ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

映画『陶王子 2万年の旅』鑑賞記録

 

6月に観た映画の記録。 

映画『陶王子 2万年の旅』

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人間の歴史でもあり、地球との関わりの歴史でもある。

まったくバラバラに存在していた事物、事象が、この映画によってつながれていく。パズルのピースが次第に全体像を成していくような謎解きドラマでもある。

旅に連れて行ってもらった。

 

陶王子をナビゲーターに据えるという発明がすごい。のんさんの声もぴったり。

一点、効果音の過剰さが気になった。もう少し控えめでもよいかなと思ったけれど、これが今の時代のドキュメンタリーの流行りなのかもしれない。

 

観た直後は、「人間は新しくつくりたい生き物である」その衝動や好奇心に共感し、愛おしく感じたし、たくましさを頼もしく眺めていたけれど、今ふりかえってみると、こういう行動が、環境を破壊したり、弱い立場の人を踏みつけてまでつくっていこうとするという面もあり、手放しで喜べないなとも思う。

東京オリンピックもそうだし、一昨に見学した生ゴミの飼料化再生工場や、最終埋め立て処分場での経験を思い出す。気候変動もそうだ。人間がつくったことで起こしてきた数々の損失。

いや、自分だってそうだ。つくりたいからつくるし、人にも環境にも負荷をかけてつくっている。

 

パンフレットにある監督の言葉にハッとなる。

ナショナリズムに陥るな!」ーーそれが5年前にこの企画をスタートさせたときからのスタッフの合言葉だった。

陥り......がち!どちらが "本当の"ルーツだとか、どちらが優れているとか。ルーツや環境が影響を与えるものは大きい。そこから生まれるものを期待されてつくる。しかし「だから日本偉い」のではなくて、容易に陥るな......。

難しいけれど、2万年も歴史のあることで、いくつもの土地で偶発的に起こったり、交わる中で起こったことは、どちらがどちらの「おかげ」なのかは意味を成さなくなる。

長い時間の尺でひとつの物事をとらえ、その体感を持って日常をまなざすことで、陥る手前でブレーキがかかることはいくらもある。

とはいえ、「つくる」動力に嫉妬や競争心もあるのは否めない。その中で、できるだけ犠牲や負荷を少なく技術革新するって可能なのかな、ともぼんやり思う。

 

遠くに行きたくても行けないときに、時間や場所を軽々と超えて見せてくれる作品でもあった。そうか、そう考えると、ここ1年半の間に起こって混乱も、長い歴史のカウントできないほど短い出来事なのだろうか。

そう思うにはまだ時間がかかりそうだけれども。

 

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チュプキさんでの舞台挨拶の記録。ツイッターからスレッド全体を展開してどうぞ。

  

この本のことも思い出した。
『一万年の旅路 ネイティヴ・アメリカンの口承史』(翔泳社, 1998年)

口承でのみ伝わってきた部族の歴史が本になるというだけでもすごいが、その中身があまりにも想像を超えていて、衝撃を受けた記憶がある。自分の命もまた、このような継がれてきた命の先にあるという不思議。

 

 

『陶王子』が好きな人は、映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』もたぶん好きだと思う。おすすめ。

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