ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

能「船弁慶」の予習会をひらいた

来週観に行く天籟能の会の「船弁慶」の予習会を、友人のたかねさんとひらきました。

 

予習会のフォーマットは、METライブビューイング「椿姫」「魔笛」第九予習会経験からできたものを元に。

たかねさんは能のお稽古をして舞台経験も積んできた、「能の世界」の方。ぜひレクチャー部分をと、お願いしました。わたしは場をセットして進行する係。

「個々人の楽しみを大切に、はじめて能を観る方の関心とお能の世界との間に橋をかけたい。そのためには...」という打ち合わせで、必要なこと、できること、やりたいことを共有しながら、一緒につくりました。

 

まずは参加メンバーとメッセージスレッドをつくって挨拶。

今後の流れ《予習会→当日鑑賞→感想会》を共有。

能や船弁慶に関する情報を適宜シェア。
ちょうど5月はNHKのTV番組「100分de名著」が「平家物語」だったので、その話など。メンバーが知っていることもここで持ち寄る。

能の知識をサラッと入れておいてもらいたい...ということで、2人で「能ってなんなん?」という番組を作って、メンバーにも聴いてもらいました。

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「教科書」に書いてあるようなことをわざわざ聴いてもおもしろくない!

誰から橋をかけてもらうかが大事だから、それぞれの「お能の好きなところ」を話したらいいんじゃない?となったら、ただただ自分らが楽しい番組になってしまいました。

それでも、もしかして、お能を知らない人、興味はあるけどよく知らない人が楽しんでくれたり、お能をすでに知ってる方が「わたしもそこが好き!」「わたしはこういうふうな愉しみ方!」など教えてくれるといいなぁ。

聴いてくださったら、ぜひnoteのほうでコメントください。

 

配信の翌週に、「予習会」を開催。

たかねさんに「船弁慶」のあらすじや見どころをレクチャーしてもらいながら、質疑したり、メンバーが知っていることを持ち寄ってもらう、ピアな学習会となりました。

たかねさんは、さすが舞台の経験者だけあって、深い知識と経験に裏打ちされたすばらしい内容!謡本を見せながらここが「ぐっとくる」ところの謡いをやってもらえたのも貴重。

他のメンバーは、それぞれの仕事やライフワークなど、その人なりの体系化された世界と能の世界をつなげて、「それってバレエで言うとこれに当たるよね」など理解しようとしてくれたり、その人ならではの感性から、疑問や解釈を言葉で表現してくれて、場にいろんな刺激と発見をもたらしてくれました。

登場人物と物語の解釈を話すうちに、一人ひとりの中に、船弁慶の舞台のイメージ、登場人物の像が立ち上がってくるように感じました。

 

 


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それぞれの知見が場に投入されて、一方的に教わるだけにならない場。

持ち寄り分かち合う。

専門があることに敬意を払いつつ、時に報酬も生まれるけれど、そこに上下関係を発生させずお互いが学び合い育み合う、双方向の場。

 

少し前の時代の《教えるー教えられる》の場は、知っているほう、経験が深いほうが、知らない人、経験が浅い人よりえらいという立場をお互いが取っていた。

でも、今の時代はそうではない。

上野千鶴子さんが東大の入学式の祝辞での言葉を借りれば、「すでにある知を学ぶのではなく、誰も見たことのない知を学ぶ」 場や、その場をつくる力が大切なのだと、あらためて思いました。

 

 

たかねさんに、「自分にとって能の話ができたことは喜び」と言ってもらえて、うれしかった。

「人前でお能についてお話するのは初めて」とは言っていたけれど、お能への愛がとても深いのをわたしは知っているから、もうぜひぜひ!という感じでお願いして。

予習会をやってみて、「橋の真ん中で出会って、手を取り合っている感じ」と表現してくださって。いやーすてきだ。

 

配信したことでも、お能関連の懐かしい人や、お能関連ではなかったけれども出会い直した人もいたらしく、やっぱり好きなもの、ことの話をするって、いいなぁ〜

 

 

あーめちゃめちゃ楽しかった!!
まずはもう、能を語れる友だちが増えていくのがうれしい!
船弁慶」という曲の理解も深まったし、能への愛もますます濃く強くなる。

 


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実際に舞台を観るのは明日!セルリアン能楽堂で。

終わったら、カフェで1時間〜1時間半、感想を話す時間を持ちます。

予習会を経て、日常を過ごしてからの本番の能。

 

わたしもみんなもどんな感想を持つのか、ほんとうに愉しみです。

天籟能の会のグラフィックデザインはいつも素敵。


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それからプログラムの開発の手応えも。

2017年のMETライブビューイング「椿姫」を観る会を発端として、自分の関心あるジャンルで、いろんな友人と組んで、いくつも場をつくり、研究開発を続けてきました。

ここにようやく《準備→予習→鑑賞(体験)→対話→発信》を1セットにした鑑賞体験プログラムが完成した感触があります。

 

これを友人が「ハイエンゲージメント鑑賞」と名付けてくれました。
これを主催側から見れば「ハイエンゲージメント興行」。
それを興行主に提案していく。

 

A.ハウゼンの「美的発達段階」の第三〜四段階の方向け。

やり方によっては、第二段階後半の方にも可能。

こういう鑑賞対話や体験対話の場をファシリテーションやワークショップの型としてだけではなく、社会的意義と接続するメタな視点と、深い動機から汲み上げる関係性のデザインを含めた「前後のある場づくり」として、必要としているいろんな現場に実装したい。

 

対象者の美的発達段階を考慮した上で、テーマを設定し、必要な量と質の知識を順番に手渡し、一人ひとりに言語化をうながし、体験を定着させていく。

正確性や学術的価値ではなく、ひらく人自身と集う人にとっての価値の追求。

また、誰から聞くか、誰から橋をかけてもらうかが重要。

ひらく人の文脈や動機から生まれる場づくり。

 

「すでにある知を学ぶのではなく、誰も見たことのない知を学ぶところ」

 

固まってきた!!

これをなんとか近いうちにnoteでまとめます!!!

 

 

 

 

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