三菱一号館美術館で開催中のフィリップス・コレクション展に行ってきました。
「全員巨匠!」というキャッチコピーにこのポスタービジュアル。
すばらしく言いたいことがシンプル(笑)。
「美術評論家」のダンカン・フィリップスさんが、自分の目利きで、注目するアーティストを集めたレーベルの、さらに日本向けに編集されたコンピレーションアルバムのような展覧会でした。
フィリップスさんの画家を評した言葉がところどころに掲示されているのですが、これが「惚れ込んだらべた褒め!」な感じがよかったです。
コンピレーションCDを聴いて、よかった曲があったら、それが収録されているアルバムをたどったり、同じアーティストの他のアルバムもさらに聴きにいって、どんどん広げていく、ということを中学生、高校生ぐらいによくやっていたのを思い出したので、最近、美術館展やコレクション展を楽しく鑑賞しています。
その楽しさを教えてもらったのは、プーシキン美術館展もそうだし、もう少しさかのぼると、やっぱりポンピドゥーセンター展だったかな。
今回は、ジョルジュ・ブラック、ジョルジョ・モランディ、フランツ・マルクは、他の作品をもっとみてみたいです。
フィリップさんはボナールとも親交があり、コレクションの中でも重要なものとして位置付けていたようです。
秋にボナール展があり、ブログでよかった話を書きましたが、一時的に詳しくなっていたこの短期間に、またボナールの作品に4点も会えるのはうれしいことです。三菱一号館美術館は最近のナビ派ブームをもたらした美術館という文脈もあるので、ボナールとヴュイヤールも入れてあるのかなぁと勝手に憶測してみたり。
2.5mぐらい離れてみてみると、色がじわじわと動き出す感じ。
わたしが今回一番うれしかったのはこれ。
全く似てなくて残念ですが、モディリアーニの「エレナ・パヴォロスキー」。
モディリアーニの作品の中でも子どもの頃からずっと気になっていました。まさかここで対面できるとは!と胸が震えました。
友人エレナの透明さ、凛々しさ、知的さ、繊細が伝わってきます。
実物を見ると、顔はほんとうに丁寧に描いてある。
好きな絵が多くて、毎度のことながら観るのに時間がかかりました。
最初のご挨拶のところで読んだのだったか、「近代美術(Modern Art)だけれど、ダンカン・フィリップスにとっては同時代だった」というような文章を目にして、それを念頭に入れながら観ていけたのはよかったです。
生まれたのが1886年。
初めて絵を購入したのが1912年。
フィリップス・コレクションの前進のギャラリーがオープンしたのが1921年。
MoMAがオープンするのが1929年。フィリップスも運営に尽力。
だからフィリップスにとっては、ゴッホ、モネは「ちょっと前」、マティス、ピカソ、ユトリロ、ボナール、モディリアーニ、ブラック、カンディンスキー、クレー、ランディ...みーんなみんな、Contemporaryだったんだなぁ。
コレクションなので、獲得年や寄贈年が記されていて、蒐集のキャリアもうかがうことができます。
第二次世界大戦の影響でヨーロッパの画家たちがアメリカに渡ってきて、芸術の発信地がパリからニューヨークに移って、という大きな流れにフィリップスも乗って、そして戦時中も蒐集活動を熱心に進めた、と。
...というところで、「はて、大戦中のアメリカ国内の状況ってどのようだったんだろう?」という疑問がわきました。
手元にある山川の世界史資料集についている、各国の出来事が比較できる年表を見てみて、だいたいの時期や出来事についてはわかったのですが、もう少しリアルな人々の生活も見てみたいなぁという気持ちが出てきました。
フィリップスがどうしてそんなにも芸術を人々と共有しなくてはと切実な思いを抱くことになったのか、ももう少し知りたかったなぁ。
これは図書館に行くかな〜
これは写真撮影スポットに飾られているパネル。
現地のフィリップス・コレクションでは写真取り放題みたいですけどね。
いろんな方のブログを観ていると、へーこんな作品もあるんだ!と別のツアーに出たみたいで楽しいです。
《DCのおすすめ美術館》フィリップスコレクション | | Global Familia
フィリップスコレクションの見どころ ワシントンDCの素晴らしいモダンアートコレクションを誇るミュージアム The Phillips Collection - Petite New York
「絵画は、周囲のものに美を見出す力を与えてくれる」米国紳士が残した言葉 | 文春オンライン
《公式HP》https://www.phillipscollection.org/about/history
《PDF》https://www.phillipscollection.org/sites/default/files/attachments/building-history-july-2015.pdf
"Phillips Collection"でGoogle検索するのも、同じ作品が現地ではどういうふうに展示されているのかわかっておもしろいです。
そういえばこれが今年の初展覧会でした。
今年も個人的に観るものは、厳選してじっくり味わっていこうと思います。
そして、今年こそは美術館とパートナーシップを組んで、鑑賞感想会を催すお仕事をしたいです。
一方向のレクチャー形式の知識の吸収でもなく、特定の絵の中の話だけをする対話型鑑賞だけでもない。
展覧会を観た感想を他の鑑賞者とわいわい話す場。
絵を観察することはもちろん、美術史や技法ももちろん扱い、それに加え、自分の背景も、経験も、思い出も、すべてを感想として話し、聴き、お互いに新しい発見をしあい、人と人とが作品を通じて出会い、出会うことで作品を深く理解する「場」。
場にしたい。
場をつくりたい。
一人ひとりにとって、鑑賞の体験が自分と真に関係があるものとしてとらえられる場。鑑賞が生きる上で真に必要な力となるために、対象を通じて「人と出会うこと」を組み込みたい。
展覧会で絵を鑑賞することを「体験」としてデザインしていく。
一人ひとりの人生に位置づけられていく可能性のあるものとしてとらえる。
それが可能な安心安全な環境設計から行います。
どなたかそれを一緒にやってみたい美術館の方はいらっしゃらないでしょうか。
*追記(備忘として)*
・フランツ・マルク Franz Marc
Wikipedia
【美術解説】フランツ・マルク「動物をモチーフにした絵で人気の前衛芸術家」 - Artpedia / わかる、近代美術と現代美術
36歳で戦死。本格的に画業に携わっていたのはたった10年。
ミュンヘン市立美術館とNYのグッゲンハイム美術館が多く所蔵している模様。