ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

第8回天籟能の会・能楽と農楽 鑑賞記録

天籟能の会の第8回公演を観てきました。その鑑賞メモ。

 

能の会(能を公演する主体)にはいろいろあって、

流派や家に紐づく会、能楽堂に紐づく会、公が主催の企画公演、横の繋がりで作る有志の会などさまざま。

天籟は最後の有志の会にあたります。

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わたしは第6回から続けて観ていますが、他の公演にはない発見が毎回あって楽しいので、興味ありそうな友だちを誘って行っています。

▼感想

第6回 小鍛冶

第7回 船弁慶 (わたしが友人とひらいた予習会

 

 

 

今回は、のうがく(能楽・農楽)を二本立てにしてしまうという試み。
前回2回とまたぜんぜん違う趣向です。

お能は、『賀茂』を半能で間狂言後場の上演。この間狂言は「御田」といって、単にアイがあらすじを説明したり補足したりするのではなく、人が何人も出てきてやり取りをする、特別な間狂言とのことでした。

農楽は、今回はじめて知ったのですが、韓国の民俗芸能で、韓国語では「ノンアク」と読むそう。

「農楽」は打楽器を打ち鳴らして神霊を招き、慰め、鎮魂する儀礼と、沸き立つような躍動的なリズムで民の生きる力を表現するのが特徴。

豊かさを祈願したり、つらい労働を鼓舞するために古来、民によって演じられてきました。旧正月には「農者天下之大本」の旗を風になびかせ、鉦や太鼓を叩きつつ足を踏みしめて舞い踊り、地の神を鎮め、家の神を祀る村祭りが韓国各地で行われます。(パンフレットより)

 

 

 

公演当日は1月25日。旧暦の元旦にあたる日。

韓国のほうは旧暦でお正月をお祝いするそう。そういえば以前勤めていた会社の韓国オフィスでも、お正月休みは短くて、旧正月に祝日が入っていたかも。

韓国、北朝鮮、中国、台湾、香港、ベトナムシンガポールがこの旧暦でお正月をお祝いするのに、日本はしなくなったんですね。明治維新あたりかしら?(要調査)

 

演目も場のしつらえも全体が、旧暦の元旦をおめでたい芸能で寿ぐような公演でした。

 

 

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はじめに講演「日本と韓国の神話と民俗」

歴史学者の保立道久さんのお話。

初めて聞く言葉や専門的なことも多くて、全部は捉えられなかったのだけれど、

  • 日本列島と朝鮮半島とは、火山、雷神、龍、月の神話、国生みの女神など多数の共通点がある。
  • 百済の正月の「踏歌節」は大地を踏み沈める踊りで奈良時代に流行った。田楽、歌垣、盆踊り、相撲などにも展開。
  • 隣の国とのご縁を大切にしたいね。

ということを受け取りました。

 

 

 

つづいて半能「賀茂」

「御田」に出てくる早乙女たちが、みなさん背が高くてゴツい男性能楽師さんばかりだったので、ちょっとおもしろかったんだけど、同時に自分の思い込み「早乙女=華奢で小柄な女性」にも気づかされて、ハッとしました。

早乙女にも背が高い人がいたり、がっしりした人がいたりもするだろう。

雷神様は、真っ赤な髪に稲妻の飾りを3つほど垂らしていて、雷神様の装束もキラッキラで素敵でした。やっぱり神様キャラは何を観てもカッコよい。

登場すると「キャー!」っと歓声をあげたくなる感じ。

 

 

 

そして農楽。

はじめて観たけれど、装束もリズムも音も動きも、どこかすごくよく知っているものばかりで、すぐに夢中になってしまいました。

沖縄のエイサーっぽい。

客席もノリノリで、ここはほんとうに能楽堂?という感じ。

お能のクライマックスのノリノリになっていく感じとまた違う、けれど不思議と共通するグルーヴ。

 

全然関係ないけれど、パッと思い出したのが、「オネアミスの翼」のメイキング展を観に行ったときのこと。

「架空の国を描くときに、まったく身近に存在しないものを作り出しても観ている人は共感できないし、世界に入れない。自分たちの知っているものをミックスしたり少し変化をつけたところに、親近感やリアリティが生まれる...」というような展示がありました。

なるほど、こういう感じかぁ。

はじめてなのに懐かしい。近くて、長い歴史の中でお互いに影響を与え合い、共通するものがたくさんある。

そっか、オネアミスではこの感じを作り出したということなのね。

 


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実は能楽堂でこの農楽を聞くのはわたしにはちょっと辛くて、途中で退出してしまいました。

太鼓は音が大きくてもまだ音が柔らかいのでいいのだけれど、鉦の金属の音が耳にかなり負担で、最初は少し耳を塞ぎながら聞いていたのだけれど、だんだんと痛みを感じてきてしまいました。

ちょうど翌日が競技かるたの大会だったので、安全のために避けました。

たぶんかるたをやっていなかったら、そこまで気にならなかったかもしれないけれど。。

何かをやると何かができなくなるのは、仕方がないこととはいえ、ちょっと悔いが残ったのは、わたしが退出したあとに、すごいことが起こったこと。

ロビーのモニターで観ていたので何があったかはわかったけれど、これは同じ空間で共有したかったなぁ。また入りなおして、立ち見してればよかったかも...。

 

 

詳細はぜひこちらのツイッターまとめでどうぞ。

togetter.com

 

 

最後ちょっと残念だったけれど、お隣の国とのひと続きが感じられた時間、寿がれた時間、とてもよかったです。

YouTubeでも「農楽」を漁ってみましたが、この公演で観たのが一番美しかった。

団の組み方、装束、音楽、あらゆる点で。

 

「農者天下之大本」

と書かれた旗に、なにかグッとくるものがありました。

ほんと!そうだよね!!農、大事。

 

五穀豊穣

平安祈願

 

人の祈りはずっとずっと変わらない。

 

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次回の天籟能の会は、2020年9月21日。

多田富雄・作の新作能『望恨歌』の新演出をやるそうです。

ご興味ある方はぜひ関係者のツイッターをフォローなどされるといいかと!

 天籟能の会事務局 @NohTenrai
 安田登 @eutonie
 槻宅聡 @tsukitacus
 奥津健太郎 @okutsukentaro