読書会の作り方をテーマに何本か記事を書いてきました。
きょうは選書、本の選び方のお話です。
いろいろな型がある読書会の中でも、
- 「事前読書型」課題本が設定されていて、事前に読書してきて、当日感想を話す
- 「当日その場で読む型」当日その場で読んで感想を話す(そのままか...)
タイプの読書会を想定してます。
わたしがどのような基準で選書しているかというだけの話なので、もちろんこれが正解というものではありません。わたしも忘れていることがたくさんあると思いますが、今思いつく範囲でメモしておきます。
本を探索する前に姿勢として確認するのが、
今の自分に、本を通じてみんなと旅をしたい気持ちがあるか
これがないとわたしはうまく本が選べません。自分(たち)の好き嫌いや興味の有無「だけ」で決まっていないかを照らすためにも大切にしています。
次に具体的なチェック項目をみていきます。
- 自分がその本に本当に興味関心があるか(当たり前っぽいけれども、あらためて問うてみるとそうでもなかったかも、ということもあります)
- 参加者にとって入手が容易か(高価である、絶版で入手不可の場合は朗読するなどもあり)
- 開催日までに読了できそうか(長編にチャレンジするときは特に十分な期間が設定されているかは重要)
- 場の趣旨に合っているか
- 場で分かち合えるものがあるか
- 参加者一人ひとりが何か一言話せそうか(会の趣旨にもよりますが、わかる人にしかわからないのは避ける。ただ、専門家がいる場合でも、ルールの敷き方やファシリテーションによって独壇場にしないことは可能)
- 多様な視点からの、多様な感想が生まれそうか(「力のある本」という言い方をよくします。楽しかったー怖かったーという単一の感情にのみ終始しそうなものは避ける)
- 読後感が複雑か(自分の中で消化しきれないときに、人と感想を交わそうとする意欲が生まれる)
- みんなが関心が持てそうなテーマか(自分では選ばないけれども、実は気になっていた、機会を逸していた、時期的・時代的に旬...などの反応が得られそうか)
- 明らかに傷つく人が出なそうか(本自体では傷つかないかもしれなくても、感想を話す場で傷つく人が出そうなテーマや内容ではないか。セクシャリティ、自死、性暴力、貧困、不妊治療、障害、災害、依存症、精神病、難病などなど、センシティブなテーマをダイレクトに扱っている場合は、あえてその場で取り上げる理由を考える。その本で話すと決めたら、話し方のルールをいつもより強めに敷く)※これらのテーマを考えたい場で選書する場合はこの基準は当たりません。
- 読書会が終わったときに笑顔が見られそうか(単純に暗い、重いテーマかどうかではなく、「来てよかった、これについて話せてよかった」と言ってもらえそうか、そういう場になりそうかということです)
- 予定している時間でおさまるか(あるいは、この本を取り上げることを優先した場合の日時の調整は可能か)
すでに本が決まっていて、「これを元にみんなで話したい!」という気持ちがわくというほうもよくあります。そのときもやはりその本が上記のチェック項目に当てはまっているかをザッと一通り確認します。
ついでに書いておくと、
- 選んだ本は読書会の前日までには再読します。初回とは違い、読書会で取り上げるという前提で読み、読みこぼしているところがなかったかなるべく丁寧に読みます。自分が気になる箇所に付箋を貼り、通読後にザクっとした感想を7.5cm大の付箋に記しておきます。
- どんな展開が起こり得るか、何パターンか想定します。そのときにどのようなファシリテーションができそうかもイメージします。
- 参加者の顔ぶれを思い浮かべ、知っている人ならその人のこれまでの場での様子を思い浮かべつつ、同時にそれに対する固定イメージを排除し、はじめて出会うように当日場にいるイメージを持ちます。
- 複数のプログラムを入れる場合は、時間配分をもう一度見直し、無理がないか再検討します。
本の感想を話すって、人のすごくナイーブなところに触れるものなので、慎重に配慮できるところは全部します。場所も重要です。ロケーションの話はまた別の機会に。
こうして準備してもしても、自分も含め、予想を超えたものを、人は表現物から受け取り場の相互作用で反応を出すので、あとはその場でファシリテートする自分を信じて託す、という感じです。
何かの参考になればうれしいです。