どなたのツイートだったか忘れたけれど、ふいに流れてきた紹介に惹かれて、そのまま図書館に予約を入れた。
本を読んで涙するのは久しぶりというぐらい、とても心揺さぶられた。
主人公はアメリカのハイスクールに通う日系アメリカ人の女の子。
誘われるままに夏休みのディベート大会に出場する。テーマは、"広島と長崎への原爆投下の是非"。彼女は否定派のスピーチを務める。リサーチや当日の体験を経て、自分のルーツに触れ、成長する姿を描く。
......というのが大枠。
まず驚くのは、本格的なディベートってこうやるんだ!と知ったこと。
ワークショップの一環で、真似事みたいなことはやったことがあるけれど、これほど綿密なリサーチを重ね、いくつもの手札を準備して、チームで勝ちに行く戦略を立てるようなディベートはやったことがない。
さすがスピーチ文化のアメリカ(を舞台にしている)。
そして、ディベートを通じて浮き彫りにされていく、様々な過去の事実にも驚いた。
わたしは知らなかった。
あるいは、指摘されるまでその繋がり、繋がり方について気づいていなかった。
どこかで止まっていた思考を、スピーチのたびに繋げてもらっているという感覚があった。否定派、肯定派にかかわらず、一人ひとりの人間のルーツや背景、感性からの言葉が読み手を揺さぶってくる。わたし自身も問われている。
答えに窮する瞬間も含めて、まるで読みながら同じ会場にいるかのような躍動を感じた。
8月6日と9日に起こったことだけではない。
人類に起こってきたこと、起こっていることすべてが、このディベート大会に集約されているように感じられて、胸が熱くなった。
勝つことを目標にするから本気で戦える。
けれども目的はこのような議論の場をつくることだ。
考え、感じ、表現し、人びとと分かち合うことだ。
人びとと分かち合うことだ。
小説なのだけど、運びはとても漫画のようで、そのつくりもおもしろかった。
これは言ってしまうとおもしろくないので、ぜひご自身で確かめていただきたい。