ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

展示『聖徳太子』展@サントリー美術館 鑑賞記録

サントリー美術館で『聖徳太子 日出づる処の天子』展を観た記録。

聖徳太子千四百年 御聖忌記念特別展&サントリー美術館開館60周年記念展

ちなみに英語のタイトルは、

Special Exhibition Prince Shotoku: 
In Commmemoration of his 1400th Grand Memorial

www.suntory.co.jp

 

夏のトーハクの聖徳太子法隆寺展もよかったが(鑑賞記録はこちら)、こちらも良かった。こちらは太子が建立したもう一つの有名寺院、四天王寺をフィーチャーした展覧会。

今回も思ったのは、やっぱり、とにかくみんな聖徳太子が大好き!ということ。

(この日も平日昼間にもかかわらず、たくさんの人が来場されてました)


亡くなってから1400年ずーーっと忘れずに命日を大事にしてきたり、
聖徳太子ゆかりの7つの宝物とか、
聖徳太子が着たかも知れない服の切れ端とか(ぼろぼろ)
聖徳太子が踏んだかも知れない布の切れ端とか(ぼろぼろ)
大事にとってある。

幼少期、少年期、青年期、壮年期といろんな絵姿、いろんな彫像がある。
伝記漫画(聖徳太子絵伝)も描いて、亡くなってからもガンガン推しまくった。

マリアの受胎告知さながらの誕生秘話とか、
中国の高僧の生まれ変わり説とか、
救世観音の生まれ変わり説とか、
死後につくられた伝説がいっぱい。ばんばん神格化。

いやはや、人々はなんでそんなに太子を愛したのか? 
日本史においてここまで愛されてる人いないよね?なんでだろ? 
といったあたりが、トーハクの展示に加え、今回の展示も観たことでだんだん見えてきた。

律令と宗教の両方で国づくりを目指した人。
行動力もあり、人格者でもある。
宗教家でもあり政治家でもある。
バランスがよくてパーフェクトな人。

みんな憧れと願いをかけてきたではないかと。国内だけではなく、国外、外交にも積極的に乗り出していくあたりも頼もしいし。
理想のリーダー像。
なのではないか。


6階会場で流れていたテレビ大阪制作の映像番組によると、「ここから100年くらいかけて国家としての基盤が整っていく。その国づくりを始めたのが聖徳太子」なのだそう。
性差の日本展を思い起こすと、こうして仏教や律令制が中国から入ってきたことで、最初の政治や社会の第一線からの女性の排除が始まるということかな。

百年単位の聖忌が自分の生きている時間に重なるってほんとうに稀なことだと思う。

ありがたく特別な思い。

 

▼その他鑑賞メモ

・宗派を超えて崇敬される。慈円親鸞も。比叡山でも太子信仰があった。天台宗とバッティングしない。親鸞の弟子の夢に太子が現れて、親鸞を礼拝し、「親鸞阿弥陀仏の化身」と言ったからとか。
・遠忌700年に向けて書かれたと思われる鎌倉時代聖徳太子絵伝も展示。100年ごとの記念に製作するという慣例はずっと昔からあったのか!
・「聖徳太子絵伝」を観るのに双眼鏡を持っていったらよかった。忘れた。。
・緋色が太子のトレードマーク。絵伝の中でも見つけやすい!覚えておくと今後便利かも。(何かに。きっと)
・絵伝に書かれている亡くなるまでのあれこれもすごい。「48歳のとき近江国から人魚が献上され、禍の前触れを予言」「49歳、自らの死期を悟る」「50歳死去」
・太子は中国の高僧、慧思の生まれ変わりと言われたりする。「37歳で中国の衡山に魂を飛ばして、前世に所持していた法華経を持ち帰った」という伝説もある。
・十七条憲法は、為政者や役人が守るべき道徳的規範を記したもの。意外と内容を知らなかったかも。。
四天王寺蔵の「菩薩半跏像(試みの観音)」は、年に一度、5月のみ御開帳される秘仏らしいが、なぜここに2ヶ月近くもおこかれているのか?
・太子=観音説が盛り上がって、如意輪観音を太子と同体とみなす時期もあったそう。
・そういえば太子のお墓って?大阪府太子町(奈良との県境)にあるそう。磯長廟(しながびょう)。
https://www.town.taishi.osaka.jp/kanko/rekishi_shiseki/syotokutaishi_haka.html



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聖徳太子といえばやはりこれ。原画が展示されていました。

1巻しか読んだことがなく。いつか一気読みしたい。

日出処の天子山岸涼子

 

よくある太子+2人の像《聖徳太子二王子像》

左が弟の殖栗皇子(えぐりのみこ)、右に長男の山背大兄王(やましろのおおえのおう)と言われている。


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その像にまつわる話
www.yomiuri.co.jp

 

▼キッズ向けのワークシート。子どもが雑に触ってもだいじょうぶなように厚い紙でつくってある。右下は、2021年に四天王寺で作られたばかりに今最も新しい聖徳太子像。《聖徳太子童形半跏像》「100年に一度の儀式でお披露目される特別な像」とのこと。これもまた100年後の人が見て、「100年前の太子の解釈か〜」と思うのかな。


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四天王寺といえば、お能「弱法師」の舞台!

www.the-noh.com

 

百万塔陀羅尼

ちょうど同じ頃に印刷博物館の公開レクチャーを聞いたので。奈良時代に関係あるものとして、メモ。
https://www.printing-museum.org/collection/looking/33154.php

https://www.kyohaku.go.jp/jp/dictio/kouko/hyakuman.html

 

 

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 2020年12月著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社