2022年1月、浜松市楽器博物館を訪問した記録。
ずっとずっと来たくて、ここ1、2年ほど機会を窺っていた博物館。
豊橋で舞台を観ることになったのに合わせて、日帰りで予定してみた。
豊橋と浜松は在来線で35分程度の距離。近い! 朝の開館と同時に入れば、午後からの舞台の前に2時間半ぐらいは観られる!でもきっと2時間半では駆け足になるだろうなという気もしていた。
そうしたらやっぱりだった!これは一日がかりでくるミュージアムだったですよ!
下にインスタグラムの投稿を貼りましたが、それぞれ10枚ずつぐらい写真を投稿してありますが、これでも一部ですからね。すごい物量でした。
まずはそれに興奮してしまって、一人ですごいすごいと、わぁわぁ言いながら回って写真を撮りまくっていました。
オーディオガイドは無料で借りられ、加えてパネルの解説も充実。それぞれ違うことを教えてくれます。ああ、これだけ情報量が多いとやっぱりメモを取りたい。でもメモを取っていると見切れない......。ということで、涙を飲んで途中からは観る専門になりました。
せっかくだから15分間のギャラリートークも聴きたい、ということで時間を見積もると、もうほんとうに全然2時間半じゃだめでした。
⚫︎ギャラリートークのメモ「クリストフォリのピアノ」
・バルトロメオ・クリストフォリ(1655-1731)は、イタリアのチェンバロ製作者。日本では江戸中期。生涯に20台のピアノを作った。そのうちの3台が今も残っている。(1台はメトロポリタン美術館、他の2台も海外)ここ浜松市楽器博物館にあるのは、復元したもの。
・学芸員さんが「キラキラ星」を試奏してくれた。チェンバロっぽい音がする。
・初期の名称は、Gravicembalo col piano o forteで、「piano弱音とforte強音が出るGravivcembalo大きなチェンバロ」の意味。チェンバロよりも強弱が付けられるようになった。
・内部構造、弦を叩くハンマーヘッドの素材はこの頃は羊皮紙でできていて、硬い音色がする。鹿の皮でできたものもあった。
・ピアノも当初は室内で上流階級が楽しみものだったので弱い力で細い真鍮の弦を叩いて出す小さな音だった。その後、市民階級がホールで聴くようになっていき、大きな音が出るように改良されていった。ハンマーヘッドは羊の毛のフエルト、弦は鋼鉄に。
・クリストフォリの時代のピアノは、ヒグマ1頭分の力で張られている。今の一般的なグランドピアノは象5頭分の力で張られている。(この例えがよかった)
・最後にもう一曲演奏をしてくださって、これも素敵だった。バッハの曲名を忘れたけど、よかった。いろいろ聴けてこれで15分で無料。ギャラリートークは聞くべし。(興奮もいったん収まるし笑)
内部の機構が見られる展示品も数カ所にあってよかった。
ハンマーヘッドが弦を打つ、その一瞬に力が集約するような組み立て。鍵盤を押した力が、効果的にハンマーヘッドに伝わり、弦を打つ仕組みになっている。この狭いスペースでそれが行われているのは不思議。昔々、物理の勉強でやったような……。
でもどうして弦を叩くと「ピアノの音がするの?」というのはわからないなぁ……と思っていたら、他の参加者の人が食い下がって質問してくれた。ハンマーで叩いた音を増幅させる響板と空間とによって。ようやく理解!
ピアノの線については、こちらのサイトでもっと知ることができます。
Wire World ~知る・楽しむ~:日鉄SGワイヤ株式会社
知ろうと思えばいつでもなんらかの形で知ることはできるし、調べることもできるのだけど、こうしてたまたま行った先できっかけを得て知れるのがおもしろい。
行けば必ず何か「へえ〜」と思うものに出会えるのがミュージアムの楽しいところ。
今回のことで言うと、例えば、ガムランはガムランでも、ジャワ島とバリ島のガムランは楽器も違うし編成も違うとか、単一のイメージしかなかったものの広がりや奥行きを知ることも楽しいし、「馬頭琴って牛の皮や骨は今はもう使っていないとは聞くけれど、じゃあ今はどんな材質なんだろう?」「薩摩琵琶の演奏者の知人がいるけど、他にも琵琶の種類はどんなのがあるのかな?」となんとなく思っていたことを実物で確認できるのも楽しい。見たことも聞いたこともない楽器に出会うのももちろん楽しい。
ぼんやりとしたイメージだった物や分野の解像度が上がって、具体的に見えてくる。
もちろんその作業をしなくても生きてはいけるんだけど、想像だけではなくて実物と接続することで、世界とのつながりが確認できる。確認できると、不安や不確かさが少し軽減されていく。自分がこの世界の一員であることが実感できる。何かそういう関係があるんじゃないかと思っている。
公式ウェブサイトにバーチャル・ツアーのページがあります。トップページの中にバナーがあります。遠くて行けない方はぜひこちらで!!
Instagramに投稿するだけで一苦労だった。ともかく物量に圧倒される。
美しかったなぁ。また必ず行こう。
今回じっくり観られなかった電子楽器のコーナーが気になっている。先日観た『カルメン故郷に帰る』でもオルガンが重要な小道具になっていたので。
_________________________________🖋
鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。
2020年12月著書(共著)を出版しました。
『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社)