2020年10月。
METライブビューイングのアンコール上映 にて、2016年のビゼー『真珠採り』を鑑賞。
http://met-live.blogspot.com/2015/07/2015-16-05.html
こちらのレビューで、
「METでの再演が100年ぶりとのことで、お蔵入りになるどんな理由があるのかと思いきや、これはもっと有名になってもよい作品では?」とあり、「これは観なくては!」と珍しく10日前から予約を入れて楽しみにしていた。
2時間35分の上映時間も、オペラにしてはめちゃくちゃ短い。気軽。
ここから解説やインタビューなどをのぞくと、本編は2時間弱。
休憩1回。オペラ初心者向けかも。
レイラ役のソプラノ、ディアナ・ダムラウの美声、どこかで聴いたことが?と思ったらYou Tubeにあがってるロイヤル・オペラ・ハウスの『魔笛』夜の女王のアリアだ!
あんな高音をピアニッシモで美しく、しかも決して弱々しくなく、奏でるように歌う……素晴らしかった。彼女が今回の再演をゲルプ総裁に提案したという。
そういう経緯もよい。
バリトンのマリウシュ・クヴィエチェン、いいなぁ、また聴きたいなぁと思ったら、「歌手からは引退」ときのうのツイートで見てびっくり。
演者、歌手の活躍する舞台との出会いはほんとうに一期一会なのだな。
大切にしようとあらためて。
物語としてはわりと、ツッコミどころ満載。
だけど、人の言いなりでふわふわしていたレイラが、愛に目覚めたことから、自立していく様子は、どこか「源氏物語」の浮舟を想起させた。
海に潜る危険な仕事。保安と豊漁を祈ってくれる巫女への期待は、相当大きかったはず。それだけに、裏切りが発覚したときの怒りもまた大きかったろう。
あの狂気はどこか身に覚えがある。
プロジェクション・マッピングとワイヤーロープが効果的に使われていて、海に潜るシーンは音楽と相まって、心地よく、夢のよう。
一点、幕間で津波の映像がスクリーンいっぱいに映し出されていたのは、かなりキツかった。目を閉じてやり過ごした。これは日本でかけるときは、事前にアナウンスする等、配慮が必要な演出かと思う。
貧しく閉塞的なコミュニティと信仰との結びつきや、歪みのある三角関係は、『ポーギーとベス』にも似る。舞台が海辺で、始終薄暗く設定されているところも。
歌唱(独唱、二重唱、合唱)、音楽、構成どれも素晴らしく、短い中にもドラマがあり、あっという間の2時間半。
また別演出、別キャストで観てみたい。
今季のアンコールはこれで〆。
豊かな時間に感謝。