「読書会をひらいています」と言うと、
「読書会って何?どんなことをするの?」とよく聞かれます。
わたしの独断的解釈では、「読書体験を共有または交換する場」です。
読書会には唯一の型があるわけではありません。誤解されがちなのですが...。
その場をひらく人が、「誰と何をしたいか」によってプログラムが違ってくるので、
同じように「読書会」と表現していても、中身は全然違うものになります。
わたしがこれまでいろんな読書会に参加してみた印象としては、日本で行なわれている読書会は、大きく2種類に分かれるように思います。
①参加者がおすすめの本を紹介する
その会(回)で設定されたテーマから連想する本を参加者がそれぞれ持ち寄り、なぜその本を選んだか、その本のどこが印象に残ったかなどを一人ずつ紹介していく読書会です。
発表者以外は、紹介した内容に対して感想を述べたり、質問をしたりします。
テーマは会の特徴によりますが、例えば「この一年で一番おもしろかった本」、「夏といえば?」は比較的オープンでライトなテーマを設定するもの。
「マイベストのミステリー小説」とジャンルを特定したり、「幸せとは」と哲学的で少し考えさせる問いかけをしたりして、クローズドなテーマ、重めのテーマを設定するなど様々です。
あるいは単に「おすすめの本を持ち寄る」という読書会、テーマはずっと同じ読書会、毎回テーマを変える読書会など、様々です。
このタイプの読書会は、本をきっかけにして人が集まり、話すことで、自分の知らなかった本(しかも複数)の存在を知ったり、本に関心がある人との交流やつながりが生まれるという効果があるように思います。自分についてベラベラ話すことに抵抗がある人も、本にまつわることで、人となりが自然ににじみ出るような話なら安心でしょう。
①のカテゴリの中には
・ブクブク交換
なども含まれます。
ビブリオバトルは、新しい本との出会いを楽しむ要素もありますが、プレゼン力を発揮して競争したり、評価することをメインに楽しむイベントという印象があります。
ブクブク交換は、いろいろな本に出会えるお宝掘り出し物感があります。また、自分にとっては不要な本が、ほかの誰かにとってはお宝になる可能性があることも楽しみのひとつです。人とのつながりに関しては比較的ゆるやかな印象があります。
②課題本を読み、その感想を話し合う
その回に指定された課題本を事前に(または当日その場で)読み、感想を話し合う読書会です。事前読書の場合も、完読がマストの読書会もあれば、未読でも参加OKとしている読書会もあります。
②の中にもいろんな種類や型があります。
・ビジネス読書会
ビジネス本や自己啓発本などを取り上げ、自分の人生や仕事を振り返り、どう活かすかを議論する、ビジネスパーソンに関心の高い場です。異業種交流会の趣があり、朝活などでよく行われているようです。
・勉強会
テーマとなっている課題や目標についてディスカッションをする場です。この場合の本は、そのテーマについて考えるための刺激物の役割を果たします。その分野の専門家・識者からの20分〜30分程度の解説や意見などをキーノートスピーチとしてつけたりします。
・輪読
一冊の本を複数人で分担して読み進め、各パートにどのようなことが書かれていたかを担当の人が発表し、本が伝えようとしているテーマについてディスカッションする場です。輪読の良いところは、難解な本でも分けて読むため、負担が少ない上に、様々な人の視点が入る読書が疑似体験できる点です。大学のゼミなどで昔から取り入れられている手法です。
・リテラチャーサークル
1990年代のアメリカで生まれた手法で、同じ本について複数人がそれぞれの役割をもちながら読み進め、最後に自分の役割からの感想を発表します。役割には、「思い出し屋」「質問屋」「言葉屋」「段落屋」「イラスト屋」などがあり、全員がファシリテーターとして場を活性化したり、様々な視点を提示する役割を果たしています。
その他、読み聞かせや朗読をする読書会もあります。
またやり方として、Skypeを使えば、なかなか時間の合わない人とも、遠方の人とも(国も超えて!)読書会を楽しむことができます。
8分間読書会も取り入れてみたいユニークな手法です。
読書会とひとくちに言っても、このように豊富なバリエーションをもっています。また、読書会の中身の進め方も、場をひらく人、ファシリテーターによって様々なので、ここに挙げたものもごく一部だと考えていただくとよいかと思います。
わたしが好きな読書会
わたしは、課題本を読んで感想を話すことをメインにした読書会をしています。
おすすめ本紹介は自己紹介の一部として行い、それをメインとした読書会はあまりしません。
わたしが読書会で目指しているのは、いろいろな本に出会う楽しみを広げることよりも、同じ本を読んで、それぞれ固有の読書体験にふれることです。
同じ本を読んで、自分が感じたことを言葉にしてみたい。
他の人が何を感じたのかを知りたい。
一人ひとりがうつしだした世界の違いに、人間同士の分かり合えなさと、重なり合う部分を感じたいからです(それもだいたい錯覚であるとわかった前提で)。
本を通じて人と出会うおもしろさは、同じ本を読むという共通の能動的な体験をしてこそ得られる。
つながりをつくることが目的の場ならなおさら、見ているだけ、聞いているだけでは共有できないのではないか、というのがわたしの持論です。
読むという能動的な行為を要求する本ならではのつながり方だと常々感じています。
また、わたしが一番好きなのは、短編小説などの短いテキストをその場で読んで感想を話し合う読書会です。これは学校の授業などではよく取り入れられている手法なのですが、大人向けの一般的な読書会ではあまり聞いたことがありません。
わたしが以前主宰していたブッククラブでも、短編小説をその場で読む手法をとっていました。
・事前に読んでくる本は原則ない(来て、その場で読む)。
・その日読む本は予告しない。
を鉄則としていました。
事前に読んでくる本がないのは、「課題本を読んでないから来れなかった」というのが嫌だったから。「来て、その場で読む」のは、スピードに自信がない方もいるかもしれないけど、短編が多いし、皆さんが読み終わるまでゆったりと待ちます。
また来てその場で読んですぐに感想を話すことで、その場でわきあがった生の感情について語りたいと思っていました。
時間が経ってから出てくるものもおもしろいのですが、ここでは一旦、話す言語を手放して、自分の中で自由にイメージを膨らませ、その後、再び言語に着地させる...その過程を共有したいと考えました。
また、その日読む本を予告しないのは、あくまでも「ブッククラブ」なので、「クラブに来てほしい」、その回のタイトルによって来るか来ないかを決めてほしくないという思いからでした。
わたしも今はこのやり方を進めていますが、これからもおもしろいと思った要素は取り入れ、あるいは他のプログラムと組み合わせるなどして、もっともっとエキサイティングな読書会をつくっていきたいと思います。