ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

シャセリオーが連れて行ってくれたモロー展

パナソニック汐留ミュージアムで開催中の、ギュスターヴ・モロー展に行ってきました。

panasonic.co.jp

 

bijutsutecho.com

 

 

モロー展は、それはそれはよかったです。

実はこの「めちゃよかった境地」に至るには、2017年の国立西洋美術館のシャセリオー展があってのこと。

 

 

シャセリオー展の概要についてはこのブログが詳しいです。

culturemk.exblog.jp

 

 

行ってみたわたしの感想。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

ちょうど今ぐらいの季節だったですね。すごくよかったのにGWだったのにお客さん少なくて、なんとか観てもらいたい!と思い書きました。

 

書くだけでは飽き足らず、ポッドキャストでもしゃべりました。

doremium.seesaa.net

 

 

シャセリオーは、画業人生も短くて、日本ではまだあまり知られていませんが、モローやシャヴァンヌ、ルドンに大きな影響を与えた画家として、シャセリオーのDNAが感じられるような作品と共に展示されていました。

特に、24歳のモローが、シャセリオーの壁画を見て感銘を受け、弟子にしてほしいと、当時30歳のシャセリオーのアトリエの隣に部屋を借りて住んだというエピソードには、熱いものを感じられずにはいられませんでした。

 

37歳で早逝したシャセリオーの死を悼んで、彼と「同じく」イタリアへ留学し、その経験をもって描いた「若者と死」や、晩年のシャセリオーの横顔を繊細に描いた鉛筆スケッチなど、師としても友人としても敬愛していたことがうかがえ、モローとシャセリオーとの関係は、このときに非常に印象深く残っていました。

 

 

 

そんな中での、今回のモロー展。ついに来た!もちろん行く...! 


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予習は、公式HP青い日記帳さん、そしていつもお世話になっているこちらの本。

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最近ワイド版を手に入れて、より分厚くて重くなったので、該当箇所のカラーコピーをとって、余白にメモを入れていくのが最近の習慣です。

 

予習が苦手な方も、入館前にロビーで流れている映像を見ればかなり抑えられます。

東寺展のときも思ったけど、最近のこの方式?形式?すごくいいですね!

 

 


今回のわたしの目当ては神話とサロメ

来月友人たちと「そういえばギリシャ神話ってなんだ?」という勉強会のようなものをひらく予定なので、関心が高まっていること。

サロメは、モローといえばこれ!というくらい印象的な「出現」を生で見たかったのと、シャセリオー展でも一点見たので。(シャセリオー展の図録より)

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「出現」へ至る道のりがたくさんの習作で追えるのですが、これがほんとうに、とてもよかった。このシーンをどう解釈するか、サロメおよび刑吏や王をどう描くか、サイズは、技法は、、さまざまな試行錯誤の末にあの作品が生まれたということがよくわかる展示になっていて、鳥肌ものでした。ここだけでずいぶん時間を使いました。

神話や聖書の世界に彼を惹きつけて止まない、一生つかまえて離さない探求テーマがあり、それを徹底的に描くことによって、自分の表現を常に大胆に繊細に変更していったことが感じ取れます。

 

 

幻想世界を描いているけれども、ふわふわと夢見がちなものではなく、神話という盤石なものに依って、現実世界の人間や事象のリアリティを持ち込み、人間の本質に鋭く切り込んでいるように思いました。

 

サロメにしても画一的な悪女ではなく、一人の人間が「そこに居る」ように、解釈し、存在させる。それでいて、男性のモローとして、永遠に謎の存在の、別の性としての女性への好奇心や畏敬や嫌悪などもあり、モローの人生に影響を与えた母と恋人とはどんな人たちだったんだろうと、興味がわかずにはいられません。

たくさんの女性の絵を見ていると、ポール・デルヴォーを思い出したりもします。
彼も母親と特別なつながりがあったとか、たしか読んだような気がします(うろ覚え)。

 

リアリティといえば、モローの描く赤は、まぎれもない血の色で、血ではないものを描いている箇所にも、どくどくとしたものを流しているような感じがあって、その自分の身体との近さも印象的でした。

 

 

シャセリオーとの関係でいえば、「サッフォー」「アポロンとダフネ」など同じ題材で描いているものもあり、解釈はそれぞれにありつつも、なにかした「近さ」を感じさせる。。というか同じ題材で描いている、というだけで、なんとなくグッとくるものがあります。

 

METライブビューイング「サムソンとデリラ」を観ておいてほんとうによかった!と思ったりもしました。

 

今観ても画期的な表現技法や構図に立ち止まることしばしば。

漫画「乙嫁語り」もびっくりな描き込みもあるのに、72歳の生涯で遺したのが、元アトリエを改造して作ったギュスターヴ・モロー美術館に収められているだけで、油彩850点、水彩350点、デッサン枚数は7,000点という点数。

なおかつ、書くことにも才能があって、一つひとつの作品の構想などを記したメモなども入れると大変な量です。あふれ出る表現。情熱。ただただ圧巻です。

 

順路の途中でパリのギュスターヴ・モロー美術館の映像が流れますが、点数が多いのでぎっちぎち!!!

あの絵、あそこにかかっているのあの絵が、さっき見たやつかーということが確認できてうれしくなります。

 

さらに、Instagramではいつでもその気分が再現できます。
こちらの美術館の公式アカウント、ほんとおすすめ。

www.instagram.com


 

そもそもどうして汐留ミュージアムでモロー展をやるのだろう?と疑問だったのですが、66歳で国立美術学校の教授になったときの生徒にジョルジュ・ルオーがいたからなんですね。汐留ミュージアムは、ルオーの収集をしているから。

ルオーの他、マティスやマルケもモローに師事したとのこと。

 

アングル → シャセリオー → ルドン、モロー → ルオー と続いてくるこの師匠と弟子、友人の関係という軸で、美術史を眺めていくと、連綿と続いてきた人類の歴史や営みが、とても身近に、愛おしく思えてきます。


シャセリオーに影響を受けた一人、シャヴァンヌについては、2014年にBunkamuraで展覧会があったらしいです。ぜんぜんスルーしてました。

今シャヴァンヌ展やってたら絶対行っていたなぁ。図録の在庫もなかった、ざんねん。

 

ブログは書かなかったけど、ルドン展は去年行ってとてもよかった。
こういう流れをもって、来月、神話の会に入れるのはすごくいいなぁ。

 

 

 

いつものスケッチ。恋人と自分を天使に見立てたスケッチにきゅんとしました。

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次回パリに行ったら、絶対にモロー美術館に行こう!と思って、そうか!と思ったのは、

 

もしかして、ここの隣が、かつてのシャセリオーのアトリエだったのか???
ということ。どうなんだろう。引っ越したかな。

 

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ここのショップの本の選書がわたしにとてもヒットして、こんなに買ってしまいました。ずっとこういうテーマ・内容で、こういう編集で、こういう体裁の本があれば!と思っていたままにあったので、びっくりして。

著者さん、出版社さん、編集さん、デザイナーさん、書店さん、ありがとうございます!

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これで当日一般1,000円、お得。ほんとうに行ってよかった。この汐留のオフィス街の奥地に突如あらわれる異界への扉って感じなのもよかったなぁ。

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シャセリオーとモローを隣同士に。また宝物の図録が増えました。