ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

《レポート》映画『37セカンズ』でゆるっと話そう

シネマ・チュプキ・タバタ映画『37セカンズ』でゆるっと話そうをひらきました。

chupki.jpn.org

 

〈ゆるっと話そう〉は、映画を観た人同士が感想を交わし合う、45分のアフタートークタイム。

6月から毎月開催してきて、今回が10回目となりました。

 

未曾有の感染症が世界を席巻している今、対面の場をひらくことがいいことなのか、すごく悩みました。チュプキさんとも何度も相談を重ねて、最終的に実施することにしました。

わたしの思いとしては、なんらかの事情で家にいられない人、孤立していて不安で辛い人もいると思う。日常を営んでいる場所、安心やつながりを感じられる機会が、どこかにあってほしい。「映画を観に来てよかったな、ホッとしたな」と感じてもらえたら。

もちろんそれが主目的ではなく、映画の話をするための集いではありますが。

 

このような状況の中でひらくのは、プレッシャーやストレスもありました。

でもチュプキは20席ほどの小さな映画館。今の時期はお客さんの入りもゆるやかで、お客さん同士は離れて座っている。入館前の消毒や、体調不良のときのキャンセル、マスク着用など、とても協力的とのこと。

 

一つ所に集まること自体がリスクになる状況ではありますが、それでもこの映画自体がとても希望にあふれるものだから、やはり今、語りたいと思いました。

 


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できるだけ接近しての会話を少なくするために、進め方をいつもと変えて、「しゃべらずに話す」という方法を試みました。

これは、感想を交わすためにしゃべる以外のコミュニケーションだってあるだろう、と考えていたときに、チュプキがユニバーサルシアターであることを思い出し、筆談のようなことができないかと思い立ったものです。

感想を文章でも、単語でもいい、色や形でも表現しながら、みんなと話したような気持ちになれたり、一体感を味わえるようなことをやってみよう。

チュプキのスタッフさんと相談しながら準備しました。

 


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日劇場に着いてみると、ゆるっと話そうのリピーターさんや、「やっと参加できる」と楽しみに来てくださった方もいらっしゃり、なんと10名もの方がご参加くださいました。

このような状況下で、ほんとうにありがたいことです。 

 

常連さんから桜茶の差し入れがあったので、お配りしました。蓋を開ければ小さなお花見!きれい。

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当日はこのように進めました。

・好きな色のペンを手に、A4用紙の真ん中に、映画を観たばかりでほやほやの感想を一つ書く。

・それをお隣の人にまわして、コメントを書いてもらう。

・またそれをお隣の人にまわしてコメントを書いてもらう。

・常にだれかの用紙が手元にあって、まわしていくたびにコメントが増えていく。

・最後自分のところに戻ってきたものには、たくさんのおしゃべりの跡がある、という具合です。


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黙って書いているのに、コメントを読んでいるとみんなでわいわい話している気持ちになる。


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視覚障害の方にはガイドさんがついて、説明や代筆をしてくださっている。自分で書く方もおられました。


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最初のコメントが一人ひとり全く違うところからスタートしているので、一枚ごとの紙面で独自の話題が展開していきます。文字や絵を見てそれに加えていく会話は、誰が書いたのかわからないという匿名性もあいまって、口頭でしゃべるときには味わえない体験となりました。

一人として同じ視点からのコメントがなかったのが、参加してくださった方々の創造の力であり、このワークの力でもあり、そして何より映画の力だったのでしょう。

印象に残ったところ、好きな登場人物、疑問に残ったこと、映画から受けた影響、思い出した自分のことなど、映画についてたくさん話しました。


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こちらの紙はお持ち帰りいただいて、鑑賞の記念にしていただきました。

 

 

もう一枚、チュプキに置いていっていただくカードを書いていただきました。

感想を「話した」ことで深まった映画への思いや、きょうの場についての感想、今の気分などを文字や絵で残してもらいたい。

 

皆さんの思いが劇場の内扉に集まりました。

 

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文字で表現してくださった部分の書き起こしです。

 

・どこへ行こう?あなた次第よ。いつも胸に持っていたいです。

・ゆるっと話そう。紙面で。口頭での対話よりも流れていってしまわないから、細かくお話できて、とてもおもしろかったです。また他の作品でも参加してみたいです。

・主人公のユマちゃんがとにかく可愛い!くるくる変わる表情、たおやかな演技!展開も飽きさせないし、美しい風景もあり、面白く感動できます。素敵な映画です。シネマチュプキタバタ最高!! 

・まわし書き、楽しかった。

・ちょっとした「交換日記」みたいな感じで面白かったです。映画の感想は、十人十色だと思いました。37セカンズが観たかったのと、このイベントに参加したかったので来ました。今後も予定が合えば参加したいです。

・感想をシェアするってキンチョーする〜

・自然の景色がとても美しくて ストーリーに関係しているのか 絵葉書のようにずっと見ていたい

・時間をかけて来た甲斐ありましたー 映画もゆるっとも。今回、良い試みですね。

・今回で”ゆるっと話そう”への参加は2回目なのですが、ほとんど全員の方と話した気分で面白い体験でした。しかも字に残ったものを持ち帰れるのは記念になるし記憶にも残ります。

・「37セカンズ」について 予告編を見た限りでは、いったい物語はどういう風に展開していくのかと思いましたが、本当に心ゆるやかに一人の女の子の成長が描かれた、自分の生き方にカツを入れられたような作品でした。もっと恐れずに、いろいろなことにチャレンジし、他人の事にもっともっと関心(気配り)をして生きていきたいなと感じました。

・障がいある事で、親が介護の中で生き、恋愛や性の自由がうばわれてしまって辛い方も多いのかなと考えました。自分の人生を歩んでいける社会になるには、私は何をできるのか...と思いました。

 

 

 

日々いろいろな思いが巡りますが、わたしは今、皆さんとよい時間を過ごせた喜びにずっと満たされています。

ご参加くださった方、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました。

 

次回のゆるっと話そうの日程や作品は、決まりましたらまたご案内します。


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そうそう、最近リリースされた「ぴあ」の記事が、チュプキらしさをとても伝えているので、ぜひ読んでいただきたいです。わたしも登場させていただいてます^^

lp.p.pia.jp

 


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鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント、感想パフォーマー

seikofunanokawa.com