ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

『小泉八雲 放浪するゴースト』展と新宿歴史博物館 鑑賞記録

小泉八雲・放浪するゴースト展を観に、新宿歴史博物館へ。

新宿歴史博物館 令和2年度特別展 「生誕170年記念 小泉八雲」(10月10日から開催)-新宿歴史博物館

 


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小泉八雲ラフカディオ・ハーン

生誕170年記念の展覧会。
人生最後の15年を新宿区富久町と西大久保で暮らした縁により、この会場での開催。

"八雲は、絶えず自分を放浪へと掻き立てる衝動を幽霊(ゴースト)と呼んだ"



2部屋の小さな展示スペースにも関わらず、八雲の人生、家族、交友関係、人柄、才能、ルーツとライフワークについて知ることができる。みっちりとして分厚い。小泉八雲について、一気に理解と連結が進んだ展示だった。

民族学クレオール、放浪、怪談、異界、神話、民話、アイルランド、ルーツ、言語、物語、歌、スケッチ、明治、家族……。

わたしにとっての八雲は、小学生のときに使っていた英語のテキストに「むじな」が出てきたこと、20歳の頃に松江の旧小泉八雲邸を訪れたことなどが大きい。

家族のあいだだけで交わされていた「へるんさん言葉」を使った手紙、
長男・一雄の教育のために英字新聞で作ったテキスト、
焼津での夏休み、
一雄の名を自分の名の一部「カディオ」を使ったこと、
吸口に大津絵の鬼の念仏の入った煙管、
アイルランド時代のトラウマ、
父のように慕ったワトキンとの書簡(不思議とワトキンからの手紙の展示はなく、八雲からワトキンへの手紙のみ)

......などなど、目を惹かれるものがたくさん。

波乱万丈の日々の果てに、日本に辿り着いてくれてありがとう。

 


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なぜいつも横顔の写真ばかりなんだろう?と思ったら、10代の頃に左目を失明したから正面から撮られるのを避けたのだほう。それでも一雄を真ん中に、両側から父母が向かい合う(こちらには横顔)ように立っている七五三の写真などは、とてもすてきだった。

右目も強度の近視で、原稿用紙に顔を近づけるようにして書くために、八雲専用に高さを調整した特注の机も、複製が展示されていた。

いやはや、ほんとうに充実でした。

図録はその展示をまんま転写したかのような丁寧さで、あとから復習するのにとても良い。さらに、冒頭の小泉凡さん(八雲の曾孫)や、展覧会を監修した研究者の池田雅之さんの寄稿も興味深い。そして、巻末の年表!これは一つずつ追っていくと、展示では語り尽くせなかった「あいだ」のことが知れて、実におもしろい。



おすすめの順路としては、

1階ロビーで流れているビデオ視聴

企画展鑑賞

図録でおさらい

また、この展覧会を観たあとは、国立民族学博物館刊行の『季刊民族学 170号』もおすすめ。民俗学者としての八雲、八雲に影響を与えたアイルランドニューオーリンズの土地と文化、日本への眼差し、など盛りだくさんで、八雲についてもっと多面的に迫れる。

カップリング特集のメキシコの「アルテ・ポプラル」も間違いなくおもしろい。(これは展示もみんぱくに観に行った)

『怪談』を読むなら、来日100年記念に刊行された講談社学術文庫がおすすめ。とても読みやすく楽しい訳。



会期は2020年12月6日まで。
はりばる行ってもぜったい損しない、充実の展示。

 

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先日の港区立郷土歴史館に続いての、新宿歴史博物館だったので、常設展もじっくりと観た。
やはり郷土歴史館はおもしろい。

港区は、海とのかかわり、天皇家御用邸・御料地、武家屋敷など。
新宿区は、武家屋敷、宿場町、町人、商家、文芸、繁華街など。

展示から見えるキーワード、区や館としての力の入れどころもさまざま。

昭和のはじめごろに行った交通調査の結果がおもしろかった。同じ繁華街といっても、銀座と新宿と浅草では、歩いてる人の傾向が違う。

新宿区の文人と言えば、夏目漱石小泉八雲坪内逍遥夏目漱石は専門館があるので、近々そちらにも行きたい。
坪内逍遥については早稲田の演劇博物館が詳しい。

玉川上水の終点、四谷大木戸も新宿区。
去年、江戸から東京への、上下水道について調べていたので、木樋の展示には萌えた。

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さらに、館外の斜面に露出させた石樋の展示も個人的にはたまらない。



内藤新宿内藤町の歴史についてはもう少し調べてみたい。あそこの今の住所ってすごく変わっていた記憶。ラ・ケヤキ内藤町ではなかったか。

23区内の他の郷土歴史館にも行ってみたい。

 

今まで行った中では、

台東区は、下町と美術と遊興地。

中野区は、田園と陸軍関係。

 

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