大田区立龍子記念館に『川端龍子 vs. 高橋龍太郎コレクションー 会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃 ー』展を観に行った記録。写真多め。
高橋龍太郎とは、現代アートのコレクターで、精神科医。祖父の代から大田区に住んでいた。現在は自宅は港区に移っているが、クリニックは大田区にある。祖父が龍子と同時代とのこと。(この方にも名前に龍の字が!)
年間100件の貸出がある。キャプションに「個人蔵」と書かれているのはこういう方からお借りしている作品なのだな。
《マインドフルネス!》という現代アートの展示を名古屋市美術館で観たが、あれは高橋コレクション展だったと今知る。そうだったのかー!
日の丸や船尾の朱が、神社の朱色と同じ。画面の真ん中に置かれた日の丸は標的のようにも見える。誇らしさと危うさが同居して見えるのは今の時代だからなのか。
鑑賞メモ
・大画面の作品がたくさん観れて気持ちがいい。「映画ってやっぱり映画館で見るのがいいよね」という感じに似ている。やはりここの広々した感じは大画面の作品を見るのにぴったり。
・ガラスがないので、より近くに感じられるのがこの記念館の良いところ。
・現代アートとのコラボは、違和感なし!よかった!現代に独自の道を切り開いてきた作家たちの作品と、横山大観と袂を分かって青龍社を興した龍子の作品が並ぶ。挑戦者たち。
・《越後(山本五十六元帥像)》(1943年4月)今回この作品が気になった。『香炉峰』『紐育空爆之図』の次にあり、『水雷神』『爆弾散華』と続くので、このコーナーは戦争を目一杯感じさせて不穏。学芸員さんの解説→https://www.youtube.com/watch?v=LjMdf39FXDw
・《十一面観音菩薩立像》東京国立博物館寄託されている仏像がこの会期中に里帰りしていた。もしかしてトーハクに行った時に観たりできるんだろうか?と思ったが、寄託ものはあまり展示に出ることはないかもとのことだった。残念。
・《百子図》(1949年)象を真ん中に遊ぶ子どもたちの図。「上野動物園に再び象がほしいと願う子どもたちが行動し、周囲の大人たちを巻き込んで実現した出来事」とある。台東区で「子ども会議」なるものが開かれていたらしい。図書館に調べに行くことにする。
龍子公園ももちろん訪問。
今回知ったこと。
・通常アトリエといえば、安定した北側の採光を求めるものだが、龍子のアトリエは全方向から採光。さすがに西日は避けるため、軒を深くしている。
・日本画は顔料が流れるため、床に置いて描き乾いたら立てて仕上げる。そのため、床面も壁面もそれなりに面積や高さが必要になる。
・公園内の多くが高床になっているのは、昔この辺りが湧水の流れる湿地帯だったため。今は水脈が変わったのか、涸れているそう。
・雨戸がついていない。(理由は聞き忘れた)自分の寝室だけは雨戸がついている。朝から晩まで描いていたので、夜はよく眠れるように雨戸を締めて暗くする必要があったとのこと。
今回は展覧会もよかったのだけど、記念館から池上本門寺へ行けたのもよかった。龍子の絶筆と言われる天井画を見るため。
龍子記念館から池上本門寺へ。坂を登りきった中央五丁目の辺りがこんもりとした山になって、四方からここを目がけて坂になっている。左方は海に通じる。汐見坂の由来そのまんまだ。スリバチ学会の人とか詳しそうだな。
池上本門寺まで徒歩15分。20年ぶりに来た。当時は龍の絵のことなどは知らなかった。
(堂内は写真撮影不可のため、天井画はウェブ検索して見つけてください)
未完成だそうだけれど、没後に「目」が入ったからか、これで完成している、抽象画のようにも見える。鬼滅の刃で、殺られた鬼が消滅していくときのような、なにやら凄まじいものを感じる。日蓮上人の入滅の地にこの画があるのは当然のように感じられる。
ちょうどお経をあげてもらっている方がいて、その音と共に見るとなにかこみ上げてくるものがあった。お経は遠くから聞くとグレゴリオ聖歌のようでもある。
記念館の展示が続いてきたような体験。
これは皆さん行かれるといいと思います。
しかし絶筆が池上本門寺の天井画ってとこがどこまでもかっこいいな、龍子!!
▼関連動画
龍子記念館に行けない方も、Youtubeで学芸員さんが解説してくれてます。このチャンネルの中の【ズバリ解説】の動画です。
高橋龍太郎さんてこんな人。
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