ショーン・タンの世界展を観に行ったあと、何冊か読んでみた中で、この本がとてもよかった。
『鳥の王さま ショーン・タンのスケッチブック』
作る人の仕事の中には、本や映画や絵画としてリリースされた完成作品と、それに至るまでの原材料、素材などがある。後者は基本的に人の目にふれることはあまりなく、アイディアや練習のような形で蓄積されていく。
その蓄積がなければ作品も生まれないし、作品にして人に見せたり商業性を持つからこそ、畑を耕し、育てることも必要になってくる。
人に見せることを意図せずに描かれたたくさんのスケッチは、実験的で自由で気軽。生々しく勢いがある。真剣さや愛おしさも伝わってくる。
スケッチだからこその魅力がある。
もちろん素人から見れば、ものすごく完成度の高いスケッチなので、見応えがある。
展覧会の最後のパートに、ショーン・タンの作業デスクが再現されていたが、あれを見たときのワクワクと同じ感覚だ。
また、鉛筆やボールペンや油彩などの本物の筆致や質感を展覧会で観てきたので、その記憶と照らし合わせながら、より生き生きと見ることができた。本物に出会えることのありがたさよ。
装丁やデザインも、スケッチブックの温かみを生かしたものになっていて、凝ったつくり。1ページ1ページ、美しい。
何をしているのか、何のためにしているのか、スケッチを自分で客観的に見てみてどうか。ところどころに差し込まれているショーン・タンのテキストも、作り手の思考の過程を覗かせてもらえるようで、おもしろい。
この人は、絵も話す言葉も書く言葉も、ほんとうにフレンドリーだ。もちろん訳も良いのだと思う。言葉をこねくり回したり、技巧を狙ったりもなく、わかりやすく、こちらを向いて語ってくれる感じがある。