練馬区立美術館で開催の『ピーター・シスの闇と夢』を観てきた記録。
細密に描かれた、どこか懐かしい異世界。
一点一点に賭けた時間と労力、情熱と誇りが感じられ、また一点ごとに膨大な宇宙が広がっているので、150点はたいへん多く感じられる。
読む、眺める触る絵本だったものを、触れない原画として観ることで変わる感覚がおもしろい。
逆に絵画だと思っていたものを絵本として取り込めるおもしろさも。
個人的には上の展示室のケースに陳列されていたニューヨーク・タイムズの書評欄の挿絵シリーズがよかった。気の遠くなる点描と、作品世界のシス的解釈。
いつまでも眺めていたい。
展示室の一番最初に置かれていたピーター・シスの言葉に共感。
物語ること、想像することによって自分の中に秘密の庭をつくりだせる。どの人にもその才能はある。記憶の中にある絵や物語は秘密の庭。人生につらくなったらここに逃げてくればいい。
そんなことが書いてありました。国書刊行会から図録が出版されているので、機会があればぜひ見ていただきたい。
わたしにとってチェコといえば、
・切手
・チャペック兄弟
・ミュシャ
・イジー・トルンカ、イジー・ヴァルタ、カレル・ゼマン、ヤン・シュヴァンクマイエルの人形アニメーション
・トルンカに師事した人形作家の川本喜八郎
・100分de名著 ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』
・スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェク
……などが出てくる。
シスという存在がこれらを縫い合わせてくれたり、辿る道を作ってくれた。
シスとハヴェルとの関わりが深いことも展示で知った。
かつてチェコで起こっていたことは、今、ベラルーシやアフガニスタン、香港などで起こっていることも容易に想像できる。人間は同じことを繰り返してしまうのか......なども考えた。
サン・テグジュペリや『星の王子様』を題材にした絵本原画もあった。星の王子様はバラバラの世界をつなぐ物語なのだろうか(バベルの塔の逆のような)と最近考えていたので、ここでもまた!と思う。好き嫌いというより、解釈自由なほとんど古典というか、クリエイティブコモンズみたいなものになっている。
この日は幸運にも担当学芸員さんが開催される子ども向けのワークショップ「トコトコ美術館Vol.37」を見学させていただけたのと、その後お話をじっくり聞く機会を得たので、通常の鑑賞を超えた学びがあった。
ピーター・シスのインタグラム
https://instagram.com/peter.sis.art?utm_medium=copy_link
▼美術館配信の動画。行けなかった方、ぜひ!