ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

映画『ウルフウォーカー』鑑賞記録

恵比寿ガーデンシネマで『ウルフウォーカー』日本語吹替版を観てきた。

child-film.com

 

長野の映画館のスタッフさんがツイッターで強く推しておられたのに心動かされた。
そのツイートを見なければ、知らなかったし、出会えなかったかもしれない。

東京で暮らしていることと、昨今のオンライン世界への拡大で、「観るもの」がとにかくたくさんあるので、わたしもなかなか全部はチェックしきれないでいる。
こういう情熱からの発信はほんとうにありがたい。
 
予告を観てみて、これは息子と一緒に行ったほうがいいのではないかな、と思い、誘ってみたら、観てみたいとのことだったので、夕方から出かけた。
 
 
「お子様」が行くとこんなのをもらえるらしい。

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いやはや、これ、これは、ほんとにすごい映画!!

これは映画館で観ないとダメな作品。

こんなアニメーションがあったんだ!

胸が震える。。

 

力強く美しい物語!

なにより、子どもを見くびらない、ほんものさ。子どもに生きる力を与える物語。

これを息子に観せられてよかった。

 

重層的で示唆的。

生きる上でのとても大切なテーマが大きく二つある。

一つは、自然との共生。感染症流行の時代だけに、痛感する。

もう一つは、人は自分の中に作りあげた「牢獄」からいかに自由になれるか(映画『ライファーズ』)

それぞれが、それぞれの思う自由を求め、立ち上がり、自分の信じる道を切り開く物語。

新しい時代の神話。今のわたしたちに必要な物語。

 

すでにまた観たくなってる。

絵本と想像がいっぺんに動いているような美しい画面。日本語吹替版だと画面に集中できてよかった。

 

観てから何日も経っているのに、なかなかなめらかな文章としては書けないので、断片でもともかく置いておく。

 

・「征服の対象としての自然」の歴史の前にあった、自然と共生する時代を思い出し、学び、今のわたしたちとして生きる必要がある。

・城壁の中で閉じ込められる人間。外は脅威→進撃の巨人

・牧畜をやってきた民族の獣の象徴・オオカミ、森への恐怖。稲作民族にはわからない感覚もあるのか?

・"我々はこの国では歓迎されていない"(移民、難民の示唆)。人のやりたがらない仕事をすることで存在を保証される構造。

・児童労働、ストリートチルドレン、"檻"の中にいる子どもたち。現代の学校もそうかも?

・若さゆえの無鉄砲さであり、自由さ、野生。子どもの知恵。傷つけ合わない解決方法を知っていたのに、大人になるにつれて失っていく。大人のルールは子どもには通用しない、そこに目を向けられるか。

・「ルールに従う」「命令には従わないといけない」「言われたことをやっていればいい」操られていることに気づけず、逆らえない。生存の危機感、恐怖で支配される。支配できることを知っている。その呪いは世代を超えて、家族の小さな単位の中で、性別を閉じた中で、連鎖していく。「あなたのためなのよ」

・理解する大人がいるという希望

・権利の対立。対立しているように見えるけれども、一方的な主張かもしれず。

・ロビンがオオカミになってからの世界の見え方。人の中で生きれられるのか?

・居処のない者同士の出会い。

・民衆の憎しみの感情。その圧倒的な表現。熱狂、興奮。これほどまでに憎まれている。芯からの憎しみなのか、煽られているだけなのか。風見鶏。

・「ただ生きる」それ以上のことをしてしまう人間は、仮想敵をつくる。何のおかげで生きられているのかを忘れる。守ろうとして永遠に失う。

・救われたがっている魂の哀しさ。

・最後に残るのはユーモア。勇者のように見えない、声は小さく、しかし大きな存在。

 

 

前回恵比寿ガーデンシネマで観たのは、『ディリリとパリの時間旅行』。 アニメーションの可能性は果てしない。

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ウルフウォーカー世界の紅葉する森は、現実の外の世界と同じで、不思議なオーバーラッピング。


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公式サイトにあった、こちらのオンライン対談動画を観ていったのも、わたしにとっては受け取るものが多く深くなって、大変よかった。 もちろん観たあともおすすめ。

youtu.be

 

 

複雑な世界をこれほど美しく繊細に、誤魔化しなしに描く。作画はちょっと怖く感じるかもしれないけれど、子どもの頃に自由に行き来していた「あの世界」のことだと、観ているうちに思い出してくる。怖いのは、大人だから、というのもある。

見た目のわかりやすい可愛さではない。

そういうやり方で観客を喜ばせようとする感じがないのがいい。

本能を刺激してくる。見ちゃうし、目が離せない。

線の力がすごい。形も空間表現も。

それも瞬きをしている間にどんどん変化していく。
連れて行かれる。

 

「野生を呼び覚ませ!」を自分の体感で理解する。

 

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先日、新宿歴史博物館に小泉八雲展を観に行ったときのこととつながった。

アイルランドの大叔母に預けられた八雲。迷信を嫌った大叔母は、精霊や幽霊の話を禁じたり、信心深いいとこのジェーンは「神の思し召しに逆らう者は地獄の業火で焼かれるだろう」などと言う。

アイルランドといえばアニミズム、精霊の本場じゃないの?なぜ周囲はそんなふうだったのか?と疑問だった。ウルフウォーカーに出てくる護国卿(Load Protector)のような存在がかつてあって、その流れがこの大叔母やいとこにも汲まれているということだったのではと、思い当たった。

このへんもうちょっと勉強したい。

アイルランドケルトの歴史と文化。売店で参考になりそうな本が紹介されていたけど完売だったので、別途入手してみる。

もっと進んだら、先日訪問した東京子ども図書館の資料室も利用してみたい。

 

 

前作、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』と『ブレンダンとケルズの秘密』も近日中に観る。今となっては、公開時に映画館で観なかったのが悔やまれる。

 

 

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