ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

『津田清楓展』@練馬区立美術館 鑑賞記録

津田青楓展に行ってきた。

青楓は"せいふう"と読む。 

 

練馬区立美術館の公式HP

生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和 | 展覧会 | 練馬区立美術館

 

美術手帖の記事

bijutsutecho.com

 

 

とてもよかった。
津田青楓、なんという縦横無尽な人なのか。

画風、技法、モチーフ。一点一点が全部違う。

図案、本の装幀、水墨画、フランス刺繍、油彩、水彩、ヌード、スケッチ、書......。

98年も生きた人なので、どんどん変化していくことは、それはあるだろうけれど、こんなにも......!

 

一つひとつが新しく懐かしい。

躍動感。

思いがけなさ。

圧倒された。

 

小かと思えば、大

静かと思えば、動

明かと思えば、暗

淡いかと思えば、濃い

抽象かと思えば、具体

 

特に印象深いのは、2階上がってすぐの小部屋の本のコーナー。

一つひとつが全然違う!(そればっかり言っちゃうけど)

 

次の部屋、油彩の「夏の日」。

描かれた群像さえも、一人ひとりが全く異なる。

同じ場所にいるのに関係を結んでいない。

それでいて、日差しの強さや木陰のひんやりした感じはリアルに伝わってくる。

そして目に飛び込んでくる色!

 

そして、左翼運動家を描いた「犠牲者」。

どんなビジュアルかはわかっていたけれど、生でみるとやはり迫力がある。

まず思っていたよりも大きい。等身大に近い?

そして、拷問の痕が生々しい。

よく見ると局部も剥き出しになっている。

左下の鉄格子のはまった小窓から見える国会議事堂の斜めの「表情」。

(後日、『新聞記者』を観たときにこの絵のことを思い出した)

 

それでも、彼を生かしてきたのは、いつでも仲間や理解者の存在だったのではないか。

展示のテーマでもあるので当然だが、随所に親交の温かみが見て取れる。

愛された人だったのだろうな。

 

アーティスト・表現者にとって、健やかで長生きするというのは、とても重要なことだと繰り返し聞いてきた。

同じように、一つ所に集まって、文学談義など盛んにしていた交友関係も広かった芥川龍之介はなぜ亡くなったのだろうか、やはり身体が傷んだり病んだりすると精神も辛くなるのだろうか...など、先日行った田端文士村記念館での展示を思い出した。

 


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メモをとってはきたけれど、わたしは圧倒されているばかりで収拾がつかないので、一緒に行った友人のnoteを紹介する。

 

note.com

油彩、水彩、書、テキスタイル、本の装幀、着物、
どれか好きなら、きっとグッとくるかと。

うん、間違いない!!

 

なんの気なしに誘ったんだけど、とても喜んでもらえて、思いがけずいろんな橋を架けられたようで、わたしもうれしい。

 

 

 

予習はぜひこちら、青い日記帳さんの充実のブログ記事で!

「津田青楓展」 | 青い日記帳

 

 

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お土産は図録と迷って、図案集を買った。

青楓にとっては初期の、全画業からすればほんの一時期のことだってわかっているんだけど、これは惹かれる。

眺めていたいし、もっともっとたくさん見たくなる。不思議。

 

後ろにある藤井健三さんという染織研究家の方の解説が、これまた詳しくてありがたい。展覧会で観たものの記憶を立ち上げながら読むと、何倍も体験が深くなったような感覚。

 

出版社は、芸艸堂(うんそうどう)。

https://www.unsodo.net/index.php

日本唯一の手木版和装本出版社......へぇ、こんな出版社があるんだなぁ。

 

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図案がたくさん載っていて、ぬりえがしたくなっちゃう。

わたしも描いてみた。薄めの紙に写して色を塗って。

 

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難しかった!

図案集の中で一番シンプルなものを選んでみたのだけれど。

写してみると、描いた人の鋭い観察眼の色や比率のバランスなどが感じられた。




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この感染症流行の時期にも、ここの自治体が判断して、開くことを決めてくれて、うれしい。

わたしにとって鑑賞は余暇の趣味や気晴らしなどではなく、生のために必需の行為。

 

美術館での作品鑑賞は、基本しゃべらないし、(なんなら会話禁止にすればよいし)、さわらないし(さわっちゃいけないし)、あらためて相当安全な行動だなぁとは思った。フェルメール展やゴッホ展ならともかくね。

それで外出して、精神も健やかでいられるなら、いいのでは、と。

 

いえ、もちろん、いろいろな判断があるのはわかっているけれども。

一律でなくてよい、ということも忘れないでいたい。

 

「誰かと見に行って、近くのカフェで感想を60分脱線せずに話しきる」をすると、いいですよ。

これも一番小さな鑑賞対話の場。

 

 

板橋区立美術館でも展示がはじまる。

深井隆 -物語の庭-|板橋区立美術館

 

行きたかった展示なので、とてもうれしい。
応援の気持ちをたっぷり持って、観にいく。

 

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鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント、感想パフォーマー

seikofunanokawa.com