Bunkamura ル・シネマで映画『偶然と想像』を観た記録。
評判通り、非常によかった!
『ドライブ・マイ・カー』、『寝ても覚めても』、『不気味なものの肌に触れる』と観てきて、濱口作品めっちゃおもしろいがちょっとしんどいとこある。持ってかれる感じあると思っていて、正直警戒して、すぐには飛びつかず、見た人の反応などをチラチラ見ていた。特に、『寝ても覚めても』がキツかった。
今回はそのあたりの緊張がいい感じにとけていて、安心して観られた。
外からは見えない、一対一の親密な関係の中での、ギリギリとした深いところのやり取りはありつつ、行きすぎない。踏みとどまる登場人物たち。これは新しい。
それで何かが薄れたりもしない。生きることは、「きれいだけどきたない」「きたないけどきれい」は変わらず、でも「現実を生きていくにはこれが必要だよね」をやってくれる。
想像を使って踏みとどまる。
偶然に力を得て勇気を発揮する。
第三の選択の模索が新鮮。
知るよしもない他人の人生を覗き見る。1話目の冒頭に現れる「あの第三者」の立ち位置で、狭い空間の中で立ち聞きしてる感覚で、観客は最後まで乗せられていく。
これが実に気持ちいい!
何人か、あの人に似てる!私かも!という人も思い浮かんだり。
会ったことはないのに、いかにもいそう!と思う人ばかりで。
会話劇で、ただただ人がしゃべっているのを聞くから、声の良い人が選ばれているのかな。耳が心地よかった。
この日は三連休の最終日で、満席だったので、みんなで一斉にどっと笑うのも一体感があった。映画館ならではの体験。そう、笑いが随所にある。深刻な場面もどこか可笑しい。エンディングも幸せだったし。よい後味でした。
演劇と映画の融合というか、なんにせよ新しい手法をさらに確立している。
客観的で冷静な観察眼を持ちつつ、人間を愛おしく描く。すごいなぁ、間違いなく、世界の映画史に名を刻む方ですね、濱口監督は。
女友達と二人で観に行ったので、雰囲気満点!「偶然と想像ごっこ」してみたりして。
いつものようにお茶しながら1時間がっつり感想を話しました。
ドゥ・マゴのホットチョコレート。マシュマロ入っていた。
▼ パンフレット、気合入ってます。過去作品の解説がついているのもありがたい。
英題は、"Wheel of Fortune and Fantasy"
海外の人はどんなふうに観たのかしら、といくつかレビューサイトを見てみたら、多くは絶賛!「濱口がまたやってくれた!」「心の深いところが反応した」とか。
もちろんイマイチだった人もいるようで、実はこちらのコメントがおもしろい。「1話がもう全然受け付けなくて残りは見なかった」とか、「1話目、2話目は退屈だったけど、3話目はめっちゃおもしろかった」とか。
▼舞台挨拶。こぼれ話がいっぱいでよかった!
▼映画監督の想田和弘さんの一連のツイート、そう、これ!!
濱口竜介短編集「偶然と想像」をシネマクレールで観ました。素晴らしかったです。人間社会では、それぞれの人間が「本音」をある程度抑制ないし見ないようにして、当たり障りのないように振る舞うことで表面上の平和が保たれているわけですが、
— 想田和弘 最新作「精神0」DVD・最新刊「なぜ僕は瞑想するのか」発売開始 (@KazuhiroSoda) 2021年12月30日
▼この記事もよかった。濱口作品をいろんな人が語るのを聞くのもおもしろい。
▼後半の質疑応答で話されていたこと。「観ると作る」「取り返しのつかないこと」について、おもしろかった。ハワード・ジョーンズも観てみたいなぁ。このイベントに参加できた人、うらやましい。
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2020年12月著書(共著)を出版しました。
『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社)