ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

こどものわたし、おとなのわたし

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きのうふと思い出した。
「よそのうちはああなのに、うちは違うのなんで?」
「〇〇くん・ちゃんもみんな持ってる・やってる、だからわたしにも買って」
とわたしは小さい頃、親によく訴えていた。


 
でも、わたしの息子は、親のわたしにそのようなことをあまり訴えてこない。

ということに気づいた。

 

確か一年生の頃によく言ってた気がするけれど、一時期だけだった。覚えているのは、「うちはなんでかぞく一緒に暮らせないの?」と「Nintendoスイッチ買ってよー」ぐらい。

 

どちらもわたしにそうできない・しない理由が明確にあるので、息子の気持ちを受け止めつつ、実感からの言葉で丁寧に説明を繰り返すだけで、そのうち本人がなんらかの解決策を見つけたり、それにわたしができる範囲で協力することで、そういうやりとりもいつしかなくなっていった。
 
「〇〇くん・ちゃんはすごいなー。ぼくはどうせ〇〇だからダメだ」
という友だちとの比較やランキングの言葉も、少なくともわたしといるときにはあまり出ていない。
「〇〇くんはああだけど、自分は不得意だから別にいい」はよく言っているかも。
でも、これから思春期が深まっていくにつれてもっと出てくるのかな。
 


わたし自身が子どもだったときは、ほしいものはどんな些細なものでも、親に普通に話してもダメで、声が枯れるほど泣いて訴えないと手に入らなくて、そうまでしても簡単に退けられたり、嘲られたり、辱められたりして、「欲しがる」と「戦い」はほぼ同義だった。欲しい理由を聴いてももらえないし、ダメな理由もまったく説明されなかった。代わりに全く欲しがっていないものが与えられることもあり、それを喜ばないと怒鳴られた。
 
次第に欲しがることや望むことを我慢して、これが与えられないのは自分に価値がないせいだと引き受ける習慣がついて、でも喉から手が出るほど欲しいから、自分や人を騙したり誤魔化してそれらしきものを手に入れたり、持っている人へ憎しみを募らせ、キレて、そういう自分を嫌悪し、また価値を下げ、、、

そのパターンから抜けるのに何十年もかかった。それでも今もまだ怒りや恥の感情を扱うのは苦手だけれども、見ていくといろいろ発見があるし、道もひらけるのもわかっているから、怖れはない。

 

歳を重ねると怖いものが減るというのは、こういうことなのかもな。


 
息子がこれから通過するのは、そのような環境下で生き延びるために身につけなければならない自己不信、自己否定、自己嫌悪、自己肯定感のありえないほどの低さ、あるいはその反動で起こる自意識の肥大、支配欲求、、などとは違う道のような気がしている。
 
わからないけれど。

わたしとしては希望にあふれたものであってほしいので、息子への、人間全般へのあたたかな愛情と関心をもちながら、わたしも自分を見つめ続ける。行いやふるまいや言動を見直し続ける。

息子の「やりたい」「やりたくない」には寄り添う、息子の問題として大切にする。
 
 
 
わたしの父親も母親も、世代や時代の問題(暴力、抑圧など戦争の疵)にさらされていたことに加え、今で言えば名前のつく特性をもった人だと思う。でも子どもにはそんなことはわからないし、わかったところで親を選べない、環境も変えられない。
 
息子と二人暮らしをはじめた頃はわたしも一人で背負う不安とプレッシャーやその他の事情から、些細なことを極度に禁止したり、抑制する時期があったけれども、だんだん自分の人生を生きるほうへ進むにつれて、「ちゃんと(母)親をやらなければ」という縛りが解けて、息子とも愛と信頼のある関係が育めるようになった。そういう日々を営んで、もう何年も経つ。
 
 
子に対して禁止事項を強いたくなったときに、自分の中の「何から」言っているかを見つめてみる。怖いけど、見つめつづけてきてよかった。自分が禁止されたこと、望みや願いを大切に扱われなかった痛みと無力感で、今も泣いている小さい自分がいるかもしれない。
 
小さなわたしを抱きしめて、もう大丈夫だよ、わたしがいるよ、今まで放っといてごめんね、と助けに行くイメージをもつ。手をつないで、隣に座って、髪をなでてあげる。
 
そして、「大人になったわたしが叶えてあげる」と小さなわたしに約束してあげる。
 


ほんとうに、もうその力が十分にある。
自分自身の実感とつながって、十分に望んで、十分に叶えられる良い循環。
あるものを入手する「選ぶ」だけではなくて、場所を変えることや断ることの「選ぶ」もできる。
 
いっこずつ、小さくでも。
 
あるからねー!という気持ちで、ここに置いておきます。


 
 
 
この話、11/16のちほさんとやるトークライブにも関係ありそうだなぁ。

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