今年の2月のライブビューイングで観てすっかり気に入ってしまった「くるみ割り人形」を、なんと1979年にサンリオが作っていた!
さらにわたしの子どもの頃から大好きな人形劇映画で観られる!
と観劇仲間から聞き、観に行ってきました。
初ユジク阿佐ヶ谷。
同時上映が、「ホフマニアダ ホフマンの物語」と「サスペリア(1977)」という、ミニシアター勃興期を彷彿とさせるラインナップ!たまらん...。
いやーーーーーこれは衝撃!!!
思ってたんとぜんぜんちゃうかった!すっげーーーーー!!!
これヤバイ!!!
と、すっかり語彙が失われてしまった鑑賞直後。
サンリオらしい「ファンシー」な物語をイメージしていたのですが、もう冒頭からめっちゃくちゃ怖い!!
手加減なしで怖い!!
しかも今の映像表現と、技術も違うし、テンポやリズムも違うし、キャラクター造形も違うので、次にどんな展開になるのかも、登場人物が何を話してどんな表現をするのかも、どんな映像が目の前に展開されるのかも、まったく予測がつかない。
タイトルは「くるみ割り人形」なのだけれど、題にとって、下敷きにしたオリジナルストーリーなので、最後は「だいじょうぶ」なのだろうけど、あらすじが全然わからないのだ。
そんな中で、キャラクターがいちいち怖い。
・寝ない子どもをとって食いにくる(さらいにくる、だったかな?)ジャンカリ
・主人公のクララの恐れおののいている表情
・ドロッセルマイヤーおじさん(クララの叔父。なんか抱えてそうで怖い)
・二つ頭のネズミ・マウゼリンクス夫人
・ジプシーの女性
...というか全員がなにかしら怖い。見た目も怖いし、声の調子も怖いし、行動も怖い。
怖くないのは、王子様的存在のフランツ(フリッツ)ぐらいか。
でも、、「この感じ、すっごくよく知ってる」とも思った。
いちいち自分の根っこのなにかに触れる。
子どもの頃ってこういう手加減なしの怖さが好きだった。
というより、子どもの世界にはこういう怖さが含まれていた、というべきか。
驚かしてやろう、怖がらせてやろう、と意図して作られたものとはまた違う怖さ。
夢に出たらどうしようと、寝るのが怖くなる、泣きたくなる、みたいな。
そこによく知っているサンリオのファンシーさはなく(最後に出てくるけど、メインではない)、子ども向けだからといって、ぜんぜん甘くない。
どんな人間も内に有している感情。
愛、殺めること、妬み、憎むこと、復讐、支配......語らせ、動かす。
子どもが大人になる過程で摂取してきた栄養ってこういうのもあったんだったなぁ。
わたしが人形劇が好きなのも、たぶん人ではないものに魂を宿す妖しさとか、人にはできないことを「平気で」やらせる感じや、見た目の特徴をちょっと何かのコードにふれるくらいぎりぎりのところでカリカチュア的に表現する感じが好きなのだ。たぶん。
感覚過敏の子には、相当ヘビーな音や光が容赦なくガンガンくる。
辛くて目をつぶってしまった箇所も。
一緒に行った友だちは小学生の頃に一度観ているらしい。
東京に遊びにきた時に、親戚のおばさんが連れて来てくれたんだそうで、大大大好きで本も買ってセリフも全部覚えて、、というぐらい好きだったらしい。
この日一緒に行って、数十年ぶりにこの映画を観て、涙ぐんでる友だちの隣にいて、時を超えて会えるってすごいなぁとか、この映画を観て強い影響を受けたっていう感受性もすごいなぁとか......映画を巡る人間の物語にも圧倒されていました。
関係ないけど、サンリオピューロランド行ってみたくなりました。
▼この映画は2014年にリメイクされていて、2作を比較して評している方がいます。
#映画 サンリオの『くるみ割り人形』79年版と2014年版 - 新・珍獣様のいろいろ
★追記★-----
怖い怖いしか書いてないけど、すごくつくりが細かかったです。人形の造形もだし、ワンカットワンシーンごとの撮り方もだし。
手抜き一切なし!
やりたかったことぜんぶやってはる!
そんな感じです。
-------
おまけ。
わたしはさらにこの映画も気になっている。
今年の一箱古本市で、マキさんが持ってきた岡本太郎の沖縄か奄美に関する本をお譲りしたときに、お客さんが話してくださったのが、この風習のことだった。
実際にどうやるんだろう、というのにすごく興味がある。こちらもユジク阿佐ヶ谷で。