ピエール・ボナール展に10月はじめにいってきて、ずっと放置してましたが、徒然と書きます。
すごくよかった!
色を浴びた!
目は美しい色を見ると幸福なのだ!!
去年の三菱一号館美術館のナビ派展のときは、若々しく前途にあふれた若者たちのムーブメントだった。
今回は扱う範囲も焦点も解釈も違っている。
わたしも変化していて、あの時とは違うものを受け取っている。
でも「また会えたね!」って感じ。
去年のことをいろいろ思い出しました。
ポッドキャストで、「オルセーのナビ派展がよかった話」を配信したこととか。
この展覧会のサブタイトルの、"The Never-Ending Summer" だなぁと思いながら観てました。
ボナール一人を切り出してその画業人生を深堀りしてみると、目覚めたあとに思い出す夢のような、気配だけで実態のつかめない影のような、謎めいた感じが残る。
ナビ派展のときは、仲睦まじい、画家にとって最上最高のミューズと見えていたマルトも、実は不穏さを抱えた親密さだったのか?ということを年表が教えてくれた。
ボナールが二股をかけていた?マルトの友人の自殺、神経症の治療のための入浴が日課のマルト、ボナール20代半ばで知り合ったのに60近くになって結婚、結婚するまで本名も実年齢も明かさなかったマルト…などなど。
顔をぼかして描くのはなぜかも気になりました。
彼が追究した画法、技法以外にも、女性遍歴や彼の持つ独特の性的嗜好または性的強迫観念となにかしら関係があるのではないか。野次馬的な想像かもしれないけれど。
そんなことは置いておいても、この色彩の感覚はとにかく素晴らしくて、プロの写真家が実際の視界よりも鮮やかに撮ってみせて鑑賞者をハッとさせるように、油絵の具の科学を駆使してそれを行っているような。
色を感知する器官が呼び覚まされるような刺激がありました。
これをより楽しむには、モネ展のときと同様、片目をつぶって利き目だけで見る方法。おすすめです。
そういえば、晩年のモネと交流していたという話もあったな。みんな知り合いで狭い世界にいる感じはまるで平安貴族のよう。
先日ムンク展に行ったので、ちょうどボナールと同じ頃に、ムンクはパリとベルリンを行き来していて、ナビ派からも影響を受け、カメラが19世紀末頃から出回りはじめ、二人とも写真を絵画制作に活かすということをしている。たまたま同時期にひらかれている展覧会で同時代性を感じられるのはうれしい。
たまたまだけど、10/3はボナールの誕生日だったのでよき記念の鑑賞日となりました。
観終わったあと、友だちと待ち合わせて話せたのもよかった。30分だけだけど、この感想を交わし合える時間が有るか無いかで、もうぜんぜん違う。人間と鑑賞体験が結びついてゆくこと。わたしにとってはもうなくてはならないものになってしまった。
いっぱい描いた。もっと描きたかったなー!
会期終了は12/17(月)国立新美術館にて。
火曜休館です。