ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

リサイクル本コーナーで掘り出し物

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公立図書館に行くと、「きょうかえってきた本」と同じぐらい、「リサイクル本」のブックトラックを物色するのが好きだ。たまに、ここでしか会えへんかったわ〜というような本が見つかったりする。

 

先日、リサイクル本の山の中から見つけたこの本、「めぐろシティカレッジ叢書8 川からひろがる世界」。

川のほとりで生まれ育ったわたし、川好きとしては、ぐっとくるタイトル、表紙だ。

 

川に支えられた日本の物資流動、河川の地形学入門、日本の灌漑システムと稲作、川と電気事業、川の癒しと地域の観光(ドイツを例として)、セーヌの流れに育まれたパリ(世界都市の文化はいかに生まれてきたか)、世界文明の礎をつくったティグリス川とユーフラテス川...などなど、川をテーマに、小学校の学習科目で言えば、「社会」にあたるような話がいろんな著者によって書かれていて、はじめて知ることも多くて楽しい。知っていたつもりのことも、その隣(影響しあうもの)やその奥(背景や要因)がわかって、へー!と思ったり、じゃああれももしかして関係あるのかも?と自分の体系とつなぎたい欲求が出てくるとわくわくする。

 

内容としては、論文と社会の副読本の間のような難易度で、でも「川のことでこれは言いたい!」という熱が持ち寄られて編んであるところが、専門家同士がつくっているZINEのような楽しさや賑わいも感じる。

 

そう思ってあとがきを読んでみると、この編者の方自身が、大学在学中に受けた「川の流れ」という講義が忘れがたく、それが叢書の構想の土台にあった、というエピソードが出てくる。

“この講義はオムニバス形式で行われ、「川の流れ」が文系や理系の切り口に限らず、さまざまな先生によって毎回異なる切り口で説明された。すべての講義内容を記憶しているわけではないが、地理学では河川地形の発達史や水文学水収支論が、歴史学では水運や河岸の経済史が、哲学では川向こうや彼岸の思想が、物理学では流体力学が講義され、それら以外にも民俗学や生物学、あるいは政治学社会学などからの説明があり、どの授業も興味深いものであった。” (おわりに/菊地俊夫)

 

...そ、その講義ものすごくおもしろそう......。わたしも受けたい!

 

そして偶然だけれど、ちょうどことほぎ研究室で、7月からまちの教室KLASSで講座「ことほぎクッキングレポート」をひらくことになり、そこでめざしていることとも重なるような気がする。

kotohogicooking.peatix.com

 

 

もう一度表紙を眺めてみて、そういえば「めぐろシティカレッジ」ってなんだろうと思い、本をパラパラめくってみたが、まったく情報がない。ネットで検索してみたところ、目黒区で開講されていた(いる?)区民講座らしい。発足のきっかけが、都立大学が目黒区から八王子市へ移転したこととあったりして、なんだかおもしろい。

 

わたしは人が集って本を紹介しあう場(読書会)を日頃ひらいている。だからこそ余計にそう感じるのかもしれないが、こういうおすすめする意図で置かれているわけではない本に、自分だけの掘り出し物を発見するのはとても楽しい。