ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

日本民藝館『アイヌの美しき手仕事』鑑賞記録

 日本民藝館で『アイヌの美しき手仕事』展を観てきた。

https://mingeikan.or.jp/events/


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考古学でも民族学でも民俗学でもない、民藝としてのアイヌ工芸。

日本民藝館では、1941年以来のまとまったアイヌ工芸展だそうです。ちょっと意外な感じがしました。なんとなくしょっちゅうやっていそうだし、1941年は太平洋戦争の開戦時期、というようなこともあって。

 

日本民藝館主催のオンラインレクチャーに参加して、鑑賞ポイントを教えてもらってからの、本日の鑑賞。
さすが、受け取るものが多い!

 

日本民藝館は特別の空間で、展示ケースにも展示方法、配置にも民藝館ならではの伝統がある、と。ほんとそう。空間自体が鑑賞の対象なので、他の美術館や博物館で鑑賞するのとは全く異なる体験。博覧だけではなく、美的、芸術的にどうかという観点がある。そのあたりも、あらためて味わいながら観てみた。

 

また、多くの場合、水平の衣紋掛けに背面が見えるように展示されているが、着たときの立体感はどうかも見てください、ともおっしゃっていた。

肩口から袖の文様の表れ方を想像。

前からも見られるものは回り込んで見てみたり。

 

展示室には学芸員さんがいらしたので、きのうのレクチャーのお礼をお伝えできて、新たに生まれた質問もできて、よかった。

質問したのは、「どんなふうに着ていたのか?本州の着物のように、帯はあったのか?」

帯はなく、紐でくくったり、女性は上から前掛けをして留めたりしたそう。あるいは前あきでコートのように着るか。

地域の違いはあっても、衣服上に性別の差はなかった。身近な人のためにつくった服ではある。

……と聞いて、どんな体格の、どんな人のために作ったのか想像しながら見てみると、これは腕が細いから女性かなとか、肩幅広くて勇壮な文様に見えるからガタイのいい男性かなとな、など見えてきて、おもしろかった。

 

図録は売り切れ。
雑誌『民藝』の特集号は売店にあった最後の一冊をたまたま買えた。


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他の展示も、どれも美しく。
ただただ、眼福。

やはりここに来ると背筋が伸びます。


大津絵の「塔」をそのまんま立体化したような、木製の三重塔が気に入りました。
あとは燈火器ばかりが集めてある部屋も。
燭台ってこんなに美しかったのか!

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今も生まれつづけているアイヌ工芸については、八重洲のアイヌ文化交流センターで観られるそう。

その他、東京国立博物館国立歴史民俗博物館国立民族学博物館静岡市立芹沢銈介美術館早稲田大学會津八一記念博物館、そして今年開館したウポポイなど、アイヌに関する収集、展示している施設は多い。

 

点在するものをいろいろ訪ねて行って、鑑賞者それぞれの学びを立体的につくっていくことをしてほしい。

すべての視点を網羅する展示はない。とりわけ今回の日本民藝館での展示は、解説という点では最小限で、ある意味"不親切"とも言える。しかしその分、鑑賞者自身の持つさまざまな知見や視点を発揮したアプローチが重要になる。より高度な鑑賞姿勢とも言える。

このことは、オンラインレクチャーで話しておられたことでもあり、わたしの共感からの言葉でも、記しておく。

 

▼参考資料として以下が紹介されていた。次のステップのために、読んでみたい。

 

光の美しい日で、玄関ホールの大谷石の上に、ガラスを通ってきたたくさんのプリズムが光っていました。