ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

家族のごはんをつくる人の食と農の話

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日本農業経営大学校小野ゼミによるグループインタビューに参加してきた。

小野ゼミの講師・小野さんとわたしは、直接つるんだことはないのだけど、共通の友人が多かったり、界隈でチラチラお会いしたり、わたしがひらく場づくり系の勉強会などに以前からちょいちょい来てくださっている。しゃべっても書いても、独特の視点、独特の味わいをお持ちで、気になる方だ。いつもはオノフミさんと呼んでいるので、以下オノフミさんと書く。

オノフミさんが専任講師を務める学校の、担当ゼミの活動の一環としてのグループインタビューだった。テーマは、「子育て中の女性に聞く〜ふだんの食と農」。

 

参加した学生さん8人はそれぞれ、「実家の農家を継ぎます」とか、「『非農家』だけれど農業に関心があり『就農』します」とか、そういう学校だから当たり前なのだが、農業に関係ある自己紹介をしてくださって、世界を農業フィルターで見ている人たちが集まっていることとか、聞き慣れない業界用語が交わされることに、わたしは冒頭から密かに(萌え.....)となっていた。

 

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「都会の主婦のお話を聞くのは貴重な機会」との言葉に、そんな大げさな…と思っていたけど、いざインタビューに答えて話しはじめると、わぁ確かにあたし都会の主婦だわって思ってきた。食材の入手経路から選択基準から優先順位から…、もうそのものやん…。

 

朝昼晩三食食べたものの写真を撮って事前に送るところからまず、これはライフログだ!すごくおもしろい!と思った。リアル「きのう何食べた?」だ。わたしは仕事以外ではあまり食べ物の写真を撮らないし、たまに撮ってもあまり人に見せないので、それも新鮮だった。しかも、たまたま大量にいただいたソーセージが皿に盛ってあったりして、特に何も考えずに食卓に並べている「いつも」と「偶然」が、撮るとはっきりと写り込んでいるのがおもしろかった。

 

これは朝ごはん。

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他の方の写真や話も、聴いていくとその人ならではの背景があり、興味深かった。

日本のどこのどういう歴史と文化のある地方で、原家族とのどんな食生活の中で育ってきて、ライフイベントと共にどう変化があって、どんな人や地域や食べ物との出会いがあって、どんな調理法や道具を知って、今どういう仕事や時間の使い方をしていて、誰とどんな関係性や分担の中で暮らしていて、何人何歳の子どもがいて、何が好き・食べられて、何が嫌い・食べられないか…などなど、同じ「子育て中の女性」で切っても、全然違う。比較や評価なんてまったく意味がない。すべてがその人による、その子によるので、「普通はこう」とか「何が一番優れてるか」って話ではない。食べる人の行動とその背景を聞きたいというのが主目的だから、場がそこからブレてなくてよかった。料理の上手/下手とか丁寧/雑みたいな話になったら、とてもじゃないけど場にいられなかったと思う。

 

なるほどそれは便利だから参考にしたいと思うこともあったり。

うちは数量的にはわたしとわたしの3/4くらいしか食べない息子のごはんだけ考えればいいけど、家族4人とか5人とかのごはんを考える人はほんといろんなことを考えてつくらないといけないんだなぁ!と尊敬したり。

 

自分ではあんまり食にこだわりはないと思っていたのだが、話してみたらむちゃくちゃこだわり強いやん!てことにも気づいた。4月から5月にかけて取り組んでいた大片付けのあとに性別役割分業からの真の解放があったのだが、さらにこの客観視できたインタビューのおかげで、今、気分はとっても晴れやか。

 

インタビューのテーマのうち、「レタス」と「しいたけ」は、ひとつの食材について、こんなに一生懸命考えたり、人と話したことがなかったので非常におもしろかった。わたしはどちらもあまり買わない。そこから、「なぜか?」を掘っていく。日常会話では、好き嫌いまでは話しても、「なぜ?」まで行かないから、その先に行けるのは楽しい。種類や特徴や用途について聞いたり話したりするのも楽しい。

 

今年の後半は食のほうへ「旅」をするつもりなので、自分自身の食の場づくりのヒントもいただき、大満足だった。

 

オノフミさん、学生さん、日々家族のごはんをつくってる皆様、ありがとうございました!