ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

本『常識のない喫茶店』読書記録

『常識のない喫茶店』僕のマリ/著(柏書房, 2021年)


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「無礼な人や迷惑な人とは喧嘩していい、出禁にしてもいい」がモットーの喫茶店で働いてきた4年余りの日々が綴られたエッセイ。筆者は喫茶店の店員さんをしながら文筆の仕事もされている。出版当時は両立されていて、現在は喫茶店は辞められて、新しい道を進まれているそう。



すっごいワカル!と思った。

私も不特定多数の個人客が出入りする施設で接客業として働いていた経験がある。お客さんとのよい思い出もあるが、ほとんどトラウマになっているしんどい経験のほうが上回っていて、なおかつブラックな職場で、結局過労から身体を壊し入院したことをきっかけに辞めた。

当時のことは恐怖に近い記憶として残っているため、新しい職をと考えたときに、個人への接客の仕事だけは絶対にしたくない!特に飲食やアミューズメント関係は絶対に無理!と頑なに避けてきた。

もちろんお店や施設によるのであろうが、とにかく接客業の現場で出会った個人客の常識のなさは、想像を超えて凄まじかった。さらに当時は「若い女」ということでナメられてもいたと思うので、より悲惨な目に遭った。



なので、この本に書かれていることは分かりすぎるほど分かる。「迷惑です、お代は結構ですので帰ってください」「もう来ないでください」とか言えたらどんなによかったか。人間らしく働けたかと思う。

このお店はマスターがしっかりとしたポリシーを持ち、店員さんたちを守っているところが読んでいてもありがたい。私が働いていたところの上司は、手に負えなくて助けを求めて呼びに行くと、「そんなあしらいもできないんだ」などと鼻で笑うような人だったので、屈辱は倍になった。



小さなまちに暮らしはじめて、お店の人の本音を聞くことも増えて、個人商店と客の付き合い方について考えることが多い。自分もまた傍若無人な振る舞いをいろんなお店でしてきたことを恥じるし、申し訳ないとも思う。

こういうの(マナーや振る舞いや健やかな距離感)ってわざわざ誰かが教えてくれるものでもないし、身についた習癖に自分で気づいてあらためるしかない。お店の方が胃を削りながら教える一方なのも違うと思う。困った客はいなくはならないので、場を守る人の覚悟や言動が大きいのだろうけれど、それもたいへんだし……うーん……。



本に書かれていることは、全部が全部いいね!わかる!だけでもなく、そこまでやるのは行き過ぎでは…正直引く……という部分もある。ここも人によりまた違った読み方があると思う。