ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

リア王を観た

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先月と同じ時期に熱が出た。原因はだいたいわかっているので、根本治療が必要なんだろうと思う。この暑い時期に熱が出るのは、喪失の濃度が上がるようで本当にキツい。

 

さて、熱が出た日の昼間には友人と「リア王」を観ていた。やはりシェイクスピアはタイミングが合うごとにもっともっと観たいと思う。演出によって、演じ手によって、時期によって感じることが異なる。

今回は、なにやら身につまされる感情ばかりで、他人事じゃなさをひしひしと感じていたが、突きつけられて苦しいというよりも、「在る」ということに救いを覚えた。家族、親族間で、殺めるまではいかなくとも、愛憎入り乱れる感情をもつこと、非友好的な関係になることはあって然る。血縁というものの厄介さに、いつの時代も人間は苦しめられている。だからこうして必要とされて、400年以上も上演されているのだろう。

リア王の登場人物は、誰もが脆弱で浅はかで悪の一面を持つ。末娘のコーディリアさえも。古来から、信、義、忠、情、愛の物語は他にもたくさん語られてきたけれど、有限の人間と絶対的な約束をすること、しかも言葉にして誓うことの危うさや儚さ、甘言に溺れる愚かさが、殊に沁みた。裏切りがあり得るとわかっていても、そうしなければ生きてゆけない人間の哀しさがある。

黒澤明「乱」のシーンが何度もオーバーラップした。高校生のときに映画を観て、これはリア王も何かの折に観ねばと思い続けてようやく叶った形。

配布されたチラシ群の中にあった、佐々木蔵之介主演の「リチャード3世」も気になる。ちょうど先日のラジオの収録のためにスクラップブックを見返していて、惑星ピスタチオのチケットを発見したりもしたので、これもまたタイミングかと。