ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

展示「杉浦非水 時代をひらくデザイン展」 @たばこと塩の博物館 鑑賞記録

たばこと塩の博物館に「杉浦非水 時代をひらくデザイン展」を観に行った記録。

www.tabashio.jp

 

杉浦非水(1876~1965年)

日本におけるモダンデザインのパイオニア、図案化、グラフィックデザインの原点。
ポスター、装丁、雑誌表紙、パッケージデザイン、図案集などの代表作、スケッチ、写真、遺愛など。東京美術学校時代の作品から晩年のデザインまで、前後期合わせて約300点を展示。たばこのパッケージもしているので、ここの館ともリンクしている。

 

たば塩の企画展示はユニークなので、毎回チェックしている。今回は、個人的な関心から津田青楓、橋口五葉、竹久夢二装丁家を追っていて行き着いた、杉浦非水がフィーチャーされているということで、絶対行こうと決めていた。

好き! かわいい! わくわく! 
これやってるときが一番楽しい!をますます大事にしようと思った。
そういう気分になる展示だった。

 

鑑賞メモ

・クオリティの高い図案・デザインを日本にも。という熱い思い。

・「東京美術学校入学後は円山派の川端玉章に師事して日本画を学んでいましたが」(当時の?)日本画は模写、臨画(手本の絵を忠実に模写することによって学習すること)が基本だったが、杉浦は写生が好きだった。

・「在学中に、フランス帰りの洋画家・黒田清輝がもたらしたアール・ヌーヴォー様式の図案に魅せられたことで、図案家としての道を進むことになりました。」黒田清輝が1900年のパリ万博を視察して持ち帰ってきたミュシャのポスターを見て、「これから図案でやってくんだ!」と決意したあたりの興奮が伝わってきた。杉浦曰く、「断然図案の方面に進出して行かふと云ふほどの衝撃を受けた」そう。

・図案の構図や色や形がグッとくる。

・「みだれ髪歌がるた」与謝野晶子の歌集「みだれ髪」が暗唱するほど好きで、好きが高じて、東京美術学校時代の友人・中澤弘光と手製の歌がるたを制作。100枚を目指したが、28枚でストップ。綺麗な額に入れて大事に描いてある。きゅんきゅんする。ちなみに中澤は美術学校時代に黒田清輝邸に一緒に下宿させてもらっていた仲。

三越で1908年から1934年まで27年間働く。専業ではなく、夜間勤務嘱託の契約で、三越の仕事もしながら、他の企業デザイン、装幀、表紙の仕事に携わる。まだブックデザインが「画家の片手間」だった時代。でもこういう働き方もありなのかもしれない。今からみると新しい。

三越の『子宝』(巌谷季雄編)限定2000部、誕生から満7歳までの成長の記録をつけられるアルバムのようなもの。造本、挿絵が美しい。和洋折衷の近代的な生活をしようという三越の提案。上流階級の人々の、子どもを大事に可愛がり育てる余裕を感じる。

・『THE TOURIST』『Guide to Kongo-San』『SHANTUNG RAILWAY』『MAP OF KEIJO』Japan Tourist Bureauのパンフレット。Japan Tourist Bureauは現在のJTB。こんな歴史が!https://www.jtbcorp.jp/jp/100th/history/

・『非水百花譜』植物画。このコーナーよかった。野の花も園芸種もさまざまに取り混ぜて。植物学者とはまた違う精緻な観察。

・ロビーで流れていた映像。非水が撮った8mmフィルム。「画家の顔」友人画家たちの様々な表情をとらえてつないだもの。恥ずかしそうに笑いながら、「やめてくれよー」と手を遮る人もいれば、目線を合わせず微動だにしない人も、ポーズを決める人も様々でみんなかわいい。

・『名物控え帳』スクラップブック、メニュー、ホテルラベルのコーナーもよかった。わたしもスクラップやラベルを集めるのが好きだから。パリのメニューなどおしゃれ。

非水の言葉:「視る眼を養ふことは、また図案美の眼でもあり、それを採集し、構築する眼にもなる」選ぶ、集める、視る、保管することは、つくるの役に立つということか!

・「世界裸体美術全集」かなり生々しいポーズ。

・たば塩との関係。1930年から大蔵省専売局の嘱託デザインワーク全体の指導者的立場だった。


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これ、百人一首かるた遊びかな!男女混合の源平戦?うれしくてポストカードを購入。

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 2020年12月著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社