ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

本『タゴール・ソングス』読書記録

佐々木美佳著『タゴール・ソングス』を読んだ記録。 映画『タゴール・ソングス』は、公開されてかなり早いうちに観た。 2020年の6月、ちょうど今頃だ。 梅雨独特の気温はそこまで高くないが湿気があって、ベタベタと空気が肌にまとわりつく気候が続く。やた…

本『同志少女よ、敵よ撃て』読書記録

小説『同志少女よ、敵を撃て』を読んだ記録。 身内で読書会をすることになったので読んだ。ちょうどその時期に『高橋源一郎の飛ぶ教室』でもこの作品が取り上げられていたので、聴いて読書および読書会の参考にした。書評と逢坂さんの出演とで2回あり、「飛…

映画『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』『夜と霧』鑑賞記録

早稲田松竹で『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』『夜と霧』を観た記録。 セルゲイ・ロズニツァ監督の群衆三部作に加え、アラン・レネ監督の『夜と霧』の特別上映がセットになっている。 wasedashochiku.co.jp youtu.be 2020年11月にイメージフォーラ…

本『アイスプラネット』読書記録

子が、国語の教科書におもしろい小説が載ってるよと教えてくれた。 椎名誠さんの『アイスプラネット』。 学校の宿題をきっかけに、子と感想をいろいろ話したのが楽しかった。 宿題のテーマは、「この手紙でぐうちゃんがゆうくんに伝えたかったことはなんでし…

本『プリズン・サークル』読書記録

本『プリズン・サークル』を読んだ記録。 www.iwanami.co.jp 『プリズン・サークル』は、この本でようやく作品として完成したのかもしれない。 映画としては描けなかった経緯、編集に載らなかった数々のエピソード、監督が主語になるからこそ見えてくる現場…

わたくし、つまりNobody賞『海をあげる』『まとまらない言葉を生きる』読書記録

わたくしつまりNobody賞、受賞の2冊を読んだ記録。 『海をあげる』上間陽子/著(筑摩書房, 2020年) 『まとまらない言葉を生きる』荒井裕樹/著(柏書房, 2021年) 今を生きている私の尊厳を守る。 抗う。 無遠慮に踏み越えようとする力に対して、「ここに…

本『他者の苦痛へのまなざし』読書記録

『他者の苦痛へのまなざし』を読んだ記録。 ある日このツイートが流れてきた。 ここのところの写真や映像をどう受け止めたらよいかわからない人は、気持ちと考えを落ち着ける役に立つかもしれない。スーザン・ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』(北條文緒…

本『坊ちゃんの時代』1〜3部 読書記録

世田谷文学館で谷口ジロー展を観てからようやく読む気になって、少しずつ読んだ。5部作のうち、第3部まで読んだところで一旦記録。 文豪として名を後世に残した明治期の男たちの物語。苦悩の物語と言っていいと私は思う。 原作者の関川夏央によれば、始まり…

本『二十歳のころ〈1〉1937‐1958―立花ゼミ「調べて書く」共同製作』

立花隆著『二十歳のころ』。2巻。〈1〉1937‐1958 〈2〉1960‐2001 www.hanmoto.com www.hanmoto.com 2021年4月の死去の報せを見て、一番影響を受けた著作は何かと考えたら、やはりこれだった。 きっかけは、2007年頃に通っていた文章演習の講座で強くおすすめ…

本『自分で始めた人たち』読書記録

『自分で始めた人たち 社会を変える新しい民主主義』宇野重規/著 を読んだ記録。 本書の刊行記念イベントで『時給はいつも最低賃金〜』の和田靜香さんがゲスト登壇されていて知った。 宇野先生の「民主主義とは何か?」を何度も何度も読んで、ずっと民主主…

【書籍紹介】ジェンダー表現に迷ったらこの3冊

ジェンダー表現に迷ったらとにかくこの3冊です! 『お客様が集まる!士業のための文章術』小田順子著(2013, 株式会社翔泳社) 付録「士業として使わないほうがよい言葉の言い換え集」の「4.差別語・不快語」が、「じゃあどう言い換えればいいんだろう?」「…

映画『主戦場』鑑賞記録

2022年4月、映画『主戦場』を観た記録。 www.shusenjo.jp 2019年4月公開時は観る気が起きなかった。 観たら多大なエネルギーを消費しそうだし、ダメージが大きくて、観たあとにリカバリー期間が必要そうな気がしたのだ。歴史修正主義者(……主義?)による、…

本『コロナ時代の選挙漫遊記』読書記録

畠山理仁著『コロナ時代の選挙漫遊記』を読んだ記録。 「コロナ時代の〜」と冠されていることと、もう終わった選挙の話が多いので、通り過ぎたことの話は関心を持って聞けない読めないんじゃないかとか、ハイテンションなオタク話が鼻をついてうんざりするん…

本『加害者家族を支援する 支援の網の目からこぼれる人々』読書記録

『加害者家族を支援する 支援の網の目からこぼれる人々』を読んだ記録。 www.iwanami.co.jp どれも自分がもし加害者になったら、加害者の、家族になったら起こるだろうことが書いてあった。 経済的負担、仕事への影響、裁判への対応、更生の支え手としての重…

本『毛布 あなたをくるんでくれるもの』読書記録

4月上旬に読んだ安達茉莉子さん の新刊『毛布』。 今回もひるねこBOOKSさんで購入。安達さんが初めて個展を開いた書店で、私もそのときに訪れたので、思い入れがある。 発刊記念ペーパーをいただいた。まずはこれから読む。 「すべてを袋に入れるのよ」 安達…

展示「読み継がれる鷗外」@文京区立森鷗外記念館 鑑賞記録

森鷗外記念館で特別展「読み継がれる鷗外」を観た記録。 moriogai-kinenkan.jp 2022年は、鷗外生誕160年・没後100年・開館10年記念というスペシャルイヤー! ということで、大変気合が入っている森鷗外記念館。「鷗外百年の森へ」と題し、様々な企画が目白押…

本『クララとお日さま』読書記録

カズオ・イシグロの『クララとお日さま』を読んだ記録。 ※重要な内容や結末に深く触れています。未読の方はご注意ください。 読んだ後に残る、圧倒的な美となんとも言葉にし難い寂寞感。 カズオ・イシグロの主人公は皆、宿命を受け入れて読者に淡々と別れを…

本『当事者は嘘をつく』読書記録

『当事者は嘘をつく』小松原織香/著を読んだ記録。 タイトルでギョッとなる。が、もちろん「当事者」に対して喧嘩を売っているわけではない。 カバーを見ればすぐわかる。 これこそ私が待っていた一冊である──信田さよ子 『私の話を信じてほしい』 哲学研究…

『漫画 サピエンス全史 人類の誕生編』読書記録

ユヴァル・ノア・ハラリ著、『漫画 サピエンス全史 人類の誕生編』を読んだ記録。 単行本が2016年に出たときに、友達が、「もーめちゃめちゃおもしろいから絶対読んで!」と言っていた『サピエンス全史』。6年越しでようやく意味がわかった。 なーるーほーど…

本『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』読書記録

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ記録。 これが出版されたのが2019年とは思えないほど、ずいぶん前に感じられる。 売れに売れて、表紙がイエローで目立つこともあり、どこでも平積みで、私の周りでも多くの人が感想を口々に述べてい…

本『赤い魚の夫婦』読書記録

メキシコ出身の作家、グアダルーペ・ネッテルの短編集『赤い魚の夫婦』を読んだ記録。 どの物語も、もともと危うく保たれていた人間関係が、動物や虫や菌などの生き物が突然第三者的に入ってくることで、決定的に破綻する。その過程が読んでいてハラハラする…

展示『生誕110年 香月泰男展』@練馬区立美術館

練馬区立美術館で香月泰男展を観てきた記録。 www.neribun.or.jp 3月5日 前期の展示が明日までなので、慌てて行ってきた。ずっと観たかったシベリア・シリーズ。シベリア抑留の記憶から描かれたもの。すごかった。後期も来て、シリーズ全て観ようと思う。ま…

展示『描くひと 谷口ジロー』@世田谷文学館 鑑賞記録

世田谷文学館で谷口ジロー展を観た記録。 www.setabun.or.jp 私にとっては、はじめましての谷口ジロー。一作も読んだことがなかった。ここ数年、鷗外、漱石、一葉のことを調べていて、私はなぜ辿り着いてなかったんでしょうか。 代表作の一つに、関川夏央さ…

〈お知らせ〉「積読本をひらく読書会のレシピ」リリースしました

舟之川が2018年にひらいていた「積読本をひらく読書会」のレシピを小さな印刷物にしました。A3の半分を蛇腹折りにして8面あります。内容 ・積読本をひらく読書会とは・進め方・持ち物・こんな場所でこんな人と・この読書会のおもしろいところ お求めはこちら…

〈お知らせ〉4/23(土)「10才から始める社会のつくりかた」@本屋ロカンタン(西荻窪)

●書店イベントのお知らせ 4/23(土)19:00-20:30 「10才から始める社会のつくりかた」本屋ロカンタン 西荻窪の本屋ロカンタンさんにて、共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』の朗読イベントを行います。 店主の萩野さんと、会場来店および…

〈お知らせ〉4/2(土)21:00〜Youtubeライブ配信「この時代を生きる人間同士の学び合いとは 〜ラーンネット・グローバルスクール5,6年生との年間授業から見えてきたもの」

4月2日(土)21:00-22:30Youtubeライブ配信(事前申込み制) ラーンネット・グローバルスクールの青木芳恵さんをお迎えし、5, 6年生との授業の中で得た学びについて、きみトリ著者3人と対談します。//////////////////////////この時代を生きる人間同士の学…

〈レポート〉10代とトリセツをつくる授業最終回「観て話す」

昨年度、『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』の筆者3人で、神戸のラーンネット・グローバルスクールの5, 6 年生の授業に取り組んできました。 最終回のレポートを書きました。 note.com 3学期のテーマは、「観て話すのトリセツ〜作品を通じて人…

映画『二重のまち/交代地のうたを編む』鑑賞記録

映画『二重のまち/交代地のうたを編む』@シネマ・チュプキ・タバタ 鑑賞記録。 www.kotaichi.com 最終日にすべりこみ。震災テーマの作品は、どうしてもしんどくて、3月11日が過ぎてからでないと近づけない。 (3月11日当日は、家に一人でいたくなくて、岩波…

展示「大乙嫁語り展」鑑賞記録

漫画『乙嫁語り』の原画展を観た記録。 tokorozawa-sakuratown.com ところざわサクラタウンは、"あの" 角川武蔵野ミュージアムの隣にある。 近づいたらめっちゃ岩だった。。 View this post on Instagram A post shared by 舟之川聖子|Seiko Funanokawa (@s…

〈レポート〉小学校6学年で「仕事のトリセツ」の授業を実施しました

2月のお仕事の一つです。 私自身、非常に学びが多く、この先の仕事や人生まで照らされていくような、示唆的な場でした。10歳前後の人たちとの関わりは、希望です。 それから、どこの学校の中にもきっといるであろう、学校の中と外部人材とをつなぎたい、コー…