ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

〈レポート〉5/22 おうちで映画を観にいこう#3『サーミの血』

〈おうちで映画を観にいこう〉第3弾、ひらきました。

 

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おうちで映画を観にいこうは、

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をして、会えなくても、映画館に行けなくても、一緒におうちで映画を楽しもうぜ!という集いです。

オンライン配信されている作品からピックアップすることで、ミニシアターも応援しよう!という企画でもあります。

第1弾は、『ホドロフスキーのDUNE』レポートはこちら

第2弾は、『ラ・チャナ』レポートはこちら

 

 

今回の作品は、『サーミの血』

ptix.at

 

家族、故郷を捨ててでも少女が願ったのは、自由に生きること。
1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族サーミ人は差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。

そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た――。(公式サイトより)

 

どこの地で生まれたか、どんな民族に生まれたか、どんな両親から生まれたか。

文化、風習、言語。

誰しもその人固有のルーツと"血"を持っている。
この映画を観て、自分のルーツを思い起こす人がいるかもしれない。

また、隔絶されたコミュニティから、引きちぎれるように脱出し、自立していく一人の少女に共感する、危うさにハラハラしながら見守りように観る人がいるかもしれない。

はたまた、サーミを、映画『アナと雪の女王2』に登場するクリストフや架空の民族「ノーサルドラ」のモデルと知って、関心を持って観るかもしれない。

観終わったときに残る風景、感情はどのようなものか。

皆さんからどんな感想が出てくるのか、楽しみに当日を迎えました。

 

 

 

当日のこと

なんと前回とまったく同じメンバーが集ってくれました。

2週間前に話したばかりなので、緊張もなく、わいわいとはじまり、ほんとうに友だちと集まって映画を観にいくような感じで、「じゃああとで話そうね!」と別れました。

 

終わってすぐ出た感想はこんな感じ。

・緊張感がある映画

・どうしてあれほど故郷を出たかったのか。あの強さはどこからくるのか

・あれは恋愛だったのか

・若いときってああだった。先が見えないから、目の前に出た藁をも掴む感じを思い出した

・自分も経験した思春期の無鉄砲さや性への関心を思い出した。今となっては、よく生きてたなと思うほど危うかった

・差別と偏見、排斥。いくつかの行動や言葉に衝撃を受けた

・日本にもある都市と地方の差も感じた。びっくりするほど違う。

・家族と自分の関係について考えた

 

「差別と偏見はなくならない。いつの時代も、どこの土地にもあるけれど、わたしたちは、この頃からきっとよくなっている」という話が印象に残っています。

映画の中には、サーミの子どもたちを寄宿制の学校に入れて、スウェーデン語を教えて同化政策をとろうとしているけれど、進学への門戸は開かない。
同化させながら差別して隔離し続けるという矛盾に満ちた政策がとられていた、1930年頃のスウェーデンが描かれています。

今は、「ああすることはよくなかった」をいう学びをたくさんもっている。

人間は、自分の身を守るために、異質のものに恐怖や嫌悪をおぼえてとっさに線を引くという防衛反応を性質として持っている。

でも、なぜそれが起こるのか、どうすればいいかを知ることや学ぶことを重ね、人に伝え、子に伝えていくことができる。

ただただ、そうしていくしかないのだろうなぁと思います。

 

ラストシーンの解釈についても、いろいろな見方が出ました。
宿題というほど大きくはないけれど、自分がこれから老いて見る景色であるかもしれず、印象に残るシーンです。

 

ご参加くださった皆さま、関心をお寄せくださった方、ありがとうございました。

 

 

ふりかえり

この映画は、正直重いです。

主人公自身が安らぎを感じているときがないので、それに影響されてこちらもずっと緊張感が続きます。「これ以上ひどいことが起きませんように」と祈るような気持ちで見ていた、という方もいました。
誇りが奪われていく、居場所がなくなっていく辛さがあるのですよね。

 

それでも、今回わたしがこの作品を選んだのは、こういう重さの中に、観る人が知りたかったことや、望みが見えてくるのではないかな、と思ったからです。

普遍性がある映画だと思いました。

「映画の存在は知っていたけれど、自分一人ではやはり観なかった作品だった。今ちょうど自分のテーマになっていることだったので、観られて、話せてよかった」という感想もいただきました。

そうそう、一人で怖ければ、こんなふうに「みんなで観にいく」という方法もあります。

 

逆に、「みんなに観てもらいたいけれど、重い気持ちにさせそうだ」という怖れを持っている主催者の方は、上映に対話の場をプラスするといいですよ。

対話が映画の衝撃を和らげたり、重さの中から共に希望を見出すプロセスを進めてくれます。

 

少しずつ感染症流行の状況も変わってきて、地域によっては映画館が再開されるというニュースも入ってきています。喜ばしいことです。

一方で、今回のチャレンジでわかったのは、これまで会えなかった人や映画に会えるチャンスがオンラインにはたくさんあるということでした。

これからもリアルの場づくりも開拓し、オンラインの可能性も拡張していきたいと思います。

 

 

▼公式サイト

www.uplink.co.jp

 

 

▼配信サイト

www.uplink.co.jp

 

 

▼参考記事

cinefil.tokyo

 

webneo.org

 

 

Information

2020年5月31日(日)『プリズン・サークル』感想シェア

chupki.jpn.org

 

2020年5月26日(火)『パンデミックを生きる指針』ウェブ記事感想シェア

hitotobiselection2.peatix.com

 

 

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