ROYAL OPERA HOUSEの公演を、ロンドンまで行かずとも、近所の映画館で観られてしまうという、素晴らしい時代。
日比谷や調布は夜上映で難しいので、昼上映を観るために流山まで行きました。
でも思ってたよりぜんぜん近い。心の距離と、実際行ったときのギャップがおもしろい。こういうの好きさ。
きょう観たのは、7/4(木)まで上映中の、コンテンポラリーのトリプル・ビル(3つの演目を一晩に上演する公演のこと)、ほんとうに素晴らしかったです!
・クリムトに影響を受けた Within the Golden Hour
・ギリシャ神話を新解釈した Medusa
・難民問題を扱った Flight Patten
(Twitterで #ROHmedusamixed と表記されていたので、この記事のタイトルにも使った)
極めて現代的、しかし人間にまつわる普遍的なテーマを内包しており、揺さぶられ続ける…何をか感じずにはいられません……。
正直、観ている最中は余裕がなくて(メモもところどころしかとれなかった)、はじめからおわりまで涙が止まらなかった。
見終わったらなんでだか頭の中が英語モードになっちゃう、という不思議なことが起こりました。
なんだったんだろうなぁあれ...と思ったけど、たぶん、広い世界で、届く範囲をもっと広げて、この気持ちを共有したい。そしてそこで通じる言葉でどうにか語りたい、、と思ったんだなぁ。
つまり、この3部作のメッセージをわたしはとてもよく受け取った、ということではないかしら。
観られてよかった。
人間でよかったと思いました。
人間がこれを作っているということが、希望。
踊りと振付と音楽と美術と衣装。そして観客。
すべてが一体となった奇跡のステージ。
つくってくださってありがとう。
世界250カ国、972館でこれを観た人がいるんだなぁ。
MET Operaの支配人の方が、「我々がここでオペラをやり続けることが、平和に貢献しているのだ」というようなことをおっしゃっていたのも思い出す。
振付の二人のインタビューにも何度もぐっときました。
特に「フライト・パターン」の振付のクリスタル・パイト。
世界の現状に対して、難しいテーマに対して、わたしは何か言わずにはいられない。そのときに、わたしにはダンスという手法しかない。怖れはある、未知に溺れそうだ、しかし…
It's my way of coping.
とおっしゃってました。coping…ああ、わかる…と思った。
そして、芸術とは、人が結びつき、会話を持てる場所である、とも。
今ふりかえってみると、能で五番立に例えるなら、こんな感じでしょうか。
三番(女)-Within the Golden Hour
四番(狂)-Medusa
五番(鬼)-Flight Pattern
30分程度の作品が3本合間に解説やインタビュー、休憩をはさみながら、3時間ちょっとのほどよい鑑賞時間でした。
まだまだダンサーを含め、制作サイドについては詳しくないので、知りたい方は紹介ページをどうぞ。
http://tohotowa.co.jp/…/24/timetable_within-the-golden-hour/
話変わって、興行について。
ロイヤル・オペラ・ハウスのライブビューイングは素晴らしいのだけれど、劇場を抑えるのが難しいのか、スケジュールが出るのが超直前(3日前とか)だったり、ここは改善を求む。3時間(行き帰り合わせると4時間とか)を前もって空けるってけっこう大変なのですよね。今回はたまたま空いてたんだけれど。2週間前に分かっていると助かるなぁ。
シネコンでかかっているので、1週間ごとの客入りに応じて、どのスクリーンでどの映画をかけるかが細かく調整されている。リソース、ライブビューイング作品の優先度、配給と劇場との力関係とか、回転数と売上とか...きっといろいろ理由はあるのだろうけれども。
バレエを習い事としてやっている子どもが日本はたくさんいるので(世界標準からすると珍しいみたい)、子どもが家族づれで観やすくなるとよいだろうし、ライブビューイング形式が好きでいてくれるお客さんもいますしね。(ドナルド・キーンさんもそうでしたね)
東宝東和さん、何卒よろしくお願いいたします。
ここから下は、観ながらとっていたメモを文字に起こしたものです。
「スリービルボード」でメモ取り鑑賞を知って以来、だいたい毎回メモとりながらみてます。
- Within the Golden Hour
・「抽象バレエは観客が自分で自分の物語を映せる」
・クリムトに影響を受けて。やっぱり今クリムトがきてるんだ〜クリムトにインスパイアされて、何かをもとめて。
・「他のバレエ団の曲を別のバレエ団でやるとぜんぜん違う」というその感じを、もう少し詳しく聴きたい。
・「幽玄」と訳していた、元の英語はなんだっけ。
・抽象バレエの成功の秘訣は、振付と音楽とダンサーの解釈が結びつくこと。舞台で表現されるその美しさに結びついてほしい
・充実、調和
・異質と同質、違うからこそ分かり合える、違うからこそ踊れる、逆もまた。
・わたしはあなたであり、あなたはわたしである
・人間が繰り返してきた、生を継ぐ営み
・女性同士の、男性同士の、母子、恋人、友人、、あらゆる関係
・逃げられない宿命
・踊り続けるしかない。生きるしかない。Dance Dance, otherwise We are lost.
・追ったり追われたり、理解したり、拒絶したり
・渡していく、影響を与えていく
・生まれたから、人類から、一人の人間を、一人の関係を
・どちらが勝つか、どちらが上か下か
・小さなシークエンスの集まり、DNA、電子、原子、素粒子、ミクロコスモス
・老い
・つながり、調和、関係
・黄金の時代から、鉄の時代へ
・支える男性、支えるだけ?支えられる男性?
・美になる
・母たちよ、父たちよ
・苦しさと喜び、生きる
- Medusa
・文化や宗教
・新しく解釈することに意味。そういえばギリシャ神話ってなんだっけ?の会でも話たこと
・Beautiful Journey
・amazing, briliant , extraordinary
・呪いと解放
・行動と反応、道徳ではなく成り行き
・不公平だけどなんとかするしかない
・権力の濫用
・Victim-> Survivor-> Thriver
・力を得た怪物として
・I made my story out of it
・目の前の人が死に物狂いで何かを表現している。その人自身を超えて。見ざるを得ない
・feellessness, courageous
・等身大以上の何かを表現する
・自分の行動に責任を持つ重要さ
・選択の影響
・仕掛けたのはアテナ?
・Why ME?
・裁かれないのは男、すべて男への復讐
・my sweet solitude, my sweet surrender
・美もその人のせいではない
・あたしに触らないで、Let me free、助けて、傷つけたい、あいつのように、わたしがされたように、疲れた、もうやめたい、来ないで、なんで、逃げられない、信じない、嘘つき、お前の同じ、殺してみろよ、死ね
・力を失う、のたうちまわる、苦しい、つきつけられる、なにもない、烙印、どうやって生きていけば、見つめる、理不尽さを味わう、失くしたものの大きさを
・なぜわたしだったのか、なぜ、なぜ、こわい、いたい、できない、苦しい、死んだほうがまし、Let me free
・わたしはもう美しくなくなってしまった、昼も夜もなく、哀れ、惨め、終わらない、誰もいない、生きていくしかない、手がかり、ふりかえる、思い出す
・カーテンコールありがたい。戻ってこられる。皆さんちゃんと人間でした。
・very different
- Flight Pattern
・人間の関係。希望と和解
・カノンが振付で可視化される
・速度の制約
・音楽の隠れたメッセージをダンスで表現できる
・世界の現状に対する表現
・何か言わずにはいられない
・希望、自由、可能性
・Integrity
・内心パニックで溺れそう、未知に動揺する、Vulnerability、すべてに関わってこそ学ぶことがある、こんな難しいテーマを表現する能力があるのか、前進しているふりをする、でもダンスしかない、唯一の手段、やらなきゃ、人間性を疎通できる場所、使命
・インタビューももう一回観たい
・36人のダンサー
・胸が苦しくなる、争うようであったり。奪う、思い出
・さらに弱い者を叩く、失われる人間性、見て見ないふり、引き離される、無力感
・排除、依存、集団化、同質化
・苦しい、トラウマ、自分が自分でなくなる、喪失、何も感じなくなる
・たくさんの死、悲しみ、理不尽さ、不条理、非合法
・もうどうしたらいいか、混乱、どうにもできない、先が見えない、抵抗する力もない、周りは苦しむ人ばかり、
・何も変わっていかないのか、ずっとこのままなのか、昼も夜も、昨日も今日も
・狭まる、抗う、死にものぐるいでやっていたら、怖い、
・疲れて眠る
・想像を絶する、死の行進、
・目を覚ませ!厳しい時代にいることの共有
・人間の苦難の時代。そしてここから、Unite、怖い、
・手段で対立しているわたしたちは、「ここ」では出会える
最後におすすめ本。
ようやく自分にとってのバレエを鑑賞する意味を見つけた気がして、バレエに詳しい友だちにおすすめしてもらった本を購入。
これ、よいです。絵も可愛い、色もきれい、読んでいて目が楽しい。
バレエの踊りを本で表現したらこんな感じ!ってことかも!!