ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

NT Live『夏の夜の夢』鑑賞記録

イギリスNational Theatreで行われる演劇公演の録画を映画館で観られるNT Live。

今回は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を観てきた。

https://www.ntlive.jp/midsummer

 

 

spice.eplus.jp

 

予習してもあらすじがよくわからないし、カタカナの名前が頭に入ってこないので、ついていけるかやや心配だったけれど、全く問題なかった。観ていればわかる。

いやーもう、ただただ楽しかった!!

終始チャーミングで愛にあふれていて、笑って踊って楽しむ、まさに喜劇!

性や"人種"の別をぶっ飛ばした、自由で開放的な人物像!

天井から垂らされた布を使ったエアリアル(空中パフォーマンス)や、突然シンガーが登場して歌い出したり、劇中劇をヒップホップで披露したりと、すばらしいショウ!

ベッドが置かれた台が上下や左右に移動し、その間を自在に俳優が動き回るエキサイティングな装置!

アテネの時代と妖精の世界、
シェイクスピアの時代とロンドンのブリッジ・シアター、
それを観ている現実のわたしと映画館を出れば日常に戻るわたしが、行き来しながらパラレルに同時に進行している、不思議な体験だった。

 

なんでもアリの大盤振る舞いの宴に、この作品の魅力をまるごと体感できた気分。

 

わたしはこの作品は『"真"夏の夜の夢』というタイトルで認識していて、勝手に「8月のすごく暑い夜に起こる、妖精がひらひらと踊る幻想的なお話」のイメージを持っていた。

でも原題は、"A Midsummer Night's Dream"。

"Midsummer"は夏至。Midsummer Nightは夏至祭前夜。五穀豊穣や子孫繁栄を願って、お酒を飲んで乱痴気騒ぎをする日なんだそうで、つまりその中には男女の交歓や結婚なども設定されていたようだ。日本でいうところの歌垣にあたるのかな?

真夏の夜のフェアリーテイルから、大人の喜劇へと、イメージが書き換えられました。

 

 

これまでの上演の歴史からすると、今作はかなり意欲的で斬新な変更(立場、性別)や台詞の追加やアドリブもかなりあったようで、シェイクスピア研究家から見ると逸脱しすぎでは、という評もあったよう。

たとえば、妖精の女王ティターニアと王オーベロンは、原作ではオーベロンが画策してティターニアを騙す行動をとるが、今作では、その立場が逆転していた。おそらくここが一番大きな改変。

さらにジェンダー・ブラインド、カラー・ブラインドなキャスティングは、まさに現代的な役割を背負っていた。オペラやバレエ、映画などで観てきたけれども、やっぱり演劇でもこの動きか!とわくわくした。

そういえば、だいぶ20年近く前の映画だけれど、『恋に落ちたシェイクスピア』も、シェイクスピア劇に出たい女性が男装して舞台に立とうとするという脚本だったな。

シェイクスピア演劇には、入れ替えたり、交錯させたくなるスイッチのようなものが仕掛けられているのだろうか?それが今の時代ととてもマッチしてきている?(仮説)

 

わたしのような素人から観れば、この作品との初めての出会いがニコラス・ハイトナー版でよかったと思う。幕間のインタビューも観たが、演出の意図はとても明瞭だったし、辻褄があっているという以上に、物語全体の進行によい影響を与えていたと思う。

今回はスタジアム型の劇場で、観客参加型を目指していたのもあり、こういう実験的な演出になったのだろう。

アドリブやお遊びも、たぶん現地で観ていたら、めちゃくちゃ楽しいはず。映画館で座ってみていても身体がむずむずするぐらいだから。

 

 

それに、毎回チャレンジがあるほうがシェイクスピア劇らしいとさえ感じる。

古典だから。

こういう実験版があるからこそ、「いつもの」「元々の」「他の」舞台も観てみたくなるし、調べたくなる。

古典、盤石!!懐深い!!

 

表紙がどれも素敵。 

 

 

最近2回観た『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で、ジョーとフレデリック・ベアは『十二夜』の芝居を観に行っていたり、ジョーの小説についてフレディが評するシーンでは、
シェイクスピアだって大衆向けに書いた」
「彼は大衆芸能と詩を融合した」
「わたしはシェイクスピアにはなれない」
「もちろん無理だ」

というようなやり取りをしていたので、タイムリーでもあった。

「わたしもまさに大衆芸能と詩の融合を観たよ!」とあの二人に言いたい。

 

 

わたしがこれまで鑑賞してきたシェイクスピア作品は、
マクベス
リア王
・リチャード二世(これが初のNTライブ)
ハムレット

そして今回『夏の夜の夢』をようやく観られたところ。

まだまだ観てない作品のほうが多い。

しかも演出や演者や表現形式(演劇、バレエ、映画等)や上演形式(生か映画館か配信か)によって全然受け取るものが違うはず。

シェイクスピア」というジャンル!これまた果てしない道!(楽しい)

 

 

『夏の夜の夢』を近々バレエやオペラでも観てみたいなぁと思って調べたら、

なんと10月に新国立劇場でオペラ版があり、しかも演出がデイヴィッド・マクヴィカーである!最近、鑑賞仲間と夢中になっているMETオペラ・ヘンデル『アグリッピーナ』の演出家ではないですか。これは観たい!

www.nntt.jac.go.jp

 

こうして鑑賞体験が少しずつ繋がっていくのが楽しい!

 

さらに友人が教えてくれた、東京芸術劇場では演劇の舞台がある。

www.midsummer-nights-dream.com

 

いやはや、シェイクスピアってすごいな。
東京ってほんますごいな(いつでも、どこでも、なんでも演ってる......)。

と思いつつ、

しかしこのところの新型コロナウィルス陽性者の急増で、現在チケット販売が中止になっている。

復活しかけたところでのこの状況。わたしも辛いが、舞台関係者はほんとうに辛いことだろう......。

 

祈ること、こうしてブログを書くこと、自分を健康に保つことしかできないけれども、それを続けていく。

よい舞台を、出会える上映の機会を、ありがとうございます。

 


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▼NT Live(日本の公式サイト)

https://www.ntlive.jp/

 

▼NT Live(イギリスの本家サイト)

http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/

 

Youtubeチャンネル(無料ストリーミング配信もあり。英語字幕表示可)

www.youtube.com

 

▼2019年に配信したポッドキャスト。畏れ多くもシェイクスピアを語ってしまった。

note.com