11/21(土)夜、シネマ・チュプキ・タバタさんのコラボの感想シェアの場、〈ゆるっと話そう〉をシアターにてひらきました。
第17回ゆるっと話そう: 『アリ地獄天国』
ある会社員が理不尽な労働環境と待遇の改善を求めて、会社に立ち向かった3年間を記録したドキュメンタリー映画です。
こんなご案内を出しました
がんばって働いて、自分と家族を幸せにして、会社に貢献したい。
そんな思いを打ち砕き、踏みにじる会社の誠意のかけらもない仕打ち。
さらに明かされていく、驚くべき差別と搾取の実態。
ブラック企業の構造を明かしながら、尊厳をかけて闘う人たちを映し、映すことを覚悟した現代日本のロードームービー(労働映画)です。主人公の西村有(あり)さんや、彼を支援する人たちは、このヤバい環境からなぜ逃げないのか、なぜ辞めないのか。なぜ闘うのか。怖くはないのか。
理不尽に見舞われたときに、人は何を思い、どのような状態になり、どう動くのか。
ここから思い出すこと、感じ考えることは人の数だけあるでしょう。
痛みも望みも、どちらも大切に分かち合えたらと思います。当日は、監督の土屋トカチさんも参加者として一緒に感想を話してくださいます。
また、久しぶりのシアターでの開催でもあります。
ご参加をお待ちしております。
11月21日シアターで開催!『アリ地獄天国』を観てゆるっと話そう
当日は満席での開催!
この争議を報道で見て知っていた方、監督の前作から関心を持っていた方、親しい人からすすめられて観た方、別の日に観て再度足を運んでくださった方、チュプキの常連さんなど、様々な経緯でご参加くださいました。
上映終了後すぐでもあり、土屋監督にもご参加いただき、熱気と興奮を帯びながらスタートしました。
みなさんが安心して話せるよう、「固有名詞や、個人的な話も出てくるので、それを詳細にオンライン、オフライン問わず、口にするのはお控えいただきたい」とお願いし、1人2〜3分ぐらいの感想を一周話していただきました。
さまざまな感想が出ました
※一部をご紹介します。
・自分も誰かが抗議活動で声をあげているシーンに出くわしたら、「怖い」と思うこともある。一方で「それほどまでに訴えたいことがあるのだ」とも思う。
・西村さんの争議と監督の思いと、2つの物語が進行しているのが興味深かった。
・観るまでは正直他人事だった。観たら他人事ではなくなった。理不尽なことも訴訟をすれば通ることがあると知れて、認識を改めた。
・こんなことがあったんだと事実を知ることができてよかった。氷山の一角だと思うが、これが映画になって社会に影響を与えて、世の中が変わっていくのはよいことだ。
・辛さを無自覚にして、すぐには言葉にできないほどまでに、自分を抑圧していたところに胸が痛くなった。
・3年もの間、想像を絶するストレスだったと思う。
・監督が絶妙なタイミングで出てくるところが、つくりとして興味深かった。
・日本の雇用慣行の影響は大きいと思った。離職することが不利になるなど。ぜひ次回大きな視点から撮ってもらいたい。
・自分が過酷な労働環境で体調を崩して離職したことや、友人のことなどを思い出した。
・ずっと会社員をやってきて、会社から言われたことに従う、そういうもんだと思って慣れてしまっているところがある。
・シュレッダー係なんて、あれだけの規模の会社なら専属で置いたりはしない、ということは嫌がらせのためだけの処置だったのだと、驚く。
・わたしならさっさと辞めるだろう。でも彼には太さ、他の人とのつながりがあった。
・ムカつく、やり返す!からはじまった行動だったが、次第に西村さんの言葉に筋が通っていく、力が入っていく感じがした。監督の関わりが大きかったのでは。
・深刻だけど明るい。西村さんの人柄のせいか。
・おもしろいと言っていいのかわからなかったが、扱っているテーマのわりに明るくてよかった。
・ユニオンの代表は、なぜあれだけの強さを持つに至ったのか、彼女が気になる。
・労組にかかわっているが、自分は組合員を不幸にはしたくない。ただ、外から「会社を潰す」という体で来られると内部からは反発が起きやすい。よくする気持ちを持ちたい。
・マインドコントロールされているように見えて怖くなった。
・途中まで劇映画的に見えていて、日本に蔓延している危うさのようなものを感じた。
・最後の監督の言葉を多くの人に聴いてもらいたいと思った。特に経営者に。
たっぷり1時間。それぞれの経験や今いる場所から、シェアしてくださいました。
土屋監督から補足やコメントもあり、感想だけでもない、質疑応答だけでもない場で、映画をじっくりと味わう時間となりました。
場をふりかえって
わたしが受け取ったのは、内なる変化、発見、学び、感銘、葛藤、違和感、疑問、悼み、勇気、無念さ、怒り、理解、怖れ、対峙、邂逅、諦め、驚き、省察、決意、自信、共感、喜び、願い、希望......などでした。
働くこと、仕事のことで苦しむ人や悲しむ人がいない社会にしたい、とあらためて思います。諦めずにいたい。
また、久しぶりの対面の場は、エネルギーの行き交いや、言葉の聴こえ方が全く違いました。
〈ゆるっと話そう〉は、4月から10月の半年間はオンラインで開催してきました。
オンラインは、遠くの方や、外出が難しい方にもご参加いただけて、それはそれでとてもよい場でした。でも、やはり実際に会うことには他に変えられないものがありますね。集えてほんとうによかったです。
一人ひとり異なる存在ながら、同じ作品からの思いや気づき。
今この時だけの感想を語ったり聴いたり。
共有することで、ゆるやかなつながりも感じられる。
人間にはこういう時間が必要なのです。
ご参加くださった方、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました。
映画を観て、胸中にじっと抱いて帰るのもよいけれど、こうして誰かと感想を交わしてみるのもよかったな、と思っていただけたらうれしいです。
また、この映画のこと、チュプキさんのこと、シェアの場のことを周りの方にご紹介くださると、さらにうれしいです。
そして、土屋トカチ監督、一緒に場をひらいてくださるシネマ・チュプキ・タバタさん、ありがとうございました!
▼参考資料
・土屋トカチ監督 インタビュー
・土屋トカチ監督 舞台挨拶@ユーロスペース 2020.10.24
・レイバーネットTV第91号「やられたらやりかえせ!When hit, hit back!
『アリ地獄天国』の主人公、西村さんが懲戒解雇された当時に出演していた番組アーカイブ。土屋監督が企画の一人として参加していた。
・書籍『会社員のための「使える」労働法』
労働法についてザッと知りたい人も、今困っている人にもすぐに役に立つ本。相談先リストもあり。著者は、労働相談や外国人労働者の支援活動に取り組むNPO法人POSSEの代表。
・書籍『ブラック企業を許さない!』
映画にも登場するプレカリアートユニオン・清水直子さんの著書。ブラック企業や違法行為に気づくための知識や知恵、労働組合で戦うときの流れやポイントがよくわかる。相談先リストあり。
・書籍『10代からのワークルール』全4巻
10代向けに書かれたワークルールの本。「働く」や「仕事」についてこれだけは知っておきたいことが満載。大人ももちろん役に立つ。国会パブリックビューイング代表の上西充子さんの監修。全編カラー、全4巻。どれも大切なテーマ。
・書籍『過労死しない働き方』
岩波ジュニア新書。過労死の具体的な事例を示しながら、発生する原因を考え、なくすための方策を説明している。「知識は身を助ける」。たちまち困ってはいないが、少し考える時間があるときに読むとよい本。
・書籍『「もえつき」の処方箋』
刊行はかなり前(2001年)ですが、今でも良い本。自分をすり減らしてまでがんばってしまいやすい職種やそういう傾向のある人に、自分を大切にする方法を伝えている。医療・福祉・教育などの対人援助職やボランティア活動をしている方に特におすすめ。
・ゲートキーパー(自殺の危険のある人に適切な対応をすることができる人)についての記事
精神障がいやこころの不調、発達障がいをかかえた親とその子どもを絵本やウェブサイトなどで応援し、普及啓発の活動をすすめる、ぷるすあるはさんに掲載の記事。
これからシリーズで掲載される模様。
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