ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

町田国際版画美術館『西洋の木版画 500年の物語』展 鑑賞記録

町田国際版画美術館で『西洋の木版画 500年の物語』展を観てきた。

hanga-museum.jp

 

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最終日に飛び込み。少し遠かったけれど、はるばる行った甲斐あった。

 

ひと言で言うと、木版画の印象が覆った!

初期の木版画
グーテンベルク登場後、
デューラーの(変態的!)木版画
銅版画との比較、
風俗画としての版画、
木口(こぐち)木版の追究、
絵本と多色刷りの進化、
近現代美術としての版画、
ゴーガンの版画、
まちだゆかりの作家・若林奮、
月岡芳年の月百姿……。

 

これも木版画、あれも木版画......。

木版画と聞くとつい、素朴さ、柔らかさ、大胆さのイメージが最初に出てくるけれど、それだけではなく、精密さ、繊細さ、洗練などもあったのだ。

そうだ、浮世絵も木版画じゃないか、といまさら気づいたり。


この500年を通覧する充実の展覧会。

大満足。

図録は残念ながら作っていないとのことだったので、写真を撮りまくり、メモを取りまくった。

 

展覧会のおかげで、版画についての知識と経験を段階を追ってじっくり積めた。断片的だった知識が、展覧会から体系的に提示されることで、わからなかったところが埋まった感触がある。

こういう「あるジャンルについての歴史」が一望できる展覧会はとても貴重なので、出会ったときがご縁ということで、最近はなるべく足を運ぶようにしている。

 

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印象に残った作品いくつか、美術館の公式ツイッターの投稿をお借りしながら紹介したい。

 

版木の高さと活字の版の高さを揃えて刷っていたとのこと。ここで疑問。活字は一字ずつ拾うのか、ある程度の決まった単語で揃っているものがあったのか(ドイツ語だとmit, ob, istなど)

 

デューラー木版画が変態レベルで慄いた。描き込みならぬ彫り込みの凄まじさ。銅版が出てきた時代に、「木版でもここまでできるんだぞ!」という壮大なアピールのようにも見える(勝手に)。

 

同じ主題で木版と銅版を並べて見せる展示がおもしろかった。このあたりでは銅版は洗練されていて、陰影の微細な表現が可能になるんだな、などと素人目には思っていたが、このあとに木口木版を見たときに、その感想はあっさり裏切られる。

 

目の詰まった木の断面を使った木口木版。このあたりから素人目には銅版と木版の区別がつかない......。実用性の中に芸術性が生まれてきている感じ。

 

これも木口木版。光の表現、黒から白へのグラデーションが美しい。スクリーントーンのような整然とした彫りも、これが手作業と思えない。

 

館長さんがブログでも書いておられるけれど、ほんとうにこれが木版画だと思えない!モチーフも美しいし、色もきれいで、ずっと見ていたい......。

 

木口木版は、輪切りにして年輪が見える板で、日本の浮世絵は、木の生えてる向きに沿って切った板目木版。主となる輪郭線線をとった主版と、色をわけてするための複数の色版で刷る多色刷りは手間がかかるので、西洋では最初はあまり発展しなかったとのこと。素人目には銅版画のほうが薬剤も使うし、手間が要りそうに見えるけれども。。ここのところもう少し知りたい。

 

ゴーギャン(ゴーガン)の版画がこれまたよかった。タヒチとの出会いで感じたプリミティブな魂が、木版という表現にぴったりに感じられる。

 

ヴァロットン!!冷たい感じもしつつ、やっぱり魅力がある。先日国立映画アーカイブで見た展示の中に、サイレント映画の映像が流れていて、黒白の濃淡や構図がすごくヴァロットンの版画に近いなと思った。時期的には同じぐらいだから、きっと影響があったはず。

 

 

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行く前に行く前の予習で観ていた資料。
長谷川潔展の図録は、だいぶ前に横浜美術館の回顧展で購入したもので、最後に版画の技法についての説明がある。

『西洋版画の見方』は国立西洋美術館売店で売っているもの。コンパクトで良い。

この版画展を観てから、本を読み返したらだいぶイメージが膨らむようになっていて、書いてあることが前よりも理解できていた。うれしい!


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1階ロビーでは版画についてのビデオ視聴コーナーあり。

1987年制作と古いものだけど、丁寧に作ってあるので、素人にも工程がよくわかるので、学びたい方にはおすすめしたい。

1本15分くらいはあったので、木版画と銅版画を見るだけでお腹いっぱいになり、石版画とシルクスクリーンその他は次回に。

 

 

インスタグラムにも写真載せておいたので、メモ。

https://www.instagram.com/p/CIEtCxfFoFT/
https://www.instagram.com/p/CIEtyqXFqlH/
https://www.instagram.com/p/CIEuUV0l1WZ/
https://www.instagram.com/p/CIEuuR7FfJx/

 

www.instagram.com

 

同時開催の企画展:まちだゆかりの作家 若林奮(わかばやし・いさむ)

www.instagram.com

 

 

おまけ。

美術館に行く途中の公園の中に、見たことのある球体が鎮座されていた。
東京都美術館にある、あれですな。あちらは《my sky hole 85-2 光と影》
こちらは《my sky hole 88-4》
連作なのでしょうか。他の場所にもあるのかな。


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たくさん版画を観たあとだから、穴あきの葉っぱもおもしろく見える。


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道路表示まで版画に見える!


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