやら運命的に思われた。

 

作家の人生と作品を結び付けないほうがいいとよく聞くし、現代アートなどはそういう見方をすると解釈を誤るということがある。

もちろんわたしも、作り手の人生がそのまま投影されるとは思わない。
しかしまったく関係なしに創作の器となれるとも思えない。
凡人ができる想像の限界だ。

 

以前、友人と、「子が親の話を聞き取り、文字起こしして構成し、編集を入れて一冊の本として自費製本する」というプロジェクトを企画したことがあった。

まずは友人が自身の父親と母親にインタビューし、その音源をわたしが文字起こしして構成し、本人に読んでもらって加除修正を施し、完成稿とするところまでこぎつけたが、結局製本に至らず、頓挫したのか自分たちもよくわからない形で現在に至っている。

 

『猫を棄てる 父親について語るとき』は、村上春樹が父親の死後に、父親について調べたり、記憶を辿ったりして書き上げた本なので、本人に何かを聞いてはいないのだけれど、読んでいて自然とこのプロジェクトのときのことを思い出した。

 

親の人生を辿ることは、自分自身のルーツを辿ることでもある。

その親とどんな関係にあったとしても、我が生を省みる機会になる。

自分が今ここにいる理由。

親が伝えられ、自分に伝えてきた何か。
手渡されたが受け継がなかった何か。

 

 

友人親子の語りを聴いていて、何度も唸った。

なんという、個人的で恣意的で壮大な物語か。

語りの端々から受け取る当時の時代、世代、人類の宿業。

長い時間をかけて石化した澱。

 

属する社会や時代に、否応無しに呑み込まれながら、精一杯の命を燃やして、やがて消えていく。

あのときの感覚を思い返しながら読んだ。

 

 

以下本文より引用。

人には、おそらくは誰にも多かれ少なかれ、忘れることのできない、そしてその実態を言葉ではうまく人に伝えることのできない重い体験があり、それを十全に語りきることのできないまま生きて、そして死んでいくものなのだろう。

 

その本質は〈引き継ぎ〉という行為、あるいは儀式の中にある。その内容がどのように深いな、目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?

 

力なき小さき者の歴史。

その集合が、この小さく複雑な世界を今日も形づくっている。

 

〈お知らせ〉5/19(火)映画『ホドロフスキーのサイコマジック』を語ろう

5/19(火)夜、映画を観た人同士で語ります!(要事前視聴)

ptix.at

 

観ているうちに、自分の中の傷や苦しみも癒えていくような体験。
それがホドロフスキーの繰り出すサイコマジック映画。
今なにか手放したいものがある方におすすめです。

 

感想を話すと、鑑賞体験も深まるし、映画への愛も深まりますぞ〜!
もし観てモヤモヤしても、話したり他の人の感想を聴くとまったく違うふうに観えていく。
映画がくれる豊かさの一つです。間違いなく。

 

・脱線しすぎて関係ない話になる

・話題が偏る・散る

・映画評や分析のような話ばかりになる

・一人の人がずっとしゃべっている

・マイノリティに配慮のない発言が出る

......などが起こりにくいということです^^

 

初めての方もお気軽にご参加ください!

 

詳細・お申し込みはこちら>>http://ptix.at/hq7TVV

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今後のお知らせ

▼5月22日(金)おうちで映画を観にいこう#3 『サーミの血』
 

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鑑賞対話会で、作品、施設、コミュニティのサポーターを増やしませんか?
ファシリテーターのお仕事依頼、場づくり相談はこちらまで! 

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オランのまちの人として

こんなとき、オランのまちの名もなき人々の中に、わたしのような人もいたに違いない。

今のわたしが心引き裂かれている、この悲しみ、この憤りを感じた人も、いたに違いない。

登場人物として名前を与えられなかった無数の人々の中に自分を含めることで、小さいけれども確かな心の平安を得ています。

 

人間は、物語を灯りに進むことができます。
それぞれに過酷な時代を生き抜いた先人の叡智が、本の形で受け継がれています。

そして、物語を真ん中に焚き火をするように語らうことで、つながりを感じることができます。

 

オランのまちでこれからも生きていくために。

小さな焚き火の番人でいます。


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カミュ『ペストを語ろう』はリクエストいただければいつでも開催します。

こんな場です。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

・対象: 本を読んだ方
    または
    NHKオンデマンド配信『100分de名著・ペスト』を観た方

・会場: Zoomにて。

・日程: 平日休日問わず。候補は以下の中から。

10:00-11:15
13:00-14:15
14:00:15:15
20:00-21:15
21:00-22:15

 

ご連絡は、ウェブサイトのContactフォームへ。
https://seikofunanokawa.com/

団体やコミュニティからのファシリテーターのご依頼もお待ちしています。

〈レポート〉5/8 おうちで映画を観にいこう#2 『ラ・チャナ』

おうちで映画を観にいこう〉第2弾、ひらきました。

おうちで映画を観にいこうとは、

Zoomで待ち合わせ→各自オンライン配信購入&鑑賞→Zoomで感想を話す

をして、会えなくても、映画館に行けなくても、一緒におうちで映画を楽しもうぜ!という集いです。

オンライン配信されている作品からピックアップすることで、ミニシアターも応援しよう!という企画でもあります。

第1弾は、『ホドロフスキーのDUNE』でした。レポートはこちら

 

 

さて、今回はこちらの作品『ラ・チャナ』!

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https://www.uplink.co.jp/lachana/

ptix.at  

ラ・チャナ』は、一人のフラメンコダンサーの人生を追ったドキュメンタリー映画

若くして才能を開花させたラ・チャナでしたが、ある日突然、表舞台から姿を消します。

今だから語れる、その背景と、30年のブランクを経ても消えぬ踊りへの情熱。

なぜ踊るのか?
なぜ生きるのか?
なぜわたしなのか?
モニターを超えて迫りくる肉体の存在感が、見る者の魂を震わせます。

一人のアーティストの生き様にあなたは何を見ますか?

 

当日のこと

当日は、わたしがいる東京から3名、偶然にも秋田から2名いらっしゃるという、おもしろい顔ぶれとなりました。音楽が気になる、フラメンコを習っていた、サンバをやっていた、ミニシアター映画を観たくて、など、動機もさまざま。

今回はじめて参加してくださる方も、「待ち合わせて、わくわくしながら映画を観に行く感じがいいー!」とさっそく気に入っていただけた様子。うれしい。

 

わたしは、この映画の予告編を観たときに、とてもイメージがつきやすくて、なんとなく観たような気になっちゃいそうな映画だなと思いました。

でも実際観てみると、感じることや受けとるものは全然違いました。

さらに、この日観終わってから、Zoomで再び集まって感想を話してみたら、それぞれの方が注目していたところが全然違っていたり、同じところでも違うふうに観ていて、おかげで何重にも映画を楽しみました。

 

ほんといつもこればっかり言っているんですけど。

やっぱり感想を話すっておもしろい!!

人間の個別性ってすごい!!

特にわたしが印象深く残ったのが、ご自身も踊りをやっていらっしゃる方の、
「踊りの基礎訓練がないために、情熱だけで踊って身体を傷めてしまうことの怖さと、それを良し悪しで測れないことの深遠さ」の話でした。

ラ・チャナが膝や腰を傷めていたのは、指導者についていなかったこと、基礎訓練が積まれていなかったのでは?」との見立て。

観る人が観れば、そのあたりの危うさが感じとれるのですね。去年観た『わたしは、マリア・カラス』を思い出します。

 

ラ・チャナが才能や情熱に殺されてしまわず、温和なパートナーと共に、穏やかな日々を過ごしていてよかった。

だからこそ、なぜまた舞台に?という話にもなりました。そのあたり、わたしは後年のラ・チャナの踊りから、ギリヤーク尼ヶ崎やフジ子ヘミングを思い出しました。

アーティストというものはやはり、最後の最後まで舞台に立ち続けることを願うものなのでしょうか。

 

皆さんが場をとても楽しんでくださっていたので、話題はどんどん生まれ、新鮮な発見がたくさんありました。メモもみっちり。

 

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ひらいてみて思ったこと

感染症流行に伴って、映画も舞台もオンライン配信の機会がたくさんあるのはうれしい。

でも、ただでさえ人とリアルに会う機会が少ない中でデジタルコンテンツを観ていると、なんだか鑑賞体験がますます個別に閉じていってしまうのではと、少し危機感も持っています。

人と語り合う場で、体験がひらかれて、化学反応が起きることは、単に楽しいだけではなく、自分の存在の確認としても、今のような時期には大切になってくる。

このことをより意図的にもって、場をひらいていきたいと思いました。

 

それから、異文化を知ることができるのも、映画のおかげだったなと思い出しました。

わたしは10代の頃からたくさん映画を観てきましたが、言葉、感情表現、コミュニケーション、美術、ロケーションなど、映画に映る様々なものからその国の知識を得、憧れを胸に抱き、自分のルーツとの違いを思い、、ということをしてきたのでした。

映画のおかげです。

 

まぁなんだか小難しいことを並べましたが、発端は友人の、「聖子さんと映画を観に行きたいんだけど」とか、「一人で選べるし楽しめる年齢になったのに、あえて友だちを誘って、観る映画をすり合わせるとか、イイ♡」と出してくれた、楽しい思いつきでした。

今後もそんな感じで楽しくひらき、皆さんにも楽しんでいただき、そして映画業界にも小さく貢献できたらと思います!



参加者さんの記事をご紹介
note.com 

"映画って観ないとわからない不安要素がけっこうある。わたしは作品から大きく影響を受ける方なので、ちょっとでも疲れ気味の時は冒険したくないのです"
......すごくわかります。わたしもです!わりと念入りに調べて行きます。

"けれど、この場なら、作品のセレクトからよく練られているのできっと大丈夫です笑"
......というご信頼いただいていて、大変ありがたいです!作品の目利きもわたしの大事な仕事です^^


 
映画を語る場・今後の予定 
▼5月19日(火)映画 『ホドロフスキーのサイコマジック』を語ろう(要事前鑑賞)
ptix.at

▼5月22日(金)おうちで映画を観にいこう#3 『サーミの血』

ラ・チャナ』のキーワードであった、才能・民族・血がこちらにもつながります^^
ptix.at 

 

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〈レポート〉5/3 映画『インディペンデントリビング』でゆるっと話そう、ひらきました

シネマ・チュプキ・タバタとコラボの映画対話の場〈ゆるっと話そう〉をオンラインで開催しました!

chupki.jpn.org

 

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、チュプキさんでも映画上映ができなくなり、〈ゆるっと話そう〉も4月はお休みしていました。

でも5月は、こうしてまた皆さんと映画の感想を話せる!!
うれしくてわくわくしながら当日を迎えました。

4月30日までにオンライン配信で視聴すれば、チュプキさんにも興行収入が入るという、応援してね企画でもありました。

 

 

第11回ゆるっと話そう『インディペンデントリビング』

https://bunbunfilms.com/filmil/

映画館での上映がしづらくなっても、逆風にもめげず、オンライン配信をいち早く決めた新作です。 

障害者が自立生活を選ぶ。この映画で描かれているのは、リスクや責任を負いながら、生きることにチャレンジしている人々の姿。

自由って、自分らしさって、なんだっけ?
自分が生きたい社会や世界って、どんなふうだっけ?

今の「不条理」で「不自由」に覆われた世界を生きるわたしたちに、たくさんのヒントを差し出してくれているようです。(告知文より)

 
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7名の方がご参加!満席!

3分前に飛び込んだ方がいらして、満席になりました。このライブ感^^

遠方にお住まいの方、車椅子ユーザーでなかなか都心までは出にくい方も参加してくださったので、この点はオンラインでやってよかったところです。

聴覚障害の方がおられましたが、皆さんが話していることは、チュプキのスタッフさん2名が、UDトークという発言を同時に文字起こしするツールを使って共有し、ご自身の発言はチャットで、というやり方で進めました。

 

こんな話が出ました

・身近に障害をもった人がいる。社会が理解する必要があることと、障害を持った人からも歩み寄る必要があることと、両方あると感じた。そしてそれがこの映画で見ることができた。

・ヘルパーという仕事に興味があった。どんなきっかけでなるのか。どんな人がかかわっているのか。

・子どもが自立したがっているのに母親がなかなかさせない、失敗を心配するという人生にとどまってしまうことは、障害のあるなしに関わらず起こる。

・自立生活センターのスタッフは、親のサポートをしているようでもある。そのシーンがよかった。

・できないと思ってあきらめちゃっているけれど、実はできることたくさんあるかも。

・主体的になることの大切さを実感した。首から下が麻痺している人が、自分がしてほしいことを一つひとつ指示を出していくところは、すごいと思った。タフなことだ。

・「インディペンデントリビング(IL)」は福祉用語としてだけではなく、誰にでも関係ある大事な言葉として、流行らせたい。

・その人が望んでいることをサポートするという姿勢が大切。「その人の目の奥を見る」という表現や感性に驚嘆!

・周りがプロばかりだと、ついついやってあげてしまうし、言わなくても通じてしまうところが、良し悪し。

・時が止まってしまっていたのが、人のかかわりで動いていくところがすごかった。

・自分のやりたいことを諦めずに実現していく人を見て、また周りの人が力をもらっていっていることが感じられた。

・NHKEテレの番組『バリバラ』に出演している方も何人かいたが、彼らのふだんの生活を垣間見たようだった。

・大阪だからなのか?パワーを感じた。

・皆さんと話して、また観たくなった。購入期限があるまでは何度でも観られるのがオンラインの良さ。

・劇場での上映が再開されても、オンラインの〈ゆるっと話そう〉も両方あるといい。今までアクセスしづらかった人が参加できる機会かも。


......などなど、話は尽きず、60分じっくりたっぷり語りました。

 

わたしのふりかえり

・オンラインで話し慣れていない方もいらっしゃるので、参加者の方のアピールにお任せしない。「発言が少ないかな?」という方に話を振る、出た話題を全体に振って問いかける、当事者・側で支援する人・理解する人(アライ的な)などの立場が明確だったので、それぞれの立場からどんな感想を持ったかを質問を出してもう少し明らかにできたらよかった。すべてファシリテーションの基本。

・次回は、少人数で別室(Zoomのブレイクアウトルーム)機能を使って、なるべく話しやすい環境を作れたら。

・アンケートで、休日午前もよかったが、平日夜など時間帯を変えたりするとまた新しく参加できる人も出てくるのでは、というご意見もいただいたので、いろいろ試せたらなと思っています。

・事前申し込み制だと、場であったことのフォローができるし、アンケートもとれるので、これはこれでありがたい。

 

次回の〈ゆるっと話そう〉は、なんとあの話題作!!

近々ご案内します。どうぞお楽しみに!!

 

 

参加者さんの記事をご紹介します。

場で対話できたこともうれしいですし、こうして書いたものを読ませていただけるのも喜びです。(掲載の許可をいただいております)

note.com

 

田中監督、鎌仲プロデューサー、平塚チュプキ代表のトークライブ

4/29に配信された作品をめぐるトークライブです。こちらでアーカイブが観られます。映画を観る前に・観た後にぜひ!

 

こちらの本もおすすめです

3月の『37セカンズ』でゆるっと話そうの準備のために読んだ本です。

 

 

 

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seikofunanokawa.com

 

『生理ちゃん』の3巻、出てますよ〜!

生理を擬人化した漫画『生理ちゃん』の第3巻が出ましたよ!

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モデル、不倫、夫婦のパートナーシップ、上司や同僚、中絶、働くことと妊娠、女性とは、職場と女性と生理......。

今回もまた「ああーそういう面もあるよなぁ」と思うエピソードばかり。
作者のリサーチの丁寧さを感じます。

WEBで無料公開もされているのですが、本として、一冊にまとまっているのもまた良いです。こういった従来の価値観を覆す発刊の仕方も、おもしろいなぁと思いながら見ています。

『生理ちゃん』といえば、昨年こんな読書会をひらきました。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

対話のきっかけに、とてもよい作品です。

性や生理についての学びと対話の場をひらきたい方に、強くおすすめしたい。

作品を経由すること、安心安全に感想を語る場を設けることで、一見センシティブに見えるテーマも、ぐっと話しやすくなりますよ。

読書会ファシリテーターのご用命、企画や進行など場づくりのご相談、承ります。

▼こちらのContactから。お待ちしております。

seikofunanokawa.com

〈レポート〉カミュ『ペスト』を語ろう

カミュ『ペスト』を語ろうという場をひらいています。

4月中旬に1回目をひらき、2回目以降はリクエストにお応えする形にして、ここまで4回開催しました。

talkaboutpest4.peatix.com

 

なぜ『ペスト』を語る場をひらこうと思ったか

わたしが『ペスト』が話題になっていると聞いたのは、2月中旬。大型クルーズ船内での新型コロナウィルスの集団感染が起こり、多数の感染者、死者がではじめ、状況が厳しくなっていました。

ちょうどその頃から、書店で『ペスト』が売り切れ続出、重版がかかっていると。そして、「『ペスト』が今の日本を予見しているかの内容で、すごい」という感想が、方々から聞こえてきました。

コロナ危機の深刻な課題を見通した、カミュ『ペスト』の凄み(野口 悠紀雄) | 現代ビジネス | 講談社

感染症扱う小説や歴史書に注目 カミュ「ペスト」15万部増刷|好書好日


「これはみんなで語る場が必要かもしれない」と思いはじめました。

ただ、わたしはカミュの『異邦人』を読んだことはありましたが、『ペスト』はその存在も知らなかったので、一から読むことになります。

迷っているうちに4月に入り、NHKEテレの番組『100分de名著』が"ペスト"の回の再放送をすると知り、このタイミングしかない!と第一回を企画しました。

番組を観て、驚きました。

2018年放送時に、すでにこの未曾有の事態が予見されているかのような出演者たちのやり取り。『ペスト』という作品の魅力。カミュが込めた思いの深さ。本も読みはじめて、この物語には大きな力があることをさらに確信しました。

 

今、このコロナ禍を生きるわたしたちにとって、この物語にふれること、この物語について語ることが生きる希望になる。

もしもこの先、もっともっと長く影響が続いたとしても。

とりわけ有事には、立場や状況による世界の見え方の違い、何に困っているか・何を求めているかの切実さが、一人ひとり違ってきます。それを実感を込めて表現するときに、人を傷つけたり、分断を生んだり、孤立することが怖い。

でも、人は、自分の言葉で表現して現状を理解したい。

そのときには、作品を経由した対話が助けになります。

それが文学や芸術の力であり、場の力でもあります。

 

わたしが仕事を通じて貢献できることは、「いろいろ不安はあっても、今、比較的元気な人が元気なままでいられるようにすることだ」と、思い定めていたこともあります。

また、本を買うことや、番組を観ることで、社会にある他の資源ともつながりを持ってもらい、この場をきっかけに、小さいはたらきかけであったとしても業界を活性化したいという思いがあります。

作り手と届け手と受け手をつなぎたい。

『ペスト』に登場する人々のように、自分の信念にもとづき、今、自分にできることをする。したい。そう考えました。

 

場のすすめ方

タイトル。「読書会」というラベルはわかりやすい人にはわかりやすいですが、同時に限定的にもなりすぎるので、あえて「語ろう」とつけました。

対象者は、

・小説『ペスト』を全部読んだ人

・小説『ペスト』を途中まで読んだ人

・100分de名著『ペスト』を観た人

ですが、本を読んでいないことを引け目に感じないよう(たぶん引け目に感じがち)、「知らないことをシェアしあうことによって、深い理解につなげていけたら」という意図をもち、リマインドメールや冒頭でも重ねて共有しました。

100分de名著もすばらしい制作物として場で扱いたい、という意図もありました。

 

冒頭では、作品の周りにある世界の層を示し、どれもこの場での感想として扱うこと、行ったり来たりしながら対話を重ねていくイメージをお伝えしました。

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その他、話しやすいように、
・登場人物

・キーワード、キーフレーズ一覧

・時系列まとめ

なども準備して、スライドで共有しながら進めました。


わたしの役割としてはいつものように、
・作品を語る場である(6割は作品の話をしている時間)

・異なる視点、異なる解釈を自ら提案することと、参加者に提出を依頼すること

を大切に、75分間集中してファシリテーションをしました。

 


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ひらいてみて

4回ひらいている中でも、同じ話題になることがほとんどなく、毎回とても新鮮でエキサイティングな場となりました。

語り合いの中から見えてきたのは、

  • わたしたちが喪ったもの、変わらず愛しているもの、見出したもの、新たに手に入れたもの、ないことにされていたもの。
  • 今、とても複雑な中にいる自分の発見。
  • そんな世界を生きていきたいか。
  • 分断の悲しみや怒りと連帯の希望
  • 読むたびに示唆を与えてくれる、現実を直視する勇気を与えてくれる、対話を起こしてくれる本の貴重さ、普遍性。
  • オランのまちを生きる誰もがわたしであるという発見。オランの町にも、今わたしが感じているこういう思いの人や、こういう行動をとった人がいたんじゃないかと想像する。
  • 一人ひとりがまったく個別の存在であることへの感謝。

.....などなど。


わたしたちは、生活様式の変化や人生観の転換など、まだまだ大きな揺れを経験していくと思います。

でも、この物語にふれるたびに今の自分の座標を確認し、生きるヒント、歩むべき方向を手にし続けることができます。きっとできます。

 

皆さんが場を信頼してくださて、感性をひらいて惜しみなく表現してくださったことに心から感謝します。

 

ひととびセレクション》は、鑑賞対話ファシリテーター・舟之川聖子がセレクトする表現作品を真ん中に、感想を語り合う集いです。本(読み物)、映画(映像)、舞台、美術など、さまざまなジャ... powered by Peatix : More t..きょうも時間や空間、国や場所を超えて、たくさんの人間の生を旅しました。

15万部増刷され、たくさん売れているので、読んだ方はたくさんいるはずですよね。他の方はどんな感想をもったんだろう。きっと一人ひとり、まったく個別の読書体験をしているのだろうなぁと思います。この『ペスト』の物語と、みなさんと語り合う場に、わたし自身がとても救われてきたように思います。参加者の皆さんが、場を信頼し、感性をじゅうぶんに開放して、惜しみなく表現してくださったことに心から感謝いたします。

参加者さんの記事をご紹介します

受け取るものの、一人ひとりの違い。一人の中の、その時々の違い。豊か。
見せてくださって、ありがとうございます!

*許可をいただいて掲載しています。

 

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\ 今後もリクエストに応じて開催します /

Zoomにて。定員5名。平日休日問わず。候補は以下の中から。

10:00-11:15

13:00-14:15

14:00:15:15

20:00-21:15

21:00-22:15

リクエストお待ちしております!

https://seikofunanokawa.com/contact/

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参考資料

▼関連書籍 

 

 

▼100分de名著公式サイト

www.nhk.or.jp

 

▼100分de名著"ペスト" オンデマンド配信サイト

www.nhk-ondemand.jp

 

〈レポート〉レクチャー「オンラインにおける場づくりのコツ」@WOMAN SHIFT勉強会

若手女性議員のエンパワメントの場・WOMAN SHIFTの勉強会「アフターコロナの議員のあり方を考える」にて、「オンラインの場づくりのコツ」をテーマにレクチャーさせていただきました。

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当日は18名もの議員さんがご参加くださり、関心の高さを感じました。

 

オンラインの場は、施設の手配等がない分、金額を低く抑えられ、参加者にとっても距離を気にせず参加できる利点があります。

一方で、場の主催者やファシリテーターの「人としての魅力や技量」がシビアに問われます。このような状況でも、発信、ネットワーク、場づくりの経験を積んでいくことで培います。

 

 

場づくりとは、機会と関係をつくること。

どんな動機から、どんな目的をもって、誰を対象としてひらくのか。

来た人との間でどんな関係をつくりたいか、来た人にどんな状態になって帰ってもらいたいか。

一つひとつ、より明確に、より意図をもって、設計することが求められます。

 

レクチャーのあとは、「こういうときはどうすればいいか?」など、活発な質問や意見交換が絶え間なく行われ、わたしも大いに刺激を受けました。

 

▼WOMAN SHIFTさんのレポート

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社会を変えるためには、政策決定の場に女性がいなくてはならない!
でも、女性がテーブルにつこうと思える環境はどのようなものだろう?
議員を続けられるサポートってなんだろう?
......と、常々考えていたわたしにとって、今回のお声がけはとてもありがたいものでした。

仕事を通じて、自分にできる貢献があることを、とてもうれしく思います。

 

また、WOMAN SHIFTという場自体のすばらしさにも、非常に感銘を受けました。

全員が公人であるだけに、安心と安全が場の要となりますが、配慮に配慮を重ね、丁寧に場がつくられていました。

信頼と連帯のコミュニティを持ちながら、若手女性議員さんたちがそれぞれの地域で活躍されていることも、多くの方に知っていただきたいと思いました。

 

WOMAN SHIFTの皆さま、ありがとうございました!!

 

 

______________

 

『オンラインの場づくりのコツ』の講師承ります。
20分のレクチャー+40分のディスカッションなど、目的、人数に応じてカスタマイズいたします。ウェブサイトのコンタクトフォームよりご相談ください。

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場づくりのご相談承ります。オンライン・個人セッション・30分/60分

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〈お知らせ〉5/22 おうちで映画を観にいこう #3 『サーミの血』

〈おうちで映画を観にいこう〉第三弾ひらきます!

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気になってはいたけれど、観るタイミングを逸していたという方も多いのでは?

 

どこの地で生まれたか、どんな民族に生まれたか、どんな両親から生まれたか。
文化、風習、言語。
誰しもその人固有のルーツと血を持っています。
観る人の中には、自分のルーツを思い起こすかもしれません。

あるいは、サーミに人類学的な興味関心を寄せる気持ちをもって、観続けるかもしれません。
そのコミュニティから引き千切れるように脱出し、自立していく一人の少女の成長を見守る気持ちとのあいだで、葛藤するかもしれません。
観終わったときに残る風景、感情はどのようなものでしょうか。

遠い国の話のようで、日本で起こっていることでもある。
閉鎖的な(疎外された)コミュニティで生きるしんどさや、そこからの自立をはかる物語には普遍性があります。

 

映画『アナと雪の女王2』に登場するクリストフや、架空の⺠族「ノーサルドラ」のモデルになったと言われるのが、サーミ
大きな映画『アナ雪2』と小さな映画『サーミの血』の行き来もまた、おもしろいトピックでしょう。

 

ご参加お待ちしております!

 

※UPLINKのオンデマンド配信を同時再生して、鑑賞後にZoomで感想をシェアする会です。UPLINKや映画業界の応援にもつながります。

 

★詳細・申し込みはこちら★

ptix.at

2019年版・1日1冊好きな本を投稿する7日間

去年の8月ごろに、「1日1冊好きな本を投稿する7日間チャレンジ」のバトンが回ってきたときに7冊の本を投稿した。

今年も、似たようなチャレンジがSNSで流行っていて、複数の方からバトンをいただいた。

やるかどうか、やるとしたらどんなふうにやるか、今考えているところ。

 

「表紙だけを投稿して説明はなし」ということだったけれど、あれは取り組みやすくという意図だったのかしら。

はじめた人が誰だかわからなくて、ルールだけが回ってくるので、人それぞれに反応や解釈があるようだ。

 

これはじめてで楽しいな!という人もいれば、
うーん、なんだか抵抗があるな、苦手だな!もあるし、
ルール改変してやっちゃう!なども。


人間ってほんとうに一人ひとり違う。

読んでいる本も、本との出会い方も、読み方も、違うしね。

 

わたしは、どうせなら、本を読んでもらえるように、紹介していきたいなぁ......。

読書体験を欲してほしい。刺激したい。

ここに紹介した本でなくてもいいから。

 

とりあえず去年出した本たちに説明をつけてみるところからやってみます。

「AからZまで買えるサイト」のリンクを貼っているけれど、まちの本屋さんや図書館が開いていれば、ぜひそちらで購入してもらえたらうれしい。

 

 

2019年版・1日1冊好きな本を投稿する7日間

 

『歌行燈』泉鏡花岩波文庫

www.instagram.com

https://amzn.to/2W2tH7O

青空文庫でも読める。モニター、横書き、ふりがなつきでも抵抗なく読める!という方はぜひこちらで。https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/3587_19541.html

 
2013年ごろ、自分でブッククラブ(読書コミュニティ)を立ち上げようとしていたときに、出会った本。

地元の図書館で毎月1回、読書会がひらかれていて、その課題本だった。

図書館の主催ではなく、そういう活動をしている有志の会があって、図書館側は無料で部屋を貸したり、複本を集めて貸し出す手配をしてくれているようだった。

そういう運営っていいですよね。どこでもやればいいのに、と思う。

泉鏡花は、高校生の頃に一度『高野聖』を読んで夢中になった覚えがある。でも『歌行燈』は読んでいなかった。

この本は、薄いし、会話部分が多くて読めそう、読書会にも参加できそう!と思って読んだ。

読みはじめたら、夢中で一気に読んでしまった。明暗、音楽、着物の動き。一つひとつが繊細で、すべてが映像的でダイナミック!!ゾクゾクした。

ちょうどその頃、お能を見始めたばかりだったので、この小説のクライマックスで描かれている『海人』の舞の場面では、鳥肌が立った。

「そんな心動かされた体験を皆さんと話せるのか!」と、当日わくわくしながら読書会に行った。

ドアを開けてみたら、メンバーは60代〜80代ぐらいの方々ばかり15人ほど。わたしと同じぐらいの年齢の人はいなかった。

一人ひと言ずつ感想を話して一周していくスタイルだったが、「難しくて読めなかった」「とりあえず読んだけど意味がわからなかった」という人が大半で、あとは桑名に行った思い出や、泉鏡花についての知識の披露の場になっていた。

わたしだけが物語の感想を熱く語っていて、完全に浮いてしまった。

「また来てね、若い人が来るとうれしいわ」を言われたけれど、やはり足を運ぶことはできなかった。

そのときに、「そうか、年配の方だからといって、昔の物語を読みこなせるとは限らないのだ。それは学習であり習慣なのだ」と知った。

このときの経験は、わたしの場づくりにとても大きな問題意識を投げかけた。

同じ話をあと100回できるぐらい、わたしにとって重要な転換点のひとつだ。

 

 

うーん、なかなかひと言で紹介が終わらない。

これを7冊分はなかなか大変だ!という感じがしてきた。でもがんばるぞ!

 

 

『エクソフォニー 母語の外に出る旅』多和田葉子岩波文庫

www.instagram.com

https://amzn.to/2YBsPZp

そのタイトルの通り、まるで旅に連れて行ってもらうような本。

異なる言語、異なる文化。

多言語を操る人、ルーツと言語が異なる人、先天的に持っている人と後天的に身につけた人。〇〇人と、〇〇語と、〇〇国。

母語ひとつに強烈に囚われているわたしにとっては、「母語の外に連れ出された」これは、味わったことのない感覚。ものによっては、この先生きていてもぜったいに味わうことのできない感覚。

多和田葉子さんのエッセイは言語の話が多いのだけれど、一番はじめに読んだこの本が一番印象に残っている。ドイツ語の勉強をしていたときに出会った。多くの人が多和田作品に小説から入るのかもしれないが、わたしはエッセイから。

多和田さんは詩人でもあるので、どんな文章も、音読したくなる。

世界中で朗読会も頻繁にひらかれていて、二回参加したことがある。一回は上智大学、一回はゲーテ・インスティチュートのライブ配信

実際に自分で音読したものを録音して、自分で聴いてみることもある。楽しい。

 

 

 

吉野朔実は本が大好き(吉野朔実劇場ALL IN ONE)』吉野朔実本の雑誌社

www.instagram.com

https://amzn.to/35yNFdK

わたしの10代に吉野朔実さんがいてくれてほんとうによかった。

著作マンガはほとんど読んでいる。何回読んだかわからない。映画の本も持っている。

これは亡くなったあとに買った本。版元が「本の雑誌社」というところがまた良い。

亡くなったことが、いまだに悲しくてならない。

 

 

 

『李陵・山月記中島敦新潮文庫

www.instagram.com

https://amzn.to/2Sz8nF2

高校の国語の教科書で出会った『山月記』。

正確に言えば、書き出しの一文との出会い。

「こんな美しく完璧な文章があるのか!」としびれた。後にも先にもこれほどインパクトのある書き出しに出会ったことがない。

その後、読書会で『弟子』を取り上げたり昨年は中島敦展にも行った。

これからも少しずつ、いろんな方面から出会っていくだろう作家の一人。

 

 

 

『十階 短歌日記2007』東直子ふらんす堂

www.instagram.com

https://amzn.to/2WnZ4bY

近所の書店には短歌と俳句と詩だけの棚があって、わたしが知っている書店のどこよりも充実している。そこでサイン入りのこれを買った。

東直子さんの短歌が好きだ。

なにげない言葉も、詩人が使うとこんなにも生き生きとする。

クールとユーモアと優しさのどれでもない、でも確かに自分の中にあるこの感覚。

何か足りなかったんだよな、と思ったときにこの詩集をひらくと、ああ、これこれ!ということが多い。

 

 

 

『夜明けの図書館』埜納タオ(ジュールコミックス)1〜5(続巻)

www.instagram.com

https://amzn.to/2W4SVCt

こちらに記事を買いたので割愛。

https://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2020/03/05/175339

 

 

 

『月の輪船』長野まゆみ鳩山郁子(作品社)

www.instagram.com

https://amzn.to/2YGFM4a

絶版になっているかもしれない。

これも10代の頃に夢中になっていた、長野まゆみさんと鳩山郁子さんの黄金コンビ。

大切すぎて、そうそう感想は語れない。好きな人となら話せるかもしれない。

10代の頃の感性でたっぷりと受け取っていた美がぎゅっと詰まっている。

今後何度引っ越すことがあっても絶対に手放さない一冊。(正確に言うと、シリーズものなので全4冊)

 

 

全部書いてみるとけっこう時間がかかった。

でも今年は一箱古本市にも出られなかったから、こんなふうに本を愛でたり、本を通じて人と交流するのもよいかもな。

 

2020年版も投稿してみます。

テーマや軸、どうしようかなぁ。

単に「好きな本」「おもしろかった本」ならよく紹介はしているので、何か決めたい、という気持ちがあります。

 

展覧会のようにしてみたい。

 

まずはお散歩して、初夏の風に吹かれてみます。


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《お知らせ》5/8 おうちで映画を観にいこう #2 『ラ・チャナ』

〈おうちで映画を観にいこう〉第二弾ひらきます!

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金曜日の夜、一緒に映画を観にいきませんか?
といっても、映画館には行けないから、おうちで。

1. Zoomで待ち合わせしてこんばんは
2. 映画を個別に観て(UPLINKのオンデマンド配信)
3. 再びZoomに集って感想を語る。
という流れ。

前回は、『ホドロフスキーのDUNE』を観にいきました。

映画を観てすぐに語るって、それはそれでやっぱりなんともいえない熱があります。

 

 

映画『ラ・チャナ』は、一人のフラメンコダンサーの人生を追ったドキュメンタリー

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ラ・チャナの語りは詩人の言葉。
なぜ踊るのか?
なぜ生きるのか?
なぜわたしなのか?

モニターを超えて迫りくる肉体の存在感が、見るものの魂を震わせます。
一人のアーティストの生き様にあなたは何を見ますか?

異なる文化を知ることができるのも、映画のおかげ。
映画を語る喜びを分かち合いましょう!

 

 

ミニシアター応援企画

UPLINKのオンデマンド配信システムから作品をピックアップすることで、UPLINKも応援します!(配信は個々にお申し込み、個々にお支払いとなります)

アップリンク作品 60本見放題 
https://vimeo.com/ondemand/uplink60/

 

 

ご参加お待ちしております!お申し込みはPeatixまで!

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演劇の力

先日、朗読のワークショップに出た。

朗読というか、朗読劇というか、演劇というか......なんだか不思議な時間だった。

演劇を学びはじめた友人がつないでくれた場で、先生は俳優であり演出家であり、とある演劇手法の講師の方。

たぶんふつうにレッスンを受けたらもっとお高いのだと思うけれど、はじめてのオンラインでの試みということで、たいへん気軽な価格で参加することができた。

 

わたしは演劇を観るのも好きだけど、演るのも好きだ。

小学生のときは人形劇クラブや演劇クラブに入って、全校生徒の前で発表したり、友達と台本を書いて、演じた音をカセットテープに録って楽しんでいた。

10年ぐらい前にふと思い立ってインプロのワークショップに出たらとても楽しくて、その後プレイバックシアターや、そこから派生したワークショップにあれこれ出ていたこともある。

 

考えてみれば、ポッドキャストも、演劇的な要素がある。

役や設定がある中で、創作していくことが楽しいのかもしれない。

 

演劇という形式でしか要求されない「勇気」みたいなものがある。

普段やっていないとちょっと怖いし恥ずかしいけれど、その勇気を持って超えていくと、事態が展開していく。そういう経験をたびたびしている。

 

今回わたしは、コロナ禍がもたらす膠着状態からの、精神の脱出を計りたくて参加した。

 

 

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他の参加者さんの演劇経験は様々で、プロとして舞台に立っている方もいれば、ほとんど経験がない方まで。

ウォーミングアップにたっぷり時間をかけて、身体の動かし方、表情の作り方、人物の造形の仕方、頭にあるイメージを身体に表出させるやり方など、先生が小さくステップをつけてくれるので、少しずつ演劇の世界に入っていける。

 

「やってみてどうか」「みていてどうか」の感想のやり取りをしながら進んでいくのも楽しい。

 
 

当日のメインは、「星の王子様」のXIIのパート。星の王子様が呑み助の住んでいる星に行って、少しやり取りをするところ。単行本にしても1ページちょっとぐらいの短い部分。

特定のセリフを口に出してみて、表情や意図を考えてみる。

「このシーンや言葉をわたしはこんなふうに解釈をした」と持ち寄り、見せ合い、刺激を与え合うやりとりは、とても読書会っぽい。

 

 

わたしは、呑み助の役をやらせてもらった。

この経験がまたちょっと今までにない感じだった。

星の王子様の関わりによって自分の中の呑み助に変化が起きる感じ。

また、わたしが造形して演じる呑み助を、鑑賞者がさらに豊かに造形してくれる感じ。

受け取ったものを言葉にして伝えてくれたときに、わたしの中の呑み助が喜んだり、感謝したりしている。

「こんなにダメな自分だけれど、チャーミングな部分をちゃんとわかってくれている人もいることがうれしい」という気持ちが自然にわいてきた。

これは驚いた。

 

 

また、ここにいない他者へも触手が伸びていくような感覚があった。

なぜ酒を飲むのか、なにを忘れたいのか、なにがはずかしいのか。

思考と想像を深めていくうちに、自分が日常で相入れないと思っている人たちへの、共感や理解したいという気持ちが湧いてくる。

お酒を飲むことに限らない、その人にしかわからない、抱えている何かへアクセスしようとする試み。想像の範囲だから安全だし、自由。

でもなりきってみると、自分のままでは行けなかったところまでたどり着ける。発見がある。

関わる他者も演劇の中だから安全。

 

演劇すごい!

 

 

他の参加者の方々の何気ないコメントに、ハッとさせられることばかりだった。

今起こっていることについて話しているのだけれど、普遍性も帯びていて、今日常で取り組んでいることがチラチラと刺激された。

 

 

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終わってみて、思ったのは3つ。

・普段、演劇としてはやっていないけれど、別のことで積んできたものをフル活用したという感じがある。爽快感。

・優劣の評価がない場、応援や挑戦を共有できる安心な場での表現は、自分でも思わぬものが出る。思わぬものを出すことが歓迎される。

・未経験のことでも、ステップを踏めば、できていく。人間の可能性は大きい。

 

 

今後も、よきタイミングに演劇に触れていたい。

場をひらく側としても、「演劇」という選択肢を常に持っておきたい。

 

よい体験をありがとうございました!

 

 

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▼前に書いた記事。これもたぶん演劇。

note.com


▼演劇について話した回。

note.com

 

▼今回教わった先生。

note.com

 

 

 
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〈レポート〉ファシリのお仕事「スペイン語学習について話そう!」

スペイン語学習について話そう!

という会のファシリテーションのお仕事をさせていただきました。

主催は、日本とスペイン語圏の架け橋として語学スクールや情報発信の活動をしておられる、イスパニカさん。代表の方がわたしの友人というご縁です。

わたしはスペイン語を学んではいませんが、語学を学ぶ経験はありますので、そういった当事者性も生かしながら、場を組み立てました。

 

お知らせのページ。

www.hispanica.org

 

告知していただいたところ、あっという間に8席が満席となりました。ありがたい!

 

事前のアンケート

スペイン語の学習歴は1年未満から10年以上まで様々。

場に寄せるみなさんの関心

スペイン語を学んでいる人ってどんな人なんだろう?

スペイン語圏のどんな文化に興味を持っているんだろう?
・今、人に会えない、スクールに通えない中で、どうやって勉強しているんだろう?

といったところ。


スペイン語という切り口でのお互いのことがわかった上で、
参加者同士の情報交換もしながら、
やりとりしながら世界が広がるような、
この場ならではの楽しみが生まれるような、
そんな進行を探りました。

 

www.instagram.com

 

このような流れで進めました。

・イスパニカの紹介

ファシリテーター(わたし)の紹介

・チェックイン(お名前、学習歴、今日楽しみにしていること)

・ひとつめの質問「みんなどうやって勉強していますか?」

・フリートーク

・ふたつめの質問「スペイン・スペイン語にまつわるものを見せてください!」

・フリートーク

・チェックアウト(きょうの感想)

(計60分)

 

「みんなどうやって勉強していますか?」
どなたも工夫して楽しみながらスペイン語の学習を続けておられました。「へえ〜そんなやり方が!」という刺激をお互いに受けていらっしゃるようでした。


「スペイン・スペイン語にまつわるもの、見せてください!」

画面に一斉に出していただきました。スペイン語を学びはじめるきっかけになったものなど、思い入れのある物が画面いっぱいに広がる景色はすてきでした。

 

その後の流れのフリートークでは
スペイン語圏の音楽、どんなの聴いてます?」の質問に、チャットに次々と書き込んでくださって、いろんなミュージシャンの名前が上がりました。
ここの盛り上がりがすごかったです!

 

●チェックアウトでは、

・初学者だけれど、長く学んでいる人の話を聴いて先の夢が広がった

・他の方の学び方や楽しみ方に刺激を受けて、もっとがんばりたくなった

・あらためてスペイン語圏の文化の多様さと豊かさを知った

・パデルやミートアップなど、いろんな場があるのを知った。外出できるようになったらいろいろやりたい

・イスパニカさんで企画してほしいことができた

・オンラインでいろんな場所の人とつながれてうれしい

・Zoomをはじめて使ういい機会になった

などの感想をいただきました。

 

 

ファシリテーターとしてのふりかえり

  • 60分とは思えない、想像していたよりずっとたくさんの量と濃さのコミュニケーションがありました。スペイン語をテーマの場の中で、学習者同士がコミュニケーションをとる、という目的は果たせたのではないかと思います。
  • オンラインの会話で集中できるのは、せいぜい60分〜75分程度。これを目安に最近は場を設計しています。
  • もしも話につまったときのためにと、場で出す質問を10個ぐらい考えたり、スペインにまつわるクイズなども用意していました。実際進めてみると、使う必要もなく、わいわいと楽しい場になりました。
  • Zoomの無料イベントでも、やはり会社や団体の主催であると安心して参加できるようでした。(逆に言うと、別の場の話だけれど、今までわたしの名前と過去の実績だけで参加してくださっている方の勇気には、感謝しかないですね......)
  • 参加者同士が交流する自由なおしゃべりの場にもファシリテーションが必要とのことでご依頼いただけたことがありがたかったです。
    ・みんなが楽しめる話題を出す(誰でも一言なにか言える)
    ・一人ひとりの話を聴いたり、話と話をつなげる
    ・話したそうにしている人に気づく
    ・一人しか知らないことを全体がわかるように共有する
    などを、誰か一人が目的を持って、その時間帯に一貫して引き受けることで、場に一体感が生まれ、参加者の居心地はぐっとよくなります。
  • 特にオンラインでの集いは、固定された画面の中で、間合いをはかる発言スタイルで、独特のコミュニケーションが求められるため、ファシリテーターの役割が非常に重要です。
  • 今回の主催の方も、ファシリテーションはできる方なのですが、あえて外部の人間をファシリテーターとして入れることによって、場の可能性を引き出す試みをされていました。その試みが次へとつながることを祈っています^^

オンラインの場にも、ぜひファシリテーターをご利用いただけたらと思います。

ご依頼はページ一番下のウェブサイトまでお気軽にどうぞ!

 

 

イスパニカさんについて

ツイッター

 

▼イスパニカさんの次回企画。スペイン語を学んでいなくてもOKとのこと。映画好きの方、ぜひ!

20200505almodovar.peatix.com

 

 

ファシリテーターのご依頼はこちらへ

seikofunanokawa.com