ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

七人の侍〈午前十時の映画祭〉 鑑賞記録

七人の侍(4Kデジタルリマスター版)を観てきた。 

asa10.eiga.com

 

午前十時の映画祭とは、

映画界を代表する映画人たちが選定した、時を経ても褪せない魅力を持つ名作を、映画業界のネットワークを生かして、全国の東宝系を中心とする映画館で、毎日十時から上映する企画。

2010年にはじまり、フィルムからデジタル上映になるなど、形を変えながら続いてきた。
10年目を迎える2020年にFINALとなる。http://asa10.eiga.com/2019/jissi.html

(...ということだと思いますが...違ってたらごめんなさい)

 

やっているのは、ずーーーっと知っていたのだけれど、一度も行けたことがなかった。


サウンド・オブ・ミュージックテルマ&ルイーズウエスト・サイド物語、アラビアのロレンス、七人の侍......。

思えばこれらのデジタルで蘇った映画たちを映画館のスクリーンで観られるなんて、ほんとうに贅沢なことだったのですよね。。

 

この上映に感想シェアの場(チュプキでやっている"ゆるっと話そう"のような場)をセットできたら、また違っていたかもしれないなぁと思います。

きっと、その時代にリアルタイムで観ていた人と、今はじめて観た若い人たちとの交流があり、さまざまな視点と感性が交差する、よい場になったろうなぁと思います。

自分が、映画文化の継承にまだまだ貢献できていないことを悔しく思います。

 


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まぁでも!

きっとこれから先もある!

最後の最後になってしまいましたが、感謝の気持ちを込め、どうにか『七人の侍』を観ることができたから、よかった。
  

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いやー、よかったです!ほんと、このタイミングで観てよかった!

 

4Kデジタルリマスターを映画館で。

画も音もきれいになって、台詞も聞き取れるようになって(一部よくわからないとこもあるけど)、この映画の本来の魅力をどーんと受け取れました。

この名作を映画館の大スクリーンで観る、この僥倖よ。

 

モノクロがとにかく美しいのです。

家のPCやTVモニターでは、ここまで実感できない。

それにね、やっぱり没頭して鑑賞することが歓迎され、貴ばれている場所で体験するってやっぱりいいものだと思います。そのための専用の館で。

襟を正すというのか、こちらもきちんと準備をして、非日常に入っていく体験というのは、やはり専用の館で、お金を払って得られることかなと思います。

これは「日常にアートを」っていう話とはまた別のことです。

 

 

尺について

きょうは207分のオリジナル版です。3時間27分。

昔、高校生のときに観たのは、短縮版でした。それでも160分あったな。

音が割れていたり、台詞がよく聞こえなかったり、画面が暗かったりして、途中で寝てしまいましたね。

207分は、まぁ長いといえば長いのだけれど、映画の作り込みが凄まじいから、引き込まれて見入ってしまいました。

未見の方には、これはぜひオリジナルの長いほうを観ていただきたい。

それと日頃から、能、オペラ、バレエ、コンサート等の舞台鑑賞、美術館や博物館などでの鑑賞、競技かるた等で鍛えているので、3〜4時間ぐらいはわりと平気で、集中力が持続します。

前の晩もよく寝て、体調を整えて臨みましたよ!

 

 

1954年製作の映画。

黒澤明14本目の作品。

戦後まだ10年経っていない中で、これを打ち立てねばという気概に溢れている。

俳優さんたちがキラッキラしている。特に木村功。なぜか三船美佳に似ている。

若いエネルギーってやはり素晴らしいな!と思う一方で、数多くの伝説を残す黒澤明の現場、さぞかし過酷だったろうなぁと想像しながらも観ていました。

あれもこれも作ったのか?
これは演技じゃなくて素でやってるかも?
いやまさか?でもあり得る...とか、脳内でいろいろ考えてしまいます。

 

 

ハブとなるもの

以前、聖書を読む会という学びの場に参加していたときに、この世界を知ろうとするときに

・ハブになっているものにアクセスすること
・その原典を「読む」こと

の2点が大事と教わりました。

 

今回の「七人の侍」はまさにそれだったかなと思います。 

歴史を変えた映画、さまざまな映画に影響を与えた革命的映画を堪能できてよかったです。

ようやく積み残しの荷物を取りに来られたような気がします。

 

 

〈午前十時の映画祭〉

このあと残っているプログラムは、

七人の侍」と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ3本です。

ぜひお運びくださいませ。

午前十時の映画祭10 デジタルで甦る永遠の名作

過去の映画祭のラインナップは、トップページ右下のプルダウンメニューから。


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残っている印象、感想あれこれ

  • メタル感のある画面。まさに銀幕。
  • わたしが生まれたとき、当然まだ黒澤明は現役で映画を撮っていて、『乱』の人として認識していた。その後、『夢』『八月の狂騒曲』『まあだだよ』から亡くなるまで、同時代の人だった。それがもう古典の人になっているんだなぁ!時代の移り変わりが早い。
  • あり得ないことを起こす、身分・立場の境界線を持ったまま協働する。
  • 強風、砂埃、大雨、泥、空腹、板の間、むしろ、寒さ......常時快適さがゼロの環境!
  • 漫画『銀牙 -流れ星 銀-』を思い出す。みんな犬みたい。いや、どちらかというと、銀牙のほうが七人の影響を受けたのか。
  • どうして百姓の「金にも出世にもならん」話を受けたのか、というのが実はまだ謎。まずは実際に食えることが死活問題だったから?百姓を哀れに思って?単におもしろそうだから?お互いの人柄に惚れて、ただ一緒にプロジェクト回してみたい!と思ったから?はみ出してる人たちが、人との関わりあいを通して、生存意欲を確認した?このへんの豪気・豪胆さみたいなものがよくわからなかった。
  • 一人ひとりのキャラが立って、役割分担がされていく過程がなんとも絶妙。
  • 「可哀想で純真なだけじゃない百姓」というリアリズム!ここを描いたのがすごい。落ち武者狩りしちゃう。。
  • この映画における百姓って何を示そうとしているのか?今の社会背景からも近づけられそうな感じもある。
  • 戦いの最中に発生する勝四郎の性の目覚め、久蔵への思慕なども、効いている。若さがあふれてるんだ、勝四郎...。
  • 女の人が、戦争時にどういう立場になってしまうのか、もリアル。
  • 三船の何をしでかすかわからない、アイスブレイカーな役割や、単純さと、一人だけみんなと違うことの劣等感や人生における複雑さを抱えた、なんとも言えないキャラクターを三船が相当入り込んでいて、すごい。
  • 実際に野武士との戦いがはじまってからの、息もつかせぬ感じ。ずーっと何かが少しずつ展開していく。緊張と弛緩と、視点の置き方。すごい。そしてかなりエグい。野武士もエグいが、百姓もエグい、グロい。正義と悪とか、そういうことではない。
  • 野武士あと何騎、種子島(火縄銃)あと何挺と、頭の中でこっちもカウントしていく感じ、イイ巻き込み方。
  • 野武士の人たちがいったいなんなんだかよくわからない。野武士の顔や見た目も映るのだけれど、そこに寄らないので、人間一人ひとりの印象としてはない。だからなのか、野武士が襲われても、亡くなっても、こちらに痛みが走らない。逆に過剰な憎しみが芽生えるようにも描かれない。七人に魅力を感じながらも、戦の物語をこんなに引いた場所から観られるってちょっと不思議な感覚ではある。
  • 今だったらちょっと考えられない、できないような無理が、人にも動物にも環境にもかかっていたんだろう。名作だけど、なんというかあらためて凄まじいものが出来ちゃったんだなとちょっと呆然とする。命がけの映画。あとは莫大なお金と...。


というわけで、いろいろ知りたくて観た

復習にトークショーもよかった。 

こちらは2016年の4Kデジタルリマスター版上映記念のトークショー

製作、撮影、時代背景が語られております。鑑賞後にぜひ。3本とも必見です!


 

 

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鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント、感想パフォーマー
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