ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

展示「郵便創業150年記念企画展 日本郵便の誕生」@郵政博物館 鑑賞記録

6月終わりか7月初めに行った展示。

緊急事態宣言が出されて、しばらく休館していたが、宣言明けから会期を延長してくれていたので、行くことができた。よかった。

www.postalmuseum.jp

―今から150年前、日本に「郵便」が誕生しました―

今や国民にとってなじみの深い「郵便」ですが、その始まりの経緯については、意外に知られていません。日本の「郵便」はどのような経緯で誕生し、その実態はどのようなものだったのでしょうか?
2021(令和3)年は、日本に「郵便」が創業してから150年目にあたります。そこで本展では、幕末から明治前期までの時期を中心とし、日本に「近代郵便」が確立するまでをストーリー仕立てで紹介していきます。(公式HPより)

 

 

今回の訪問の動機。 

今年の春に開催されていた二つの展示を観に行って、郵便事業のはじまりや、軍事郵便のシステムなどにさらに興味を惹かれた。

2013年まで大手町にあった逓信総合博物館(ていぱーく)には一度行ったことがある。大規模な切手コレクションを見た記憶がある。

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原爆の悲惨さ伝えた「はがき」

https://www.postalmuseum.jp/column/collection/post_1.html 


制服の移り変わり

https://www.postalmuseum.jp/column/transition/postman.html

 

▼メモ

前島密(1835-1919)は「日本郵便の父」として知られているが、他にも偉業は多数。遷都、国字の改良、海運、新聞、電信・電話、鉄道、教育、保険など。こちら(日本郵政HP)も。

前島密没後100年記念展の資料(PDF)
https://www.postalmuseum.jp/publication/description/0329_Yu_Maejima_Panf.pdf

・近代国家に欠かせない交通、通信制度の整備が必要。当初は宿駅の機能を活用し、飛脚制度を再編するのが前島密の構想。他の業務命令が出て動けなくなった前島のあとを引き継いで実践したのは、杉浦譲。制度の説明、用品の準備、切手の製造等、開業に向けての準備を担う。(発案した人の名は「超有名人」として残り、現場でメインで作業した人の名は残りにくいものだ。。杉浦譲について

1871年4月20日新暦:この頃はまだ旧暦と新暦のはざま)東京ー大阪間の郵便を試験的に実施。

・会場で流れていたフィルムが詳しくかった。江戸時代の飛脚制度の再現映像がよくでてきていてびっくり。飛脚の頼み方、受け取り方、運搬の仕方がよくわかる。当時飛脚屋専門店があった。東京ー大阪間は、飛脚で8日間。1日75〜100kgを走る。ある地点からある地点へパスするリレー式飛脚もあった。ちなみに、1889年(明治22年)に東海道本線が開通したときの東京ー大阪間は20時間。

・幕府公認の尾張紀伊の藩独自で雇う飛脚は、葵の御紋を笠に着ての傍若無人ぶりが酷かったそう。

・郵便制度ができたときも最初はまだ郵便屋さんが「走って」いた!リレー式で東京ー大阪は3日。汽車が通っていないところも多かった。自転車もない?車もまだない?(『山の郵便配達』という映画を思い出す)

・東京ー大阪や都市から都市への郵便が整うにつれて、市内郵便も展開。多いときは一日19回の集配。電話より先に発達していた。

・最初は参勤交代時の宿場電馬制を郵便にも展開していたが、宿場のある村や、人馬を供給する助郷村の負担が大きくなりすぎたことと、民間に委託しているとコストが高くつくということから、国の事業とすることになった。(これが何年ごろだったか?)

・1867年〜1871年ごろまでいろんな人が試行錯誤している。当たり前だが物事とは急にはじまったり終わったりするわけではなく、いろんな準備があり、導入があり、改良があり、発展がある。衰退して、終焉もある。

・今は当たり前にある郵便の制度も、人が走って(!)運ぶという時代があり、国全体の大きな変化に伴って「近代国家として西洋に追いつくために必要なインフラ」という目的を据えた時代があり、スピードアップしてきた時代があって、そして今はどんな時代にあるのか。

・はじまった頃は時計もまだ一般的ではなかった。時刻を決めて集配するシステムのため、時計が必要になった。こちらの資料、こちらの資料参照。(この頃の人々の時間感覚はもっとゆるやかだったのかも)街灯が少なく、配達の回数も多いので、日が暮れると灯火器(ランタン)をもって家々の表札を確認していた。郵便屋さんが携帯する銃の展示もある。(治安が悪かったのだろうか?)

・情報量が多かったので、あとで図録で確認したかったのだが、制作はないとのこと。残念。

・郵政博物館の歴史。
 郵便博物館として1902(明治35年)に開館。190万点の資料を所蔵。日本で唯一の通信の伝道を行う。もともと逓信博物館(ていぱーく)が建てられたのは、1964年の東京オリンピックを見据えていたそう。体験型の機能を持った博物館。2013年閉館、移転。

・現在は押上のスカイツリーの中にある。ただ、かなり外れたところにあり、周りは、塾、英会話スクール、大学の展示ルームなどで、通りがかりにフラッと入るようなところではない。駅から一番遠いビルで、エレベータの細かい乗り換えもあって、目的をもってここを目指してこないと辿り着けない。展示内容はいいだけに、知られにくくて残念。切手のコーナーは健在。膨大な量。

 

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▼参考になりそうな資料

『日本における近代郵便の成立過程』井上卓朗(郵政博物館)(PDF)https://www.postalmuseum.jp/publication/research/docs/research_02_03.pdf

郵便局の歴史とその役割
http://www.postmasters.jp/index.php?a=role

 

日本郵便創業の歴史』藪内 吉彦/著(明石書店, 2013年)

 

『郵便の歴史』井上卓朗, 星名定雄/著(鳴美, 2018年)

 

これ買いました。保存用!

www.post.japanpost.jp

 

こんなんやってた。郵便配達バイク......いいな。

www.shop.post.japanpost.jp