毎日小学生新聞の本の紹介欄で知った写真絵本。
女の子と背中のネコが同時に目を細めている表紙が印象的で、今すぐ読みたいと思った。
めくっていくと、アルバムのようなつくり。
レイアウトされたモノクロ写真にコメントが添えられている。
家族の父で、これらの写真を撮った鈴木六郎さんの筆跡もあれば、著者の指田和さんが、遺族の話を聞いて添えたものもある。
お父さんの眼鏡を借りて、
4人きょうだいと従姉妹が手をつないで、
海辺でおにぎり、窓いっぱいに落書き、満開の梅の花に手を広げる、
弟の誕生、草むらに寝転んで、ネコといぬと遊んで、、、
家族の一人ひとりがほんとうにかわいくて愛おしくてたまらないと、カメラを構える六郎さんの気配がする。
六郎さんの写真もある。妻のフジエさんが撮ったのだろうか。
一枚一枚からあふれ出る愛。幸福。
犠牲の数字の大きさや凄惨さ、終わらない苦悩の深さに目が眩んでしまう。
けれども、ここには、笑顔と愛にあふれる家族が、確かに生きていた記録がある。
知らないこの家族のことを一瞬で大好きになってしまう。
そのおかげでわたしは出来事を見つめることができる。
どんな重大なことも、具体的な人間の生を通してしか、ほんとうのところは理解できないのじゃないか。
実在にせよ、架空にせよ。
誰かが編んでくれて橋渡してくれた、誰かの表現を通じてようやく、わたしの貧しい想像力は最大化される。
新しく「発掘」し続け、解釈し続ける。
人々の、そのたゆまぬ努力を讃えたい。
英訳も全ページについているから、日本語話者でない方にもシェアできる。
隅々まで丁寧に愛を込めてつくられた本。
出版してくださってありがとうございます。
広島といえば、こんな本も思い出す。
映画監督でもある西川美和さんの『その日東京駅五時二十五分発』
なぜか忘れ難い一冊。これもまた、具体的な人間の生。
*7月25日(土)20:00〜
オンラインでゆるっと話そう『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
noteでも書いたり話しています。